病棟?病床?
先日患者さんに「病棟ってなんでしょう」「病棟から出ないでくださいって言われてたのですが、棟って建物を表す言葉だと思って、コンビニ行ってきますといったら、注意されたことがありました」と質問があった。
我々医療者だけでなく、一般市民の方々にとっても<○○病棟に入院中です>といったように、入院しているある建物の中の、ある区画を病棟と呼ぶことは当たり前のようになっている。
結論から言えば、なぜ建物内部のある区画のことを病”棟”と呼ぶようなになったのか、これまでのところ調べてもはっきりしない。
似た言葉で、病床があるが、これは病院の規模を表す際に病床数○○床といった、個別のベッドを表すもので、エリアを表すものではない。
病棟はある診療科とかの病床の集合を表す語として使っているのはわかるのだが、今の関心はなぜ”棟”という言葉を使うようになったのか、ということだ。
棟という言葉を辞典で調べると、以下のように出てくる。
とう【棟】[漢字項目]
[常用漢字] [音]トウ(漢) [訓]むね むな
〈トウ〉
1 家屋の頂上を横に突き通す木。むな木。「上棟式・汗牛充棟」
2 長いむねの建物。「病棟・研究棟」
3 頭に立つ人。「棟梁とうりょう」
〈むね〉「別棟」
〈むな〉「棟木」
デジタル大辞泉より
上記の定義の1,2からは、横に長いという条件があるようだ。
棟木とは以下のように屋根の頂点に横たわる長い木のことのようだ。
病棟に当たる言葉が登場する有名なものとしては、1863年にフローレンス・ナイチンゲールが記したNotes on HospitalsにWARD(日本語訳で病棟)という言葉が使われる。
大戸寛先生の書かれた病院設計と医療技術という論文において、病院設計の解説がされており、ナイチンゲールの提唱によって英国を中心に図2にあるようなナイチンゲール”病棟”が普及したようだ。
このように見てくると、棟木とWARDの共通点は横に長いということである。WARDを初めて日本語に訳した先人は、横に長い構造ということで、”棟”という言葉を当てて病棟という言葉を選択したのだろうか。
それっぽいような、当てつけのような。
ちなみに、日本ではナイチンゲール病棟の設計はほとんど流行らなかったようだ。だから、仮に上記のような語源であったとしても、日本で棟という言葉はその構造を表現したものとなってはおらず、ただ呼び名として使われ続けているだけなのかもしれない。
なんだろう。もやもやするけど、今日はこのくらいにしておこう。
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