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「……お客様、少々よろしいでしょうか」 黄色い作業用エプロンを着けた20代半ば程の女性店員が、それまで一心不乱に漫画を読んでいた少年に声をかけていた。 「申し訳御座いませんが、その本をこちらへお渡し頂けますか?」 続けてそう言う彼女の口調に、言葉とは裏腹に少年が断れる雰囲気はない。 特別細いわけではないものの、大人しい印象の……美少年の部類に入る顔立ちには、熱中している所に声をかけられた事での戸惑いと、また、驚きの表情が浮かんでいた。しかし、声を掛けられたことが不思議だとか、
(ヤバい。これは絶対ヤバい) ある雨の春の朝。揺れる路面電車の中で、勝村亮はそう内語していた。 (俺はやってない。わざとじゃない。 ……でも、それは通用しないだろうなぁ) はぁ……と、器用に心の中でため息を吐く。 (これだけあからさまじゃ、絶対……) だらだらと冷や汗を流す彼の手の平は、前に立った女性の股間に当たっていたからである。 (……どうしよう) しっとりとした……それは雨のせいか否か……彼女のタイトスカートに吸い付くように。 □ 「やっべ! 遅れる! ぜったい遅れ