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『三宅雪嶺人生訓』一九
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/933730/1/22
〇成す可きことの多きに苦しまん
生活の為に職業を求むると言へば言ひ得んも、軍人が俸給勲章等を念とするよりも、専ら君国を念とし、又何程か君国を念とするの、遥かに多く能力を発揮し得るが如く、生活の為にするよりも国家の為め、社会の為め、人類の為めにする方、多く能力を発揮し得べし、もののふの矢橋の渡し近くとも急がば廻はれ瀬田の長橋、職業を求むるに汲汲たるは急いで損する者にして、自己よりも大なる者の為にせば、成すべき事多く、其孰れを択ぶべきかに惑はん。
【現代語訳】
〇するべきことの多さに苦しむがよい
生活のために職を求めると言えばそう言えなくもないが、軍人が俸給や勲章などを目的とするよりも、もっぱら君主や国のためとし、またある程度君主や国のためとすることが、そうでないよりも遥かに多くの能力を発揮できるように、生活のためにするよりも国家のため、社会のため、人類のためにする方が、より多くの能力を発揮することができるだろう。
【補説】
「もののふの矢橋~」は宗祇の弟子宗長が詠んだ連歌で、京へ上るのに、矢橋から舟に乗って琵琶湖を横断する方が陸路より早いが、比叡おろしの突風が吹き危険である。それよりも、遠回りだが瀬田の橋を渡って行く方が結果的に早い、というような意味である。
いわゆる「急がば回れ」である。