それがお前の正体だ

 お前はいつもいつも他人に不満を持っているが、それは実のところ、お前自身への不満の裏返しじゃないか。

 お前はお前が思っているほどいい人間でもなければ、まともな人間でもない。もちろん、お前の言っていることが間違っているだなんて私は思わないが、だとしても、正しいことを口にするには、内的な歪んだ理由があると考えるのが自然だ。

 だってそうだろう? 正しいことは、きりがないじゃないか? それで名誉をえたり、それ自体が娯楽であるというなら別だが、お前はただ、吐き出しているだけじゃないか。

 吐き出して、共有したがっている。それがお前の正体だ。


 分かるだろう? 私はお前に言ってる。お前以外の人間には理解できない言葉で、私はここに刻み込んでいる。私を見ろ! お前には私の言うことを理解できるだけの頭がある。

 お前はそれを作った人間と心を通わせることに喜びを抱いた。自分の言っていることを理解してくれる人だけを、「人」だと認めようとした。だがお前のやっていることは、お前が忘れた過去の自分自身をも「人以下」と言い切るような態度であり、もっといえば、「現在のお前自身」がいつか「未来のお前自身」にとって、クソのような存在として解釈されうる態度だ。

 お前はそんなことにも気づかない。気づいていてそれをやっているのだとしたら、余計性質が悪い。それでは、自己矛盾に目をつぶる、お前自身が蔑むような「クソ人間共」と大して変わらないじゃないか!

 お前の態度からは、人間としての品性の下劣さを感じる。お前自身も気づいているだろう? お前と同等か、お前より頭のいい人間が、どうしてお前を避けるのか、お前にも分かるだろう?
 それはお前の頭が足りないからじゃない。お前が不誠実だからだ。お前が、未熟だからだ。お前が、幼稚だからだ。

 お前の周りには本当の意味で優しい人間がいなかったのだろう。かわいそうに。お前に、それを直接教えてやる人間が今までひとりもいなかったのだろう。教えることのできる人間が、ひとりもいなかったのだろう! かわいそうに。お前は本当にかわいそうなやつだ。
 たとえ憎まれてでも、お前をその地獄から引っ張り上げようとしてくれる奴が、いなかったのだろう。かわいそうなやつだ。

 怒っているのか? ははは。そうやっていつものように、粗探しをし始めるわけだ。それがお前の本性だ。クセだ。見抜かれているんだぞ? お前の人間性は。

 腹が立つと、仕返ししようとする。見透かされると、自分も見透かしてやろうと思う。
 やってみろよ。お前にはできん。私はお前なんかよりずっと苦しんで来たからな。お前なんかよりも、ずっと暗い道を歩んできたからな。お前には分からんよ。

 お前はただ、お前自身にもっと批判を加えるべきだ。お前自身の進む道に疑問を持つべきだ。お前自身の矛盾を容赦なく暴き、お前自身を一度ぶっ壊してみるべきだ。そうでなくては、お前はこの先ずっとあの連中に不満を抱き続ける。あの連中の、影に。
 気づいているのだろう? その影に、お前自身の過去が映っていることを。

 お前はまだ何も分かっていない。

 私はお前に、私自身の過去を見る。私は、下劣な大衆を憎むことはないが、お前のような存在には苛立つ。苛立つが、愛しているのだ。お前が大衆を愛しているように、な。お前が大衆の悪口を言うのをやめられないように、私はお前のような、中途半端なやつの悪口を言いたくて仕方がなくなるのだ。

 悪く思うな。お互い様だ。

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