しりとりエッセイ う 馬面に粘着物
>> う 馬面に粘着物
馬の耳に念仏ということわざがあるが
今回の話しは、「馬面に粘着物」だ
昔から、馬面の人間はどんくさい、人がいいと言われている。
何となく農耕民族の香りがしたりして安心できるのだ。
しかし、みんながみんな善人ではない。
あっ、この話しは馬面の友達がゲロをした話しではない。そういう展開で話しは進みません。
馬面の友人である「うま」(仮名)は根性が腐っていた。
お盆休みなどで、みんなで集まる。
久しぶりなので盛り上がる。
僕も酒がほとんど飲めないのに楽しい。
うまは、毎回参加はするのだが、あまり楽しそうじゃないし、しゃべることも少ない。どうして来ているのか、よくわからない。
それで前に聞いたことがある。ダイレクトに「何でお前いるの?」と。
というのもグループが違うからだ。
すると彼は「俺の悪口を言われてへんかチェックしてるねん」と答えた。
もう一人友達にM本というのがいて、彼もいつも参加している。
皆勤賞は、うまとM本だけだった。この二人、仲がすこぶる悪い。ようするに、うまはM本が自分がいないと悪口を言うと思っているのだ。実際、二人には色々とあった。
さらに、二人は会社も同じなのだ。
そんなの楽しくないだろと思うが、とにかく「うま」は自分の悪口を言われたくない人だった。
去年の年末に、また、そのメンバーで会った。
シアトルに行ってる先輩が戻って来たので・・・、かなりたくさんの人が参加してて
そうとう飲んだ。飲み放題の店なので遠慮がない。
気がつくとM本と「うま」がいない。
心配になり隣にいた先輩に訪ねると「便所やろ」とのことだった。
便所に行くと、うまがいた。何かを足で押していた。視線をそこにやるとM本が。
泥酔し寝ていたのだった。それも便所でゲロを吐いてだ。
「うま」はM本の吐いたゲロに向かって、彼の身体をぐぐぐっと押し付けており
今やM本の顔面の半分は自分の吐いた粘着物。つまり、ゲロ。ねばねばの赤と緑のジェル状の吐しゃ物に埋まっていた。
さすかに、それはないやろと注意した。
その声にM本が気づき起き上がった。
顔の半分は自分のゲロまみれである。
「何か、ここ臭くない」と僕にたずねてくる。
僕は彼を指さし「かお」と叫んだ。
彼は鏡を見て「うぁーーー」と叫び振り返ると僕の胸倉を掴んで「てめぇ、俺の顔にゲロを吐きやがったな」と叫んだ。近づいてくる。僕は壁に身体を押し付けられた。
そこで馬が僕を助けようとして近づいた。M本の背中を蹴る。M本はそのまま壁に激突し、また、再び、床にダイブした。そして、彼はそこで嘔吐し、力尽き、その自分のゲロのの塊の上に顔から落下して寝てしまった。この後が大変だった。店員には叱られて僕たちは店から追い出されるわ。酔ったゲロまみれのM本は電柱に顔をこすりつけて「うひひひひーー」と笑うわ。それをうまが動画撮影し注意すると「うひゃひゃひゃひゃーー」と笑い転げるわ。とにかく酔っ払いの相手は疲れた。
この事件の後、M本は会社を辞めた。
「うま」が真実を吹聴しまくったからだった。
目的を果たした「うま」は、たぶん、もう、僕たちの忘年会には現れることはないだろう。
馬の好きだった女を昔、M本が弄んだという噂さがある。真偽のほどはよくわからない。
2020 12/11