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ちひろさん を好き勝手に振り返る

何も起こっていないのに、見終えた時、心の中には温かい何かが生まれている。

ちひろは孤独と共に生きているのに、ちっとも寂しそうじゃないし、むしろその生活を心から楽しんでいる。
あぁ、こういう人になりたいと思った。
1人でも楽しめるから、誰かといても、楽しめる。
1人でも生きられる強さがあるから、他者を大切に思えるし、躊躇なく助けることができる。
ちひろの傍にいる人たちは皆、それぞれに孤独を抱えているけれども、その孤独ごと自分を愛することができるようになっていくのだ。

ちひろは、常に適量の「孤独」が無いと、潰れてしまうのだろう。
それをよく分かっているから、オカジとまことがお見舞いに来てくれても素っ気ないし、バジルにあらぬ疑いをかけられても流せる余裕がある。
もし、オカジたちがちひろのことを「冷たい」と言ったとしても、バジルが「もう絶交する」と息巻いたとしても、彼女は「そっか」と言って手を振るだけに違いない。
きっと、寂しくも何ともない。未練もない。だって、人はもともと1人なのだから。

私は、人は皆さみしがり屋だと思っている。
それをどう捉えて生きていくかは、その人次第。
友達や恋人で塗り固める人もいれば、1人で孤独と向き合うことを選ぶ人もある。
その人が強いとか、優しいとか、そういう話ではなくて。
「寂しい」という感情すらも我がものとして、日々を淡々と生きている。
その中にも、孤独どうしの繋がりができたり、寂しさを共有できる相手がたまに現れたり。
これこそが、人生の醍醐味では無いだろうか。
孤独を分け合う。1人どうしが繋がる。1人と1人が繋がると、また新たな1人が現れる。

ただのお弁当屋さんから、牧場に転職したちひろ。
もし、次に彼女の周りから孤独が無くなりそうになる時が来たら、今度はどこに行くんだろう。
孤独の適量摂取を続けるちひろが行く先を、真剣に考えてしまう。
彼女が「同じ星の人」に、新たに出会えると良いなと思う。

キャストに関して言うと、まことの母役の佐久間由衣が印象的だった。
花束を受け取った時の表情や、焼きそばをオカジに振る舞う姿。
彼女なりに、大切な息子のために死ぬ気で頑張っているのだ。
ただ、かなり不器用で、彼女自身も愛を知らずに育ったのだと思う。
きっとあの親子は、今後良い方向に向かっていくはずだと、希望が見える描き方だった。

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