セルフ批評『性欲ありきのプラトニックラブ』
暇なんでね、セルフ批評をしたいと思います。
セルフ批評ってのはね、自分が昔書いた作品をね、自分で批評してみるっていうことなんですよ。なんだかおかしいですね。
普通照れくさいし、求める人もいないから、滅多にやる人はいないと思うんだけどね、私ね、私のこと大好きだからね、やってみようと思うんですよ。
まぁ自己省察兼自己紹介みたいなものです。
あらすじ。ちょっとえっちな女子高生が、自己紹介を交えつつプラトニックラブを賛美するだけの話。
すっげー適当に、思いついてから一気に一、二時間くらいで書いた話なんだけど(多分……)、私が今まで書いた記事の中で一番たくさんの人が見てくれてるんだよね。
タイトルが興味を惹くってのもあったと思う。でも私自身としてはちょっと納得いかない部分もあって、ある時は「結局エッチなのが好きなのかお前らは!」と腹が立ってたこともあった。
でも、読み返してみたら「ふぅん。くだらないけどまぁまぁいいじゃん」って自分でも思ったので……
さて、批評解説いきまーす。
この物語はまず男の足に発情していた初恋の話から始まります。
彼の全力疾走するフォームがすごくきれいで、それを眺めているだけで胸がときめいた。
という、いっけん一般的な恋心を思わせる文章から始まりますが、
あの足に触れながら……いや、言葉を選ばなければ、あの足に自分の股をこすりつけたら、どんなに気持ちがいいだろうかと想像していた。本当に自分でも変態的だと思うが、でもそうしたいと思っていたことは確かに事実なのだ。
というように、いきなり変態性が暴露されていきます。ほどほどに自意識や羞恥心があるところも、丁寧な表現だと言えるでしょう。照れながらも、自分の変態性を受け入れている女性像がはっきりと描かれています。
その後、男の筋肉と、好きな部位の話をけっこう細かく語られます。
年相応の、性への強い好奇心が描かれています。
次のシーンでは
私は女にしては珍しく、数学や理科が得意で、英語が苦手だった。物事を筋道立てて考えるのが得意で、口達者だった。
というように、自分自身がどういう性格であるか、説明されます。
その語り口は、筋道立っていて、理系の人間のそれを思い起こさせます。
「テストステロン」の話や、恥ずかしげもなく腋毛の話をし始めるあたりが、特に「らしさ」を産み出しています。
その流れのまま、スムーズに性欲の話に切り替わっていきます。
ともかく、私が同世代の女の子たちと比べて少し男っぽい性格と体格、顔つきをしていたことは本当のことだ。当然、彼女たちよりも性欲は強かった。
強い性欲を持ちながら処女、乙女チックな部分を残している自分、というものをはっきり読者に提示しつつ、場面は切り替わっていきます。
彼氏の話が出て来ます。付き合うようになった過程を説明していくわけですが、その文体とテンションは徐々に変化していきます。
先を見据えれば、そのような関係は、大人になってから嫌というほど経験できることで、逆にこのような、お互い恋愛感情を抱いているのにくっつかないという関係の方が貴重で、大切にすべきものなのだという実感があった。
このあたりまでは、前半同様、冷静で理論的な性格が表れていますが、
私はそう答えて、頬にキスしようと思ったが、恥ずかしくてやめた。代わりに彼の手を一瞬だけ軽く握った。ゴツゴツしている手は少しだけ震えていて、緊張しているのが分かった。
私は彼が大好きだった。
情景描写が混ざってくると、一気に乙女らしい姿が露わになります。
独白の方も
私たちはもうちょっと想像を楽しむ。いつかきっと私たちは、一歩前に進むことになるけど、今はその一歩進むことをひたすら想像して、互いにひとりで自分を慰めている。それでいいのだ。
とあるように、冷静な思考の中に、強い意志と感情があらわれてきます。そこからは文体がどんどん激しくなっていき、最後には、大興奮、
性欲が強いからこそ、想像力は翼を広げ、想像力が自由になればなるほど、恋愛は広く深くなる。
素晴らしい純潔! 彼は童貞で、私は処女!
私たちはセックスに大きな期待を抱きながら、互いを精神的に深く深く愛している!
という風に終わります。うーん。エッチ!
後半部分は緩急がはっきりしていて、強い情動とうまく付き合っていく理性的な若い男女の姿がうまく表現されています。
いつか、全部やりたいと思う。風呂でもリビングでも、全裸でも着衣でも、SでもMでも。色んな体位を試したいし、何回連続で出来るかチャレンジしてみたいとも思う。きっと何をやっても、彼となら最高に楽しいと思う。だってそうじゃないか! セックスどころか、キスもしていないのに、私たちは二人きりでこんなに楽しい日々を過ごせているのだから!
若い恋愛の楽しさ、喜び、幸せのようなものが、惜しげもなく賛美されていて、エッチな話をしているのに、なんだかそれがいやらしいものではなく、楽しく無邪気なもののように思えてきます。
現代では、性の二極化が進んでいます。性的に開けている人たちは男女ともに多くの人と関係を持ち、そうでない人は、まったく経験をしたことがない、という奇妙な状態が進んでいます。
実際のところ、男性も女性も、ほとんどの人が性欲を持て余している時代なのでしょう。そうでありながら、綺麗な恋愛に憧れる気持ちも、捨てきれない時代なのでしょう。
性に開放的でありながらも、ほどよく理性的、自覚的で、人生を明るく楽しもうとする新しい生き方が、この作品の本質であり魅力なのかもしれません。
批評解説終わり。
感想
うーん。エッチだ。なんていうか……自分で自分の作品褒めるのってすっごい照れくさいね。あと、自分が仕込んだ技法みたいなものを、自分で解説するのもすっげぇ恥ずかしい。自分のギャグの説明してるときよりはマシだけど、それにちょっと似てるかも。
まぁ書いたときのことぜんぜん覚えてないから「多分、あのときの私はこういうこと考えながら書いたんじゃないかなぁ」っていう想像でしかないけどね。
うん。でもまぁ総評としては、よくできてると思う。面白いし、考えることもある。表現したいものもはっきりしているし、短く綺麗にまとまってる。
いやでも不安だな。自分だからそう思うんじゃないかとか、めっちゃ不安になる。(っていうかそれ以上に、セルフ批評っていうのが狂気の沙汰だから……)
なにはともあれ……エッチだ。