『le soda』 écrit par aina
波にさらわれる。
彼女の小説をはじめて読んでから、5年程、経つだろうか。
誰にも真似できない、彼女が書くものは、際立って彼女のものだった。
いつだって。
はじめて読んだ『holoholo』は、火傷しそうだと思った。
その熱量に圧倒されて、手に負えない感じがそこにあった。
『soda』に出会った時に
その熱さが、波にさらわれて瞬間冷却されてから
大きなグラスの中で溶かされ、揺られてる気がした。
クールな文体で繰り広げられるブルーの物語があった。
その時のレビューにはこんなことを書いた。
爽やかさとうらはらな、心がチリチリ傷むのに
目の前に浮かんでる水彩画のような情景が忘れられず
セリフひとつに重さがこもった、私にとっても大切な作品だ。
そう。彼女の描く世界は、いつだって痛みを伴う。
生きていくというのは簡単なことではない、と思い知る。
異国を訪ねたかのような世界。
とても洋画的。しかもフランス映画だ。
美しく、時に残酷で、余韻を持たせる。
彼女が元々持っている資質と、彼女が生きて来た人生が織りなす
極上の言葉たち。
はじめての小説集を作っているという話を聴いた時に
写真も共に載せるのだろうと予想していた。
というのは、『雨の国のアリス』のファンだから。
水色の本がやってきた。とても静かな佇まいだった。
届いた『le soda』は潔いほどにシンプルで
彼女の理想はこちらだったのかと驚いた。
どの一文も、全て彼女だ。
活字が紙に印刷されて、魅力も一緒に封じ込める意味が伝わる。
『soda』
再びこの作品に出会う。やっぱりすきだ。
海に住んでいる人の書く言葉にあこがれる。
言葉に波の音が載っている。リズムがある。
なじみのない言葉が並ぶ。サーフィンの用語なのだろう。
ショルダー リップ ピーク フェイス カール ボトム 心地いい。
レストランでサーヴする時のもの。お皿を運ぶ時の臨場感。
音が聴こえるようなリアル。デシャップは飛び跳ねる感じ。
人と人とが会話する時の音。
時折、人との距離感を考える。
小説の中の人のことを思う時も同じだ。
自分にとって一歩詰めてくるような人を待っていることがある。
傷つくかもしれなくても、必要なのかもしれない。
「でら」は愛知の言葉で、とてもというニュアンスなんだろうな。
でら可愛い。
他の3編も、でらステキです。
『トワジエム』は今の時代に書かれたSFチックなもの。
白い無機質な部屋で紡がれたような気がするシュールな作品。
出会ってみて下さい。
written by フランス語で書きたかったのだが
écrit parであっているのか、果たして?
いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。