僕と君 12 ミエッパリな園児たち
幼稚園に無事に入った君。おめでとう。
最近覚えたじゃんけんで、君はいつもチョキばかり。
つい言ってるよ、「じゃんけんチョキ!」って。
人生には負ける時もあるって教えないといけないけど
毎度泣かれるのもいやで、僕はいつもパーを出す。
せいぜい、攻めてチョキ。
あいこだとちょっと口を一文字に結ぶけど、まだ許容範囲らしい。
グーを出したら、この世の終わりみたいになる。
パパが甘いのよ。私に負けても、あの子泣かないわよ。
ともだちとはどうしてるんだ。
女の子とはガチバトルよ。実はチョキ以外も出せるの。
そうなのか。僕はあの子のチョキ以外、見たことがないが。
男の子とはじゃんけんチョキよ。
お隣の優くんね、かわいそうにいつもパーだしてるわ。
優くん。名前通り、優しいやつだな。
だがな、気を付けるんだぞ。女ってやつは手ごわいからな。
*
お隣さんとママの会話が聞こえてくる。
どうやら優くん、幼稚園ですきなたべものを聞かれて……
ステーキ!って答えちゃったらしい。食べたことないのに。
それで先生に、どんな焼き方がすきなの? って聞かれて
答えられなくて。うう、僕にはわかる。その男心、すごくわかる。
きっと初恋の相手は先生なんだよな。背伸びしちゃったんだ。
ここだけの話、飛び切りかわいいんだよ、あの先生。
そんな中、うちの子は、まわるおすしがすき! って
宣言しちゃったらしい。こちらも行ったことないのにねぇ。
*
行きたい、行きたいのーっ! はいはい。
実は僕もはじめて。経験済みのママは、少し余裕を醸し出してる。
レーンの前にきっちり座ってすばやく奪い取る!って
流しソーメン的イメージだったので
平日の午後、のんびりまったりお客さんが2組だけの状態に拍子抜け。
だって、握ったのを手渡ししてくれるよ。
これは逆に余裕のある時間帯のサービスなのだろう。
だがしかし!ワレワレは、回る寿司を堪能しに来たのだ。
回らなければ寿司じゃない。回ることこそ正義!
流れているのは、わさびの入った小さい桶と、スプーンだけ。
電車ずき、プラレールだいすきの君はがっかりしているから
お願いして、君の大好物の納豆巻きといくら軍艦を
レーンにのせて回してもらう。ほら、来たよ。ぐるぐる。
そんなに目を輝かせちゃって。コーフンのあまり手が震えてるぞ。
ああ、おいしかった。
今までカウンターで握ってもらう寿司ばかりだったけど(嘘)
家族で行くこのシステム、なかなかやみつきになりそうだ。
皿の色で値段を分けてるとか、工夫してるな。
僕はカツオがうまかった。あと、サクラエビ軍艦なっ!
あれ、ママの前の皿の色、金が多くないか?