【物語に見る信じ込み】ソー・ラブ&サンダー
奇しくも安倍元首相が銃撃された7月8日に公開されたソー・ラブ&サンダー。偶然にしてはあまりにも出来すぎた内容だったので、その内容に見られる信じ込みについてと、そこから捉える安倍元首相への銃撃が意味するもの、そしてこれからの世界のあり方について考察していきたいと思います。
ネタバレを含むので、作品をご覧になってから読まれることをおすすめします。
神に見放された者、ゴア
物語の冒頭、砂漠で彷徨うゴアは、一緒にいる娘だけでも助けてほしいと神に祈ります。しかし、その祈り虚しく娘は死んでしまい、なんとかたどり着いたオアシスで自分が信仰している神に出会います。
そこで神に冷たくあしらわれたことで、その場にあったネクロソードを手にして神を殺してしまい、ゴッドブッチャー・ゴアとなってしまいます。そして、宇宙各地にいる神様を殺して回るということをやり始めます。
この時のゴアは、自分の娘の死を受け入れることができず、それを誰かのせいだと思いたかったんですね。そのタイミングで信仰する神と出会ってしまったことで「逆恨み」のような形で神を殺してしまうことになったわけです。正に「神も仏もない」心境だったことでしょう。
ゴアは物語の中だけの存在か?
こういう分かりやすい話は物語の中だけのことでしょうか?多くの人は気付かないことがですが、日常的に色々なネガティブなことをやっているものなんですね。
例えば自分の家族を無差別殺人犯に殺されて、その犯人の極刑を望むというのはゴアの例に近いものですが、上司に叱責されてムカついたとか、道路で追い抜きに腹を立てて煽り運転したとか、子どもが言うこと聞かないからひっぱたいたとか、色々やっていないでしょうか?
嫉妬で他の人の足を引っ張ったとか、本当はそう思っていないのに嫌われたくないがために同意するふりをしたとか、仕事の後