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エノーラ・ホームズの事件簿2 を好き勝手に振り返る

エノーラ・ホームズの事件簿2

新作が前回作を超えるというのは、なかなか難しいことだと私は思っている。
映画を引き合いに出すならば「天使と悪魔」「インフェルノ」は、「ダヴィンチコード」を超えられないし、ドラマに例えたら「チェイサーゲームW2」は、明らかに「チェイサーゲームW」を超えられなかった(あくまでも個人の見解ではあるが)。
前作の評価やファン層のニーズを必要以上に取り入れて、肝心のネタやメッセージ性がやや薄味になってしまうのが理由だと思う。
その意味で、「エノーラ・ホームズの事件簿2」は、前回作の勢いを踏襲しながらも、さらに発展した面白さを見せつけた、成功例と言えるだろう。

2年の時を経て、ミリー・ボビー・ブラウンが少女味を些かも失っていないことに感動を覚えた。
特に今作はアクションシーンが見応えあり(本格派には物足りないかもしれないが)。
高らかに「ハレルヤ」が流れる中での死闘が特に良かった。
あの場面は、カメラワークにも気合いを感じた。
グレイル警視役のデヴィット・シューリスの、渾身の「やられ芸」も相まって、手に汗握りながらも笑えてくる。

前作での第一印象「シャーロックが長身痩躯じゃない!解せん!!」だった、ヘンリー・カヴィル演じるシャーロック・ホームズのゴツさにも、見慣れてきた。
もはや筋骨隆々のシャーロックじゃないと受け付けない身体になっているのは私である。
妹の無実を証明できず、感情的にゴミ箱(だったっけ?)を蹴り飛ばすシーンは、秘めた家族愛がよく表現されていたと思う。
ラストシーン、妹の到着を待ち侘びている様子が、なんだか微笑ましい。
すっかり妹の手の上で転がされている兄だった。

テュークスベリー役で続投のルイス・パートリッジは、グッと成長した社会人らしい雰囲気。
前作での頼りない感じは払拭されているが、たまに覗く少年らしさが良い味を出している。

エノーラのピンチを救いにきた母・ユードリアとエディスのかっこよさったらない。
「女は強い」のである。
演じているヘレナ・ボナム=カーターとスーザン・ウォーコマの安定感に、惚れ惚れした。
2人がエノーラを逃す場面での、ユードリアの言葉が、「ENOLA」の名の由来を完全に明かしていた。
近くにいて守り続けてやりたい気持ちもあるに違いないが、敢えてエノーラを1人で行かせ、「ひどい髪型ね」などと冗談めかす。
親の心そのものを見たような気がした。

ハンナ・ドッドが演じたサラ・チャップマンという女性の存在が印象的だった。
恋人への愛だけでなく、死んでいった名も無き女工たちの無念を晴らすという目的が、彼女を突き動かしていく。
隠蔽された証拠を自らの手で集め、堂々と悪に立ち向かったサラ。
大幅に脚色はされているものの、サラは実際にマッチ工場で働いており、劣悪な環境と労働者への虐待に対してストライキを起こし、それを先導した人物だという。

彼女らが工場を後にして、晴れ晴れとした表情で街に繰り出す姿に、ユードリアとエディスは「イギリスの未来」を見たことだろう。
相変わらず、エノーラの髪型をディスってはいたが。

ちなみに、「エノーラ・ホームズの事件簿3」って制作されてませんか?
もうそろそろ、ミリー・ボビー・ブラウンが成熟した大人の女性になってしまう気がするが、それはそれでいいのかもしれない。

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