100日間おなじ商品を買い続けることでコンビニ店員からあだ名をつけられるか。
はじめに
コンビニ 便利ですよね。
お弁当 飲みもの おかし 雑誌 タバコ お酒 日用品。必要なものはコンビニに行けばだいたい売っています。昼食やコーヒーを買うために毎日同じコンビニで買い物するという人もたくさんいるでしょう。もはやコンビニで買い物することは現代人にとって生活の一部といえますね。
ただ、毎日おなじものを買っていることで「店員さんにあだ名を付けられているのではないか」と不安になったことはありませんか?
100日間おなじ商品を買い続けることでコンビニ店員からあだ名をつけられるか。
それを検証したいと思います。
私が100日間買い続けるもの、それはビスコです。
ビスコ
ビスコとはなにか、という説明をする必要はないと思いますが、なぜ私が毎日買う商品としてビスコを選んだのか説明します。
・おいしい
・オフィスグリコというものがあるように、職場で毎日食べても違和感がない
・3つ小分けになっているので、箱を開けてもすべて食べきる必要がない
・なぜか身体に良いようなイメージがあり、たくさん食べても罪悪感が少ない
職場で食べやすく、手軽でおいしい、というのが主な理由です。保存もききますしね。
ビスコといえば『赤い箱に幼児の笑顔』、というパッケージですが、いまはそのビスコより『発酵バター』と『焼きショコラ』という2種類を多く見かけます。逆に赤い箱のオリジナルはけっこう探さないと見つかりません。またそれら以外に健康志向の小麦麦芽入りや、シンバイオティクスシリーズなどもあります。
こちらがビスコの『発酵バター仕立て』。しっかりとバターの風味が感じられますが、飽きのこない軽さもあって食べやすいです。みなさんもコンビニで見かけたら手にとってみてください。おいしいですよ!
検証方法
あだ名がつくか?という検証をするにあたってですが、やはり複数店舗で行うのが望ましいです。検証の信頼性が高まりますからね。家から通える範囲の3店(デイリー、ファミリーマート、ローソン)にビスコが置いてあったので、それらの店で検証します。
100日間連続して毎日行き、ビスコだけを買います。ただし出張などやむを得ない場合もあるので、その点は大目に見てください。100日間通ったあと、タイミングを見てあだ名を聞きます。つまり実際は100日以上コンビニに通うことになります。
また、せっかく複数店舗いくので、それぞれ買い方に個性を出すことにしました。といってもあまり奇特なことはしませんが、あだ名にバラエティが出たらいいなと思ったので。
左から
立ちビスコです。立ちビスコは、レジに置くときにビスコを立てます。デイリーで買います。
レシートビスコです。レシートビスコは、レシートを絶対にもらいます。ファミリーマートで買います。
ダブルビスコです。ダブルビスコは、毎日ふたつ買います。ローソンで買います。
ルール
ただ『買い続ける』ことであだ名がつくか、という検証であることをふまえ、簡単ですがルールを設けます。
1. 今回行くお店ではビスコ以外の商品を買ってはいけない。
2. 店員の方から話しかけられるまで、こちらから声をかけてはいけない。
3. 目立つ格好、行動をしてはいけない。
4. ビスコを入荷してください、という働きかけをしてはいけない。
ただ、一度でも店員側から話しかけられれば、それ以降はこちらからコミュニケーションをとっても良いこととします。
補足
100日+延長戦の分のビスコ写真とその日の出来事をnoteに記録してあるのですが、それをこのページにすべて載せると膨大な文字数になってしまうので、ここでは主だった出来事があった日のみを店舗別・時系列順に載せていきます。
上のリンクの『9月11日』が初日の記録です。もし興味があれば私のマイページからすべての記録を確認できます。その際、店員がたくさんいて誰が誰かわからなくなると思うので、店員早見表を別ページで作っておきました。このページでは読みやすさのため限られた店員しか登場しませんが、ほんとうはもっと店員さんがいるんです。また理解を易くするため、このページでは最初から各店員を決まった呼び方で統一します。
検証記録
デイリー編
出鼻をくじくようですが、デイリー(立ちビスコ)は早い段階でビスコが売り切れて補充されなくなりました。近隣にビスコを売る店がもう無いため、立ちビスコは完遂できませんでした。
ファミリーマート編
