僕君notea

僕と君 12 ミエッパリな園児たち


幼稚園に無事に入った君。おめでとう。

最近覚えたじゃんけんで、君はいつもチョキばかり。
つい言ってるよ、「じゃんけんチョキ!」って。

人生には負ける時もあるって教えないといけないけど
毎度泣かれるのもいやで、僕はいつもパーを出す。
せいぜい、攻めてチョキ。
あいこだとちょっと口を一文字に結ぶけど、まだ許容範囲らしい。
グーを出したら、この世の終わりみたいになる。

パパが甘いのよ。私に負けても、あの子泣かないわよ。

ともだちとはどうしてるんだ。
女の子とはガチバトルよ。実はチョキ以外も出せるの。
そうなのか。僕はあの子のチョキ以外、見たことがないが。

男の子とはじゃんけんチョキよ。
お隣の優くんね、かわいそうにいつもパーだしてるわ。

優くん。名前通り、優しいやつだな。
だがな、気を付けるんだぞ。女ってやつは手ごわいからな。

お隣さんとママの会話が聞こえてくる。
どうやら優くん、幼稚園ですきなたべものを聞かれて……
ステーキ!って答えちゃったらしい。食べたことないのに。

それで先生に、どんな焼き方がすきなの? って聞かれて
答えられなくて。うう、僕にはわかる。その男心、すごくわかる。
きっと初恋の相手は先生なんだよな。背伸びしちゃったんだ。
ここだけの話、飛び切りかわいいんだよ、あの先生。

そんな中、うちの子は、まわるおすしがすき! って
宣言しちゃったらしい。こちらも行ったことないのにねぇ。

行きたい、行きたいのーっ! はいはい。
実は僕もはじめて。経験済みのママは、少し余裕を醸し出してる。

レーンの前にきっちり座ってすばやく奪い取る!って
流しソーメン的イメージだったので
平日の午後、のんびりまったりお客さんが2組だけの状態に拍子抜け。

だって、握ったのを手渡ししてくれるよ。
これは逆に余裕のある時間帯のサービスなのだろう。
だがしかし!ワレワレは、回る寿司を堪能しに来たのだ。
回らなければ寿司じゃない。回ることこそ正義!
流れているのは、わさびの入った小さい桶と、スプーンだけ。

電車ずき、プラレールだいすきの君はがっかりしているから
お願いして、君の大好物の納豆巻きといくら軍艦を
レーンにのせて回してもらう。ほら、来たよ。ぐるぐる。
そんなに目を輝かせちゃって。コーフンのあまり手が震えてるぞ。

ああ、おいしかった。
今までカウンターで握ってもらう寿司ばかりだったけど(嘘)
家族で行くこのシステム、なかなかやみつきになりそうだ。

皿の色で値段を分けてるとか、工夫してるな。
僕はカツオがうまかった。あと、サクラエビ軍艦なっ!
あれ、ママの前の皿の色、金が多くないか?


⇒ 『僕と君』 13 オムレツの月


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水菜月
いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。