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アンチフットボール論と組織の脱個性

どうも皆さん。ラバハと申します。
アラフィフ氷河期世代のオッサンで、文化批評なんかを書いてます。

突然ですがアンチフットボールって知ってますか?AIに聞いてみたら以下の通りの答えが返ってきました。

「アンチフットボール」とは、一般的に攻撃的なサッカーをあまりせず、守備的で消極的なプレースタイルを指す言葉です。この戦術では、ボールを相手に持たせ、守備を固め、相手の攻撃を抑えることを優先します。試合のテンポが遅くなり、得点のチャンスも少なくなるため、サッカーをエンターテイメントとして楽しむ観点からは否定的に見られることが多いです。

たとえば、大事な試合で結果を重視するために、引き分けを狙ってリスクを避けるチームが「アンチフットボール」と批判されることがあります。
 

参照chat gpt

つまりアンチフットボールは守備的で時間を稼ぎ、サッカーをつまらないものにしているという指摘です。

一方で、あれは戦術だ。あれも弱小チームの生存戦略だ。などといった反対意見もあり、
よくこの話題で議論(炎上)しているのをネットで見かけます。

ずっとサッカーを見てきたオッサンからすると、
ふむふむと息を荒げる一方で、サッカーも、もう行き止まりにきたのかな、と冷めた視点もあります。

結論、これはサッカーの話であり、一方で人の最適化についての話でもあります。最適化とは脱個性のことです。

要はだいぶ長く、つまらない話というわけで、逃げるならこのタイミングです。


サッカーはスマホ観戦に向いてない

さて、その日私はいつもの様にスマホで海外サッカーを観戦していた。テレビで観ることも最近は少なくなり、夜寝る前に溜めていた宿題を消化するように、興味ある試合をピックアップしては、後半のタイムが進むにつれ寝落ちすることを前提に試合を観戦することが日常になっていた。つまり、私は決して真面目で義理堅いサポーターではなく、ただの愚昧な消費者だということだ。

その消費者という目線を前提としたとき、サッカーは画面サイズの制約上あまりスマホ観戦に向いていない。ビジネスとしてはじめから足枷はあることは確かだ。最近は本当にフルタイムで見ることも少なくなっていた。


 それは何てことのない場面だった。
もう長い間サッカーを見てきたので、そのシーンはあまりにもありふれていて、普段だったら何も感じずに流していた。だから、そんな考えが頭をよぎった自分に少し驚いたが、そのうちそれは度し難いほどの憤りへと変わっていき、やがて気持ちはひどく沈んでいった。



                                      *
 ファールの笛が吹かれ、選手が1人ピッチに倒れ試合が止まる。倒れた選手は足を痛そうに押さえて悶絶する。

起き上がるまでに他の選手同士が、相手マークの確認や、ゲームプランの相談や、水分補給をする。


刻々と進む時間。
ボールをゆっくりとセットする選手。
ライン際で怒鳴る監督。
ブーイングするサポーター。
スマホでそれを見る自分。

・・・。
あれ?この時間、ちょっと害悪過ぎないか?

サッカーならこんなシーン当たり前だし、今まではそれも含めてサッカー、なんてことを言っていた側の人間だったことは認める。
でも、単純におじさんこの謎の待ち時間にもう耐えられんぞ。

 ここは本当にみんな同意して欲しいのだが、
前提として、スタジアムだろうが配信だろうが、誰もわざわざピッチで倒れている選手を見に行きたいと思わない。

本当に怪我をして動けなくなることもあるだろう。それはコンタクトスポーツである限り仕方はない。だが、意図して、作戦としてゲームを遅らせるためのファールをしたり、わざと倒れ込んで時間を稼いだりするためだとしたら、それはもう本当に勘弁して欲しい。

スポーツマンシップに則ってないとか、試合は勝てばいいんだといった論争とは異なり、
もう、シンプルに私の時間を奪わないで欲しいという願望である。動画にちょくちょく入ってくる広告へ対するヘイトと全く同じ種の感情だ。

時間稼ぎも作戦だからとか言う人に対しては、後でちゃんと代案も述べるので、落ち着いて聞いて欲しい。


面白いサッカーって何?

