知財の懲罰賠償って、なに? 知財の世界が、恐ろしいことに!
いま、東アジアのハイテク事業を行っている国々で、知財の懲罰的な賠償金が、一般的になってきました。
具体的には、中国、韓国、台湾で、実際の運用されています。
では、「懲罰」という賠償金の制度って、いったい何でしょうか?
懲罰的な損害の賠償は、日本では認められていませんが、英国法の民事訴訟法では、一般的な概念です。
通常の知財の侵害ではなく、意図的に侵害を行った場合は、最大で数倍まで、実際の損害の賠償金額を増加させることができます。
コモンローを採用していない国が、良いとこどりを
この法理は、アメリカや他のコモンローという法律の考え方を、英国から引き継いだ国では、用いられているんですよね。
コモンローって、イギリスで、いくつかの判例が積み上げた合意を、ベースに成り立っているものです。
六法全書みたいな、文字で書いてある法律(成文法)は、昔なかったので、社会の一般的な慣習から生まれたものなんですね。
おかしなことに、現在の社会では、これだけ成文法が整備しているにも関わらず、昔の慣習法の考え方が、並立して存在しているんですよね。
特に、知財の分野では、会社が当事者の訴訟になることも多く、企業活動による損害額は大きくなるのが一般的です。
知っていながら、そんな損害額が大きくなる行為を行った者には、厳しく罰しようとしているのが、このコモンローなんですね。
つまり、けしからんことをした人には、懲罰として金銭的に負わせるという考え方です。
それがさらに、数倍まで増やすことができるので、侵害系の仕事をしている知財関係者の間では、とても恐ろしいルールなんです。
日本は、90年代以降、この懲罰賠償金のルールに、とても苦しめられたんですね。
アメリカの特許権者が、懲罰賠償金を、日本企業相手に請求してきました。
当時の日本企業は、もうアメリカのマーケットに進出する税金だと思い、素直に支払っていました。
日本以外のアジア先進国がこぞって採用
これが、今度は、東アジアのハイテク事業を行っている国々で、知財の懲罰的な賠償金が、一般的になってきました。
中国、韓国、台湾で、実際の運用されています。
あれ、日本は違うの?思いますよね。
実は、日本でも、2005年頃から、導入の話が盛り上がっていました。
しかし、他の国がいずれも故意に侵害した悪質なケースには、懲罰的賠償金の支払いを認める風潮に、日本では大反対だったんです。
こうした動きを制するように日本知的財産協会は、2017年5月2日に「懲罰的損害賠償制度の導入に強く反対する」との意見を表明しました。
理由は、いろいろあるようでしたが、日本企業は多数の特許が交錯する中で、事業活動を行っているから、というのが大きな理由のようです。
つまり、以前、特許の売却のところでも説明しましたが、日本は、歴史的にクロスライセンスが多かったので、特許侵害の賠償金を多くしちゃうと、事業活動に影響をきたすということですね。
日本独自のライセンス制度が障害に
クロスライセンスというのは、保有している特許の実施を、複数の企業間で互いに許諾し合うことです。
お金を支払う場合もありますし、無償の場合もあります。
なぜ、こんなことをしていたかと言いますと、ある製品の製造に有用な技術があるとします。
そして、複数の企業が、その一部ずつを特許として取得している場合がよくあるんですよね。
ひとつの会社で、技術を独占するということは、同じような製品を販売していた日本企業の場合は稀だったんですよね。
この場合に、企業間の特許侵害リスクを避けて、製品も効率よく製造して、利益を得たかったんですね。
そのために、クロスライセンスが利用されていました。
特許法ではクロスライセンスを容易にするために、実施許諾の協議を認めています(特許法92条)。
知財の価値を低く抑えて、知財が負債になる日本
でも、これって、もともとの知財の価値を低く抑えて、侵害しても企業活動に影響を与えないようにしているってことですよね。
つまり、同じ東アジアの中国、韓国、台湾とは、全く逆の方向性です。
日本の場合、これにより生じたのが、大量の休眠特許です。
使う当てのない特許を企業は、とりあえず持っておいていますが、それも価値が低いので資産化できません。
知財は、負債なんですよね、日本企業にとって。
それでは、まったく逆の政策を取っている、中国、韓国、台湾は、今後どうなるんでしょうか?
このような国だって、国内の企業は、多数の特許が交錯する中で、事業活動を行っていますよね。
かれらが重視しているのは、知財の価値の向上による、日本に代わる技術立国化なんですよね。
特に、中国や台湾は、欧米から知財政策の保護の強化を、長年、求められてきました。
今回の懲罰的な知財の損害賠償制度の導入も、それが大きな理由の一つでした。
でも、かれらが目指しているのは、ハイテクマーケットの世界首位なんですよね。
かつての日本のように、アメリカのマーケットに進出する税金だとは思わずに、そのマーケット自体をアメリカから奪い取ろうとしているのではないでしょうか?
ガラパゴス化する日本の知財
知財の損害賠償金が高騰すれば、それはその国の特許の価値が著しく向上します。
つまり、損害賠償金というのは、知財の価値のバロメータなんですよね。
東アジアのハイテク事業を行っている国々で、知財の懲罰的な賠償金が、一般的になってきました。
具体的には、中国、韓国、台湾で、実際の運用されています。
知財の懲罰的賠償請求を認めていない、東アジア先進国は日本のみ。
まるで、日本は途上国型のアンチパテント政策のままとなっています。
このまま行くと、日本はハイテクマーケットでもガラパゴス化して、恐ろしいことになりそうです。
外国知財をもっと身近に
One Stop IP Service,
Masuvalley and Partners