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エノーラ・ホームズの事件簿 を好き勝手に振り返る

シャーロック・ホームズを扱った作品の金字塔はBBCの「SHERLOCK」だと信じて疑わない私であるが、この度は弟に勧められるまま、シャーロック・ホームズの「妹」を主人公にした作品に出会った。

エノーラ役のミリー・ボビー・ブラウンの、溌剌とした演技にたちまち魅了されたことは言うまでもない。
16歳という等身大の少女を、茶目っ気たっぷりに見せてくれた。
子供と大人の境目とも言える年齢。
危うく不安定な時期ならではの、「根拠のない自信」「危険を顧みない勇気」を、体当たりで演じている。

次兄・シャーロックを演じたヘンリー・カヴィルが印象的だった。
衣装で隠しきれていない、逞しい体躯。
私の知っている「シャーロック・ホームズ」は皆、細面に長身痩躯であり、それが彼と言うキャラクターのアイデンティティにもなっている。
その点、カヴィルは全く新しいシャーロック・ホームズ像を確立したと言えよう。長身、という点は同じだが。
職業柄、感情的になることを避けて生きているが、それでも隠しきれていない、妹への愛。
マイクロフトといる時には弟の顔、エノーラといる時には兄の顔、というように異なるイメージの明確な演じ分けが素晴らしかった。
優しく不器用なゴリマッチョ・シャーロック。
私は、好きだな。

また、エノーラが敬愛する、3きょうだいの母親・ユードリアを演じた、ヘレナ・ボナム=カーター。
(どこかで見たことあるなぁこの人〜と思っていたが、ようやくわかった。
映画「大いなる遺産」でミス・ハヴィシャムを演じていた)
エノーラと本気で取っ組み合いをする庭のシーンが良かった。
エノーラが自由と未来を掴めることを願って、文字通り「女手一つで」彼女を育て上げた母親は、自分を追ってロンドンまで出てきた彼女を見て、安心したに違いない。

アナグラムが得意なエノーラは、「ENOLA、反対から読むとALONE(独り)」なのだと言う。
たしかに彼女は、「ALONE」でも戦える勇気と知性を持っている。
しかし、彼女には、頼れる兄がいる。
生きていく中で、友人ができ、志を同じくする仲間に出会い、師と仰ぐ人にも出会うだろう。
そして何より、誰よりも彼女を愛し、強く育てた母がいる。

ユードリアは、彼女が真の意味での「ALONE」にならぬようにとの祈りを込めて、その言葉を逆さまにして「ENOLA」と名付けたのだと思う。

さあ、次作を早く見よう。

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