面白いサッカーって、何?を突き詰めると、試合を観る側からすれば、選手には酷だが、90分1度も止まることがないゲームだろう。 ポゼッションサッカーだろうがカウンターサッカーだろうが内容はぶっちゃけどちらでも良くて、とにかく試合が止まらないことが最上のファンサービスだと思う。いや、サービスを超えた人間の習性を逆手に取ったマーケティングだと言い換えても良い。
つまり、猫が動いているものを目で追ってしまう様に、我々もまた、動いているものから目が離せないという習性がある。テレビの止め時が分からない例のアレだ。
 少なくとも私にとっては、セットプレー時や、ゴールやタッチラインを割った際以外は、ずっとゲームが動いていることが理想である。

 現実的にはそれは難しいが、コンテンツの溢れている現代においては、運営はまずそれを目指すべきであることは明白で、事実その方向にサッカー界は向かってくれている。

そもそも人が90分間走り続けるのは大変すぎる。別に試合時間を短くすればいいし、または、自由交代制にして、20分ずつ同じポジションを3,4人でまわしてもよい。

 現実は、選手が倒れ込んでいる間に、漫才1本見られるし、ツイッターだってすぐに触れる。コアなサッカーファンを名乗るこのおじさんですら、人差し指1本で、すぐに他のコンテンツへ浮気できるこの環境下で、常にその誘惑と闘っていることを自覚している。
 
 そう、とにかくゲームを切らさず見せることが重要なのだと思う。5億人が同接するコンテンツの中で、なかなか投げないスローインのシーンを垂れ流して許される今は、奇跡の類いだと思っていい。


時間制という枠がもたらした罪

これは別にサッカーというスポーツだけの問題ではない。ほかのスポーツも同じことが言えるのだが、サッカーは遅延行為や、故意のファールが多過ぎる。

 そもそも何でサッカーはあんなにモタモタするのか?選手は幼児よりもすぐに痛がり倒れ込み、審判の笛にカルガモのようにゾロゾロと追っかけて抗議したり、なかなか選手交代しなかったり、慣例として害悪ムーブが横行している。

だが、当然選手が悪いわけではない。

あれは、試合が時間制がゆえに起きるシステムエラーなのだ。時間制で優劣をつける場合で、更に1点の重みが大きいスポーツにおいては、必ず勝っているチームは時間を進めたいと願う。そうすると、自然と遅延行為が横行するという単純な構図である。

その文脈において、最初に述べた遅延行為も作戦のうちという考えが働くのも無理がないし、90分という縛りがある故に、弱小チームがアンチフットボールを行うことにも納得がいく。とにかく時間制という枠組みがもたらした影響は大きい。

 話は少し逸れるが、人の本質が性善説なのか、性悪説なのかに関わらず、その人のムーブは外的要因に規定される、と最近強く思うようになってきた。

つまり、一見他人からは理解できない行動や思想も、その人を取り巻く環境下では、至って自然な行為や帰結であるということだ。

例えば投票率が悪いことは国民が馬鹿だからではなく、投票率が低くなるような今の仕組みが悪いのだと強く論じたいわけだ。

新しいルール作り

 話を戻そう。そう、いっそサッカーは時間制をやめたらどうだろうか?
例えばバレーやテニスのようにゲームをターン制にするのはどうだろう。それぞれのチームに15回くらいの回数を与えて、ゴールキーパーのキックで守備から始めて、途中でボールを奪えたら、そのまま攻撃に転じて良い。カウンターサッカーはそこに担保する。

そして、全てのファールは一発レッドにする。ただしバスケと同じくファールした選手を交代制にする。そうすることで、チームは大きな戦力ダウンにならないが、スタメンを一発で失うリスクはある。とにかくファールを少なくしよう。

試合を止めない工夫でいえば、スローインやセットプレーはバスケと同じように、時間制にすれば良い。何秒以内に進めなければターンオーバー。いちいちセットプレーごとにDFの上がりを待つの無しにしてほしい。最近はセットプレーだけのコーチが各チームに就くのがトレンドだが、正直フットサル並に速くしてほしい。

これらは極端な例ではあるし、個人的な好みばかりだが、少し考えただけでワクワクしてくる。世界の共通ルールだけに実現は難しいかもしれないが、我々はせめて娯楽の中では、もっとわがままになっても良いと思う。

 
 デメリットも当然ある。そうなると、1回の攻撃の重要性が増し、組織的に連動してボールを運んでいくスタイルばかりになり、地方の国道沿いの風景の如く、同じ色のチームばかりになるだろう。もっとハッキリ言ってしまえば、マンチェスターCみたいなチームばかりになり、選手の優劣はシンプルにフィジカルの強さに依存するだろう。

 つまり最適化を求めると個性がなくなる。しかし結果的に組織は強くなるというジレンマがまたここで生まれるのだ。

 しかし、これらのことは社会一般にも汎用できるのではないだろうか。属人化からオートメーション化は世界の主流であり、ピッチの内外でファンタジスタは生まれにくくなっている。優れた個性を期待して待つのではなく、いかに作業効率よく生産性を上げられるかという経営者が持て囃されるように、優れた監督やコーチングの手腕にもっとスポットが当たるのではないだろうか。

とか、そんな考えが巡るくらい長い時間ピッチで寝転んでいた選手は、気が付くと次のプレーで、生き生きとボールを追っていた。

返して、この時間(泣)



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