
劇団四季ウィキッド を好き勝手に振り返る2
2度目の観劇にして、ご贔屓・山本紗衣さんのグリンダを観るという夢が叶ってしまった!!
幸せなの♪♪そうね、幸せだわ♪♪
はい。とーーっても、幸せな観劇になりました。
オペラ座ではどうしてもタイミングが合わずに擦れ違い続けたので、紗衣さんを拝見するのは「思い出を売る男」以来、実に5年ぶり。
相変わらず可愛らしさ100%の笑顔と、神秘的なまでに豊かなソプラノと、少し困ったような眉が好きで、好きで、好きすぎて…
少しばかり、オタクの語りをば。
彼女は、間合いの量り方が上手すぎる。
台詞、歌のレベルが高いのは言うまでもないが、それらを繋ぐブレスすらも、絶妙のタイミングで、生きている。
また、相手のあるお芝居(特に男性と組んだ時)での雰囲気の作り方は、数多の四季俳優の中でも、群を抜いていると思う。
「大嫌い!」でエルファバと向き合えば、相容れない違和感をそこに作り出す。
フィエロと抱き合えば、芝居の次元を超越した濃密な波が、彼女とフィエロを包む。
民衆の手を握って励ます瞬間でさえ、一人一人とのささやかな物語が見える。
これは、培ってきた経験によるものかもしれないが、それ以前に、彼女の持ち前のもの、天性のものであると思う。
ダンスパーティーで、一人で踊るエルファバを見つめながら、バツが悪そうに、申し訳なさそうに、どうしよう…と小さく狼狽える演技が良かった。
あの時グリンダに芽生えた感情が、そこからの二人の関係性を変えていくことになる、大切な場面である。
繊細に丁寧に、それでいてあくまでも自然に、グリンダの心の動きを見せてくれた。
そして、コメディセンスには舌を巻いた。
グリンダそこまでやって委員会が発足しそうなほど、細かいネタで畳み掛けてくるし、笑いを仕掛けてくる。
「ポピュラー」は、本当に楽しそうに歌い、暴れ、走り回る。
グリンダというか、中の人が心底楽しんでる感じがして、観ながらニヤける私。
Y字開脚、全然できてないのに「っしゃぁ!」って手叩いてた。
前回観た時の中山さんは綺麗にY字開脚を決めていたので、ここは俳優に委ねられているのね〜
髪飾りを渡すのを思いつくまでの5秒くらいの間で、脚パカパカさせたりダンダン踏み鳴らしたり、自分の頭をポカポカしたり、とにかく忙しい。
麦畑でのラストバトルでは、大股でステッキ振り回して、かと思ったらステッキを放り投げて素手で取っ組み合い。
オペグラを持つ手が震えるくらい、笑ってしまった。
「あなたを忘れない」では、「ごめん、いつも私たち喧嘩ばかりしてた♪」と歌うエルファバに右手を握られながら、いたずらっぽく首をすくめて笑い、左手でサムズアップ。
そして、「素直になれなかったの♪」と続く。
2人が築いてきた時間は決して長くはなかったけれど、小さな理解とささやかな優しさの積み重ねで、いつしか離れ難い存在になっていた。
エルファバの最後の優しさを受け取ったグリンダは、彼女の真実を抱いたまま、善い魔女として、オズに尽くすのだ。
「思いを託してくれた人たちのために この身を捧げます」。
この言葉は、グリンダからエルファバへの、精一杯の決意表明だったに違いない。
「フィナーレ」での、グリンダの悲痛な面持ちが印象的で、暗転するまで彼女の顔からオペグラを外せなかった。
歓喜に沸く人々の上で、グリンダは、ひとりきり。
総督になったネッサローズ然り、上に立つ者は、孤独なのだ。
紗衣さんの困り眉も相まって、あまりにも哀しげな表情だった。
若くして劇団四季の「鉄人」の異名をとる三井莉穂さんが、今回のエルファバ。
(鉄人の謂れ…2018年に7.8ヶ月もの間、1人でジャスミンを演じ続けたことから。「鉄人がアグラバーにいる間に、子供1人生める」と言われたとか、どうとか…)
歳の若さもあるのか、紗衣さんのグリンダと並んだ時に、ちゃんと同級生に見えた。
初めて三井さんを観たのが大阪リトマのサンボだったため、しっかりとソロの歌声を聴くのは初めてということになる。わくわく。
期待値が高かったにも関わらず、その遥か上をいく圧倒的な歌唱力、これは確かに鉄人や…と納得。
力まずにあれだけの声量を出し続けられる。
いったい全体、どういう作りの喉なのだ。
「ポピュラー」や麦畑バトルなどの笑いを誘うようなポイントでは、紗衣さんがリードして、それに三井さんが上手く乗っかることで場のエネルギーが倍増する感じ、良い連携プレー。
声質、体格、芝居のテンポ感、全てにおいて、三井エルフィと山本グリンダは相性が良い。
欲を言えば、三井エルフィがもっと弾けても面白いかもしれない。
大阪公演の間に、もう一度、いや何度でも三井エルフィ、目に焼き付けたい。
今村綱利ボック。プライド高め、でも根は良い奴、芯を持った好青年って感じ。
グリンダに「ビック」と間違えられ続けて、いつかブチギレるんじゃないかなとヒヤヒヤするくらい、「ボック!!!」と強く訂正していた。
カイサータティクさんのフィエロ、ああ顔が良い…
三井エルフィとの並びが絵になる。
「二人は永遠に」での熱い抱擁と口づけは、カイサーさんにしか出せない、一種の魔法のような色気があった。
オズの魔法使いは、鈴木涼太さん。
こんなにもロマンスグレーが似合うお歳になられたのね。
涼太さん、夢醒めエンジェルのイメージが強いけど、いつのまにかイケおじの領域in…
ディラモンド教授の平良交一さん。
深みのある、良いお声。
ランチのシーン、もそもそしてて面白い。
カテコでマスク外された時、渋くて凛々しいお顔に、なんか涙出そうになった。
アンサンブルはまだ掴みきれてないんだけど、帶津翔太さんの踊りのしなやかさとキレが凄いのはわかる。
どこにいても、ほぼ一瞬でわかる。
長い手足を余すことなくフル活用した、気持ちのいい踊り。
また、初演から出演されている清川晶さんの安定感も必見。
こう言っては失礼かもしれないが、ベテランであるにも関わらず、「なんかかわいい」のである。
文永傑さんの力強い踊りとクールな表情のコンビネーション、かっこよかった。
2幕、ネッサローズの部屋の後に機構トラブルで約15分の中断。
ボックが走り去り、ネッサが「エルファバよー!」と叫び、転換が…始まらない。
セットは動かず音楽もフェードアウト、ネッサは車椅子を押して上手へ捌けた。
本来であれば舞台の上手奥に捌けるネッサの表情は見えないが、真横を向いて捌けてくれたおかげで、毅然とした表情を崩さずに歩みを進める、強い姿を見られた。
これっぽっちの動揺も見せず、冷静に役を貫いて対応した松下由季さん、さすがの役者魂。
再開のアナウンスには、自然と拍手が。
温かい客席だった。
と、こんな感じで今回は山本紗衣さんを見られた喜びが先立ち、ずっとオペグラで追いかけていたので、あまり作品全体を見られていない。
あー、可愛かったなぁ…
好きだなぁ。
四季にハマった高校生の頃から、ずっと大好き。
次はどんな作品でお会いできるかな。
あー、でも、グリンダで大暴れする姿も、もっと見たいな。
兎にも角にも、今回も無事に観劇できたことに感謝。