1日目
レジに立ったのは20代なかば・ほんのりヤンキー風味でかなりやる気のない『気だるげな女性』で、自発的にレシートをくれなかった。ここ以外の店舗はビスコを買ったとき普通にレシートを渡されてしまったので、消去法でこの店がレシートビスコの店になった。
2日目
昨日と同じ『気だるげな女性』。今日もレシートはくれない。この人のおかげで「あ、レシートください」と言うことができる。感謝。
3日目
3日連続で『気だるげな女性』。やっぱりレシートはくれない。
6日目
3日ぶりの『気だるげな女性』。依然、言わないとレシートはくれない。この段階で、この人は私が買った商品にシールすら貼っていないことに気づく。
8日目
『気だるげな女性』。とうとう彼女が自発的にレシートをくれた!ちょっと感動した。
14日目
いつもの『気だるげな女性』だったのだが、会計時に「ビスコ、好きなんですか?」と尋ねられた。突然のことにびっくりして私は無言でニコっとするのが精一杯だった。そして相手に認知されてると思うと店に行くのが途端に恥ずかしくなる。
21日目
10月1日 消費増税の日だった。
(ちなみにレシートを折ってあるのは支店名などの情報を隠すためです。)
このファミマにはイートインがある。しかしこの店の『気だるげな女性』は、金銭のやりとり以上の業務を極力省略することで知られている。そんな彼女が、イートインを客が利用するかどうかなどを気にかけるはずがない。
本当に店で食べると税率が変わるのか確認すべく、レジで「イートインで食べます!」と元気に言った。
「いや、ビスコは(消費税)変わんないんじゃないですか〜?w」。彼女はそう言って、消費税を2%多く払いたいという私の要求をかわした。私は「えっ、そうなの?」とだけ答え、いつも通り¥113を払って店を出た。
そうなの??
27日目
店が混んでいたが、いつもの『気だるげな女性』のレジに当たった。特に会話はなかったが、いつも無表情の彼女が私を見つけたときすこし微笑んでくれてキュンとした。
28日目
なんとここにきてノーマルビスコ納入。ビスコを買い始める前にコンビニを何件か下見のために回ったが、ノーマルビスコを置いているコンビニはなかった。まんまと買ってしまった。
31日目
『気だるげな女性』。台風ですね、と言うと「(ビスコを)買いだめしといたほうがいいですよw」と返された。
34日目
『気だるげな女性』。台風どうでしたか?と聞いたら、「やばかったけど、避難しても同じだから家にいましたw」と言われた。この人は最初と比べてだいぶ表情が豊かになった。歳も近いからか、きょうはもう友達と話すぐらいのテンションだった。『とびだせ どうぶつの森』のあさみさんと仲良くなったときみたいでちょっとうれしい。
35日目
『気だるげな女性』。私を認識するとニコっとしてレジに入ってくれるようになった。尊い。
44日目
棚替えと補充をしていた。配置場所の変わったビスコを探していると、補充をしていた『背の高い丁寧な女性』の店員さんが、やんわ~りビスコを指差してくれた。いつもの『気だるげな女性』のみならず、また別の店員さんにも私が『ビスコの男』と認識されていることを知った。そのままレジもその店員さんが担当、そこで「やっぱりいつもビスコ買ってる人ですよね〜笑」と笑顔で言われた。この感覚はひさしぶりですっかり忘れていたが、毎日ビスコ買うのは恥ずかしい。
50日目
節目ということもあり、今日は趣向を変えてビスコではないものを買ってみた。ビスコの対極が何にあたるか考えたところ、プリングルスがそれにあたる気がしたので購入。小さいほうがファミマ。
レジは『気だるげな女性』。「きょうはビスコじゃないんですね」と意外にも落ち着いた様子。「ビスコ飽きちゃったんですかぁ?」とからかうように言われた。
53日目
3日連続で『背の高い丁寧な女性』。「きょうはお休みなんですね」と話しかけられた。以前ビスコの位置が変わったときに少しだけ話したことがあったが、それ以来会話するのは初めてだ。
59日目
『気だるげな女性』。平日担当の彼女だが最近土曜にもよく見るようになったので、明日もお仕事ですか?と聞いたら「なんか土曜固定になっちゃって...」とうらめしそうに言った。「辞めたいです。」と乾いた笑いを見せた。
66日目
いつもの『気だるげな女性』。いつものようにビスコをレジに持っていくと
「私、ちなみに今月で辞めるんですよw」
と言われた。マジかよ!!!
この人が辞めたら困る!めちゃめちゃ困る!!100日経ったらこの人にあだ名が付いているかどうか聞こうと思っていたのに!
たしかに前々から辞めたいとは言っていたけど、本当に辞めてしまうとは。話を聞くと、このファミマでは今年の2月ぐらいから働いていたらしい。ここを辞めたら友達の働いてる居酒屋?で働くそうだ。「ビスコ用意するんでお兄さんも来てくださいね〜w」と言われた。
あだ名は?私にあだ名はついているのか?
それを確認しなくてはならない。本当は100日目までいってから聞きたいと思っていたが、いなくなってしまうのでは元も子もない!いま聞くしかない!!
「ち、ちなみに、僕のことって心の中でなんて呼んでます?あだ名とか、ついてますか?」
今日、この質問をすることになるとは夢にも思っていなかったのでキモい聞き方になってしまった(きっと用意しておいてもキモい聞き方にはなる)。すると彼女は困惑しながらこう答えた。
「え~?w いや、いつもビスコ買ってる人、って感じですかね...??」
74日目
『背の高い丁寧な女性』!本当にひさしぶりに会った。あちらも驚いたようで、「最近来てないじゃないですかー!」と言われた。毎日来てるのに。
77日目
とうとうやってきた。『気だるげな女性』、最後の出勤日。あまりレジ前でゆっくりできず最後の挨拶がかなりそっけないものになってしまった。
はずだったが、せっかくなので30分ぐらい経ってからもう一度ビスコを買いに行った。彼女が驚いたように私を見たが、私は「最後なので...」とだけ言うと「まだ裏にたくさんありますよw」と返された。それが本当に最後の会話になった。
おもえばビスコを買うようになってから毎日のように顔を合わせていた彼女だ。最初はかなりの省エネ接客だったが、いまでは笑顔でレシートを渡してくれるようになった。もうそんな彼女からビスコを買うことはないのだと思うと不思議な気持ちだ。
81日目
『背の高い丁寧な女性』。一週間ぶりの遭遇。この人は名札にひよこ🐥のシールが貼ってあるのだが、今回とうとう「そのひよこ🐥は何なんですか?」と聞いた。するとちょっと恥ずかしそうに「パートのお姉さん方に貼られてしまって、、、」と照れていた。
84日目
最近よくみる男性(『新メインの男性』)。『気だるげな女性』の代わりにこの時間帯に入るようになった人なのだが、きょうは自発的にレシートをくれた。ビスコの男のことを認識しているのか?
100日目
『新メインの男性』。会話、なし!なかなか男性と仲良くなるのは難しい。100日間で男性から話しかけられることはついぞ一度もなかった。
この段階で目標であった100日間毎日ビスコを買うという前提が達成されました。これから『あだ名が付いているかどうか』を店員さんに確認するのですが、いまなら聞ける!というタイミングを見計らわなくてはならないため延長戦に入ります。
延長戦5日目
2019年最後の日 12月31日
久しぶりの『背の高い丁寧な女性』。今日はこの人と、私が心の中で『ギバちゃん』と呼んでいる柳葉敏郎に似た20歳ぐらいの男性の若いペアだったので「このふたりならあだ名のこと、聞きやすいな」と気がついた。
「ちょっとお兄さんとお姉さんに聞きたいことあるんですけど、いいですか?」
と尋ねた。『ギバちゃん』が戸惑いながらも了承すると、奥から『背の高い丁寧な女性』も出てきた。
まず、私がこの約100日間ビスコを買い続けたのは店員さんにあだ名をつけてもらいたかったからだ、ということを伝えた。すると彼らのすこし緊張した表情が一気に緩んだ。
「そういうことか!」「なんで毎日ひとつしか買っていかないんだと思ってた!笑」
『背の高い丁寧な女性』は会話することもあるので私という個体を認識しているが、『ギバちゃん』(およびすべての男性店員)とは話をしたことがなかったので、まず私のことを知っていますか?と聞いてみた(キモい質問だ)。
「知ってますよ!みんな知ってます。毎日ビスコ買いに来て、絶対レシートもらっていく人。いまもふたりで、「なんでなんだろうね」って話してました!笑」
みんな知っているのか!しかも、レシートのことまで把握してもらってる!
「でもあだ名は...。あだ名はないかも。ビスコのお兄さんって私は呼んでますけど...。」
と『背の高い丁寧な女性』。
「そうだね。ビスコ...ビスコの人とか、かなあ。俺はあんまりお客さんにあだ名ってつけないかも。」
という『ギバちゃん』に対し
「え、わたしはお客さんにめっちゃあだ名つけるけど笑」という『背の高い丁寧な女性』。
それから「でもお兄さんにはついてないですね。だいたい特徴的な格好の人につけるかなあ。買うものとかではあまりあだ名はつかないかも。」と続けた。
いろいろ聞きたいこともあったが、当然ほかのお客さんもいるので長く話はできなかった。最後にふたりにお礼を伝え店を出た。
ローソン編
1日目
レジに立ったのは40代後半ぐらいの『お姐さん』。
2日目
2日目にして、『お姐さん』に「お兄さん、ビスコ好きですねー!」と話しかけられる。いくらなんでも早すぎる。突然のことに驚いて私は「っへへw」みたいなキモいリアクションをするハメに。店員さんに認識されたこの段階で、毎日ビスコを買いに来ることがとても恥ずかしくなる。
3日目
ローソン 『お姐さん』。「きょうは眼鏡じゃないんですね」と言われる。容姿まで把握された。この人に存在を認識されればされるほど店に行くのが恥ずかしくなる。
6日目
ローソンからビスコが消える。昨日の段階で1箱だったのだから、私以外に誰も買っていないことになる。
7日目
『お姐さん』。いつものビスコがなくなってしまったので、この日はじめてシンバイオティクスシリーズ(乳酸菌含有量が多い、健康志向のビスコ。¥141と少し高い)を購入。とりあえずビスコであればなんでもよいことにする。『お姐さん』から、明日には棚にいつものビスコが戻るという情報を伝えられる。
11日目
ローソン三人娘がひとり、『お姐さんの娘と思しき方』と初遭遇。『お姐さん』と名字が一緒ということから娘なのでは?と疑っている。20代前半、おとなしく人見知りっぽい感じの店員さん。
14日目
ローソン三人娘がひとり、『副店長』。副店長といっても20代前半ぐらいの女性。明るい茶髪でパッと見派手だが完璧な接客をする。その隣のレジにいたいつものお姐さんが(よっ)という口をしながら右手を少し挙げて私に合図してくれた。それがなんかちょっと古くて、浅野ゆう子みたいな、80年代のイイ女の挨拶みたいで笑ってしまった。そういう世代なのだろう。かわいらしかった。
16日目
ローソン三人娘がひとり、『サブリーダー』に初遭遇。この人も20代前半ぐらい。明るくお話好き。
28日目
『お姐さん』。財布の中にポンタカードがあるのにもかかわらず私がカード出さないので毎回「ポイントいらないの?」と聞かれる。私がポンタカードを持っているのはゲオの会員証としてそれを使っているからであり、コンビニで出したことは多分一度もない。でも毎日「ポイントいらないの?」と繰り返し聞かれ続けた結果、カードを出さない自分が間違っているような気がしてきた。
29日目
『お姐さん』。とうとうポンタカードを出した。今日は人生ではじめてコンビニでポイントカードを出した日になった。これも『お姐さん』が毎日「ポイントいらないの?」と私に尋ね続けた結果である。この無益と思われたビスコチャレンジは私の人生を少しづつ変えていっているようだ。
44日目
陳列がかなり変わっていたのでビスコがなかなか見つからなかった。レジは『副店長』さんだったが、となりのレジから「ごめんね〜、ビスコ見つけづらかったでしょ」と『お姐さん』が顔を出した。「ビスコ無くなったかと思いました」と私が言うと「お兄さんが毎日2箱買うなら無くなりませんよ笑」と返してくれた。それを聞いた『副店長』が「はっw」と鼻で笑った。
45日目
昨日からひきつづき棚のレイアウトを変えているようで、ビスコを探す。するとまだ明らかに未完成といった様子の棚にビスコが2箱だけ置いてあるのを見つける。不自然に2箱だけ置かれたビスコから、これが私のために特別に用意されたものだと察する。『お姐さん』にひと言お礼を言った。「ごめんなさい、まだ棚が整理できてなくてビスコだけ置いといたの😉」と返された。
50日目
こちらでも50日目はプリングルスを購入。先程ファミマのときも同じ写真をあげたが、長いほうがローソン。
いつもの『お姐さん』。「えっ!」とひと言。「ビスコじゃないじゃないですか!」と慌てた様子。驚かせようと思って、と私が言うと「驚いた...」というそのままの返答。「家にビスコのストックが貯まっちゃったんですか?」と冗談めいて言われたが、私が家にビスコを80個も貯め込んでるとは夢にも思わないだろう。彼女は知らないが、なにしろ他の店舗でも買っているのだ。
53日目
若い女性の『副店長』さん。あいかわらず会話はなかったが、帰り際「いつもありがとうございまーす」と言われた。『副店長』さんにレジ対応してもらうことはままあるが、「いつも」と加えられたのは初めてのような気がする。すこしうれしい。
55日目
56日目
ビスコ在庫なし。ビスコが無く、なにも買わずに帰るときが一番恥ずかしい。「こいつマジでビスコしか買わねえな」と思われてそうで。
57日目
店に入った途端『お姐さん』がやってきて「ごめんなさい!あしたまでビスコ入らないの!」と教えてくれた。そんな会話をしていると、私のすぐ近くにいた60歳ぐらいの女性が「え?なにが無いの?」と会話に参加してきた。『お姐さん』はその人に「ほらこの人が、あの、ビスコの!」と私を指して言った。するとその女性は声には出さなかったものの「あぁ〜!!」と、納得したように口を大きく空けて私を見た。話が続くにつれこの女性はオーナー的な人だということがわかった。去り際、『お姐さん』とオーナー(仮)から「ビスコ入れとくからね〜」と手を振られた。
58日目
きのう『お姐さん』に「明日は入荷します!」と言われていたが見つからなかったので、それとなくレジにいた『お姐さん』に目配せすると、彼女はやにわに右手をバッと挙げた。何事かとおもいレジまで行くと「今日ビスコ入荷するって言いましたけど、よく考えたら配送来るのが夜中なんですよ」と言った。私が「あ、じゃあまた明日!」と帰ろうとしたところお姐さんがニヤリと笑い「な・の・で、今朝スーパーで買ってきました!」と懐からビスコを2箱取り出した。
私が突然のことに面食らっていると、「今日入荷するって言っちゃったけどお兄さんが来る時間には間に合わないことに気づいて…」とその2箱をレジに通しながら説明した。まさかの『お姐さん』の個人仕入れである!
ちなみに、お姐さんが身銭を切ったりしてないですか?損したりしてないですか?と聞いたら、入荷したビスコから2箱貰うから問題ないとのことだった。
74日目
土曜日なのに『お姐さん』!私もびっくりしたが、『お姐さん』も「週末も来てるんですね!」とびっくりしていた。「週末も来てるんならもっとビスコ入れないといけないですね」と言われた。今後は在庫が増えるかもしれない。
81日目
『お姐さんの娘と思しき女性』。こちらからは店員さんに話しかけないようにする、というルールが一応あったのだが、もう80日目を超えたのでこちらから話しかけてみることにした。「いつも何時ぐらいまでなんですか?」と私が聞くと、ちょっとびっくりした様子でぎこちなく「9時か10時、ぐらいですかね」と返された。
83日目
耳の軟骨にピアス空きまくってるギャル気質だが、完璧で隙のない接客をすることでおなじみの『副店長』がレジを担当。ほとんど話をしたことはない。私がボーッとしていたところに「えっと、いつも袋は必要でしたっけ?」と予期せぬ質問をされたので(そんなこと初めて聞かれた)、私はじっと彼女の目を見つめたまま
「???......いー...らー.......................ない?...です」
とちょっと混乱したまま答えたら「うふふふふw」と大きめに笑った。この83日間で彼女の笑顔を見たのは初めてだった。いつも感情を見せないぶん、ギャップでかわいい。
93日目
再びしゃんとした接客でおなじみの『副店長』。「2点で226円になります。」といういつものセリフを言ったあと、なぜか今日はいきなり「ご一緒にからあげクンはいかがですか!?」と元気に足してきた。それがあまりに予想外な問いかけだったので、私はつい笑ってしまった。彼女も笑っていた。いままでビスコしか買ってこなかった客が急に『からあげクン』を買うとも思えないが、なんで今日になって突然そんなことを尋ねてきたのだろうか。いつもの流れで言ってしまったのか、彼女なりの小ボケだったのか。なんにせよほっこりした時間だった。
96日目
『副店長』。ビスコを毎日買い続けて3ヶ月強、とうとう副店長から話しかけられた。
『副店長』がレジで「今日は私服なんですね」と声をかけてくれた。私が驚きながらも「週末だから...」と答えると、「そっか、週末かぁ...」と返されたので「ちゃんと休めてますか?」と聞くと「週に一日ぐらいかなぁ」としんみり言っていた。でも表情はすこし楽しげだった。
100日目
『副店長』。こんばんは、と言うと笑顔で「こんばんは」と言ってくれるようになった。ビスコを買い始めてからずーっと無表情だったのに。流れた月日の長さを感じる。帰りもありがとう〜と言うと笑顔で「ありがとうございます」と言ってくれた。
ファミマのときに説明しましたが、100日を達成してから『あだ名が付いているか確認する』まで延長戦があります。この段階で『毎日』という制約をなくしました。
延長戦2日目
クリスマス🎅
毎日行かなくてもいいことにしたので前回から4日空いている。
『お姐さん』は私を見た瞬間 あっ! という顔をした。私がレジに行くと隣から「お兄さんインフルエンザですか!?」と興奮した様子で尋ねられた。私は「仕事が忙しくて...笑」と適当にごまかすと、「みんなとずっと話してたんですよ。お兄さん絶対インフルだって。」と言っていた。
ちょっと来なかっただけでこんなに心配してくれて、素直にうれしい気持ちになった。
あとサブリーダーが全身サンタコスをしていて笑いそうになった。ふつうサンタ帽だけだろ!
延長戦6日目
『お姐さんの娘と思しき女性』。サンタコス🎅のせいか『サブリーダー』がインフルになり、そこから『お姐さん』もインフル感染したらしい。『お姐さん』のことを名字で○○さんと呼んでいたので、「あ、名字はたまたま一緒なだけなんですね」と言ったら「はい、よく親子と間違われるんですけど笑」ということだった。娘ではなかった。
延長戦8日目
インフルのふたりが復活した。お正月は病院のベッドで死にそうになってたらしい。
延長戦16日目
とうとうビスコを買い続ける日々に終わりがきた。
今日は水曜、予想通り『お姐さん』のペアは『サブリーダー』。もはや私には何曜日に誰がレジに立つかなどは手に取るようにわかる。水曜は納品がないため、棚の補充などで忙しくなることもない。ちょっとストーカー気質っぽくてキモいが、100日も通っていればこのような店のサイクルは自然と頭に入る。
『お姐さん』に、実はビスコをずっと買ってたのには理由があって、それは店員さんにあだ名をつけてもらいたかったからだ、という説明する。
すると『お姐さん』は「ビスコのお兄さんです。」と即答。「あだ名なんて、とっくに付いてますよ。1週間でお兄さんはビスコのお兄さんになってます。」
ファミマとまったく同じ、『ビスコのお兄さん』とのことだった。それをあだ名と言えるかどうかは微妙なところではあるが。
「ビスコのお兄さん、という呼び方になるのは仕方がないですよ。だって私お兄さんの名前知らないんですもん!」
「私は心配していたんですよ。毎日ビスコで栄養片寄らないのかな、おなか空かないのかな、って。お兄さんにはもっとちゃんと栄養のあるもの食べて欲しくて。でも、ずっとビスコが大好きな人だとおもっていたから驚いきました。」
私は、ビスコ好きなのは本当ですよー!と笑いながら伝えた。
ここで『サブリーダー』も近くにいたので、お客さんにあだ名とかって付けますか?と話を振ってみた。
「毎日タバコとか、コーヒー買いに来る人は覚えますね。でもあだ名っていうのはないかも。コーヒーやタバコだと同じものを買っていく人がたくさんいるので。あ、おでんの人きたな、とか、それぐらいは思うけど笑
でもそういう同じお菓子を毎日買っていく人はいないですね。そういった意味では、この店であだ名がついてるのはお兄さんぐらいかもしれないですね。」
とのことだった。
私が、もう家に100箱以上ビスコがあるからこれから数ヵ月かけて消費する必要がある。ということを言うと
「じゃあもうビスコは飽きちゃったんですね。」とお姐さんが言う。
そうですね、飽きてきました。と私が返すと
「でもビスコに飽きちゃったからって、これから来なくなっちゃったら寂しいですね。」と本当に悲しそうに話すので、こっちまで悲しい気持ちになってしまった。
これからも買いに来ますよ!と言うと
「一回プリングルスを買いにきたときはすごくびっくりした。これからは別のものを買いに来てください!」とお姐さんに言われて、なんだか泣きそうになってしまった。
お客さんも来ず、5分ぐらい話ができたと思う。お礼を言って店を出た。
結論
まず検証結果としては、ビスコを100日買い続けてもあだ名は付かない。ということになりました。
ファミマの『気だるげな女性』『背の高い丁寧な女性』『ギバちゃん』、ローソンの『お姐さん』『サブリーダー』にとって、私は『ビスコのお兄さん』でした。それをあだ名ととらえるかどうかは微妙なところです。
ひどいあだ名を付けているがそれを正直に私に伝えていないだけ、という考え方もできますが、それは私にはこれ以上確認しようがないことなので、ここでは考慮しないこととします。
ローソンの『お姐さん』が言うとおり、店員さんは私の名前を知らないので固有名詞として『ビスコのお兄さん』という呼び方になる、というのは納得です。「あいつビスコ毎日買ってるから、なんかあだ名つけてやろう」ではなく、店員間での会話のなかで「ほら、昨日、あのビスコのお兄さんが...」という言い回しが定着するのですね。
ただファミマでは私という『ビスコを毎日ひとつだけ買い、かならずレシートを要求する個体』がひろく店内で認知されている、というのは驚きでした。あだ名こそ付かなかったものの、店員間の話題にのぼることはたしかなようです。
レシートのことについても『気だるげな女性』以外はほとんどレシートを自発的にくれていた(つまり私から「レシートもらえますか」と言っていない)ので、そもそも私がレシートを絶対に持って帰っている、ということすら気づいていないと思っていましたが、これも店内で「ビスコの男はレシートを要求する」という情報が伝わっていたんですね。
また、この100日間で遅かれ早かれ女性の店員にはほぼ全員から話しかけられたのに対し、男性の店員からは一度も話しかけられませんでした。これは私が男性だからでしょうが、ここまでハッキリ分かれるものなんですね。私が女性だったら真逆になるかといえばそうではないと思いますけど。やっぱり女性の方がおしゃべり好きなんですかね。これも興味深い発見でした。
ほんとうはあだ名らしいあだ名が付いてくれればよかったのですが、なにかを買い続けるだけでは難しいかもしれません。『あだ名を付けられる』ということだけを目指すのなら、店員さんに面倒がられるなど、まず負のイメージを持たれることが必要なようです。普通に商品を買い続けるだけではそうなりそうにはないです。
たとえばアマゾンのコンビニ受け取りとか、メルカリの発送とか面倒な処理を毎日のように頼んだらあだ名を付けられる確率はずっと上がると思います。あくまで私の予想ですが。ただそこまでいくと一般的なお客さんとは言えなくなってしまうので、今回の目的からは外れてしまいますね。
あだ名はつかない、という結論でも検証の意義はあったのではないかと思います。
さいごに
ここまでずいぶん長くなってしまいました。かなり間引いたつもりですが、100日分の記録はどうしても膨大です。
最初は当然ひとりの客と店員という間柄だったはずなのに、昨日もお店に行って当たり前のように会話をしました。始める前と終わった今では色々なことが変わりました。いまでは他のお店でもポイントカードを出します。
途中でまさかの別れがあったり、スーパーから私のためにビスコを買ってきてくれたり、いろいろな驚きがありました。疲れた日もコンビニにいけば明るい気持ちになりました。ほんとうに行くのが億劫な時もありましたが、なんとか最後までできてよかったです。
これからは時々そんな日々を思い出しながら、家にある溢れんばかりのビスコを少しずつ消費していきたいと思っています。
ありがとうございました。