押っ魂消たこと。
子どものころ、茶色の紙パックのコーヒー牛乳が大好きだった。コーラよりカルピスより、よく冷えたあの甘ったるい味がこの上ない飲み物に思えた。もちろん毎日飲めるわけではなく、たまに飲むからよりその美味しさを実感していたのかもしれない。
大人になるにつれ、コーヒーといえば缶であれ粉であれ、ブラックを好んで飲むようになり、ある時期から家でコーヒーを飲む時は専門店で買った深煎りの豆を挽いてハンドドリップして飲むようになった。専用スケールで豆の量を測り、ハンドミルで好みの粒度に豆を挽き、適正温度に沸かしたお湯で時間をかけてゆっくりドリップする。もちろんこのやり方は圧倒的に美味しい。一時期はその手間暇かけたコーヒー以外はコーヒーじゃないくらいの入れ込みようで、恥ずかしながらバリスタ気取りで飲みまくっていた。
ただ、ハンドドリップは準備からコーヒーを口にするまでの手順がかなり面倒であると思い始めていて、すぐ飲みたい時に飲めないなぁと考えていたある日。コンビニで見かけた子どもの頃飲んでいた茶色の紙パックのコーヒー牛乳が目にとまった。
押っ魂消た!
美味い!美味すぎる!!
その日からハンドドリップにこだわるのをやめた。圧倒的美味さは変わらないが、缶コーヒーでも粉のコーヒーでも甘いコーヒーでも、飲みたい時に飲んで美味いと思れば、それがその時1番飲みたかったコーヒーなんだろうと思い至った。