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『103歳になってわかったこと』篠田桃紅を読んだ

概ね人生論に碌なものはない。例えば、佐藤愛子とか、松井孝典とか、養老孟司とか、樹木希林とか、和田秀樹とか。
篠田のそれは、彼らの人生論よりよっぽどいい。
卑しくない、換言すれば品がある。育ちの良さは真似できない。
しかし、割り引かねばならない点がある。篠田は、芸術家であるから存分に孤高を楽しむことができた。人間関係に悩まされたとすれば、もし、あったとすれば、lecherous画商とのそれくらいだろう。会社に属さなかったので、上司や部下、取引先とのいざこざに取り乱されることは皆無であった。
また、篠田は終生独身を貫き、勿論配偶者も子供もいなかった。
人生の柵(しがらみ)、軋轢の大半を占めるであろう会社や家庭問題からは全く無縁であった。
 
生まれて死ぬことは、考えても始まらない。
人間の知能の外、人の領域ではないこともある。
自分の心が一番尊い、と信じて、自分一人の生き方をする。
 
篠田に不幸の影はない。
同様の生き方ができるだろうか。
 
一方、下重暁子の生まれ育った家庭は不幸だった。
だから下重は家庭に夢も希望も持たなかった。GHQから「第三次世界大戦さえ起こしかねない男」と危険視された辻政信から学資の援助を受けている。
決して孤高でもなく、自立していたわけではない。
こちらも真似るには問題が多そうだ。

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