#2 突然、父親になった日(後編、産まれるまで)

病院に着くまでは前回書いた通り。
病室に行ってみるとそこには号泣する妻。既に陣痛も本格化しており子宮口も順調に開いてきていた。
医療ドラマやネットでは壮絶な話ばかりだったから勝手にトラブルが付き物だと思っていたけれど、全てが順調に進みすぎて逆についていけない。
妻と会話ができる状況では無いので、助産師さんに現状を確認しつつサポートに入る。
本当にペットボトルは飲めないので、ストローは必須です。100均で買えるペットボトル用の飲み口は便利だった。
後はなんと言ってもテニスボール。恥骨の辺りに押し込むことでいきみ逃しになり、陣痛を和らげることができるらしいが効果抜群だった。
後々妻に聞いても、テニスボールが無かったら無理だったとのこと。人にもよるとは思うが、あって損はないんじゃないかな。

妻が入院した日は何故か出産がすごく被ったようで、分娩室どころか陣痛室すら全く開かない。
待ってる間に陣痛は進み、結果分娩室に入った時点で子宮口は9.5cmまで開いていた。
初産ということもありそういうものだと思っていたけれど、これは珍しいケースらしい。最後分娩室に入れて良かった。

いよいよ分娩室に様子を見ると子宮口は全開に。
普通だと8cm→10cmになるのに2時間ぐらいはかかるらしいが、30分程度で到達してしまった。
ここまで来ると後はいきむだけ。子宮口が開くまではいきみを逃しながら進むのを待つが、子宮口が開いてからは逆にいきんで赤ちゃんを下ろしていく。
いきむ際は声や息を極力漏らさないようにするため、毎回血管が切れるんじゃないかと思うぐらいに顔が赤くなる。
スクワットでめちゃくちゃ踏ん張った時がイメージとしては近いか。いずれにせよ、安産という言葉は全く当てはまらないぐらい壮絶な光景だった。

分娩室に入って1時間30分程度経った頃、いよいよ産まれることに。そしてここに出てくるハサミ。
産まれる時に股が裂けてしまうと治るのが遅くなるため、前もって会陰切開をする。初産だと結構な確率でこれをするらしいが、とにかく嫌な音である。厚紙を切ってるんかと思うぐらいにチョキチョキ言う。
帝王切開で無くても身体を切るとは思わなかった。出産後数日経っても痛みは増すばかりのようなので、男性も含めて会陰切開についてはもっと広まった方が良いと思う。産んだ後も奥さんのダメージは大きい。

そして遂にその時が…来ない。
最後の最後で何故か陣痛が止まってしまう。頭も見えてるのに陣痛が来ないから進まない。
あれ…?とみんなで待機。恐らく自分が到着してから1番長い休憩の後、やっと来た陣痛。
次で行くよ!と言われて気合を入れていたが、出てこない出てこない。誰もが諦めかけた時、再度妻がいきみ出す。後から聞いたら陣痛来てないけど無理やりいきんだらしい。この辺りはお腹の中で育てていた人間の直感があったのかな。
掛け声ももはや「出ろ!」。そこはおいで、でしょと突っ込まれたけど、もう早く出ろという気持ちが本音だった。
しかも出ろと言ったら出るから不思議なものである。午後3時過ぎ、最初の破水から15時間程度と非常にスムーズなお産だった。若干小さかったけど、心配する間もなく泣いてくれて一安心。とにかく無事で何よりだった。

こうして初めての出産は怒涛のように終わった。
正直出てきた瞬間は、なんか変な感じだった。妻の身体から出てきた見たことのない宇宙人が自分の子供であるわけで、その事実を女性と同じ温度感で理解することが難しいということを肌で感じている。
ただこれは恐らく生物学的に仕方がないことで、これから育児に携わっていく中で追いつければ良いのかなとも思う。

いずれにせよ、立ち会い出産をできて個人的にはとても良かった。命が産まれる瞬間をこの目で見られたこと、命を産み落とす妻の姿を見ることができたことはこれから家族を作っていく中でとても大事なことだと感じている。妻へのリスペクトと子供の命への思いを忘れずに日々を過ごしていきたいと強く思う。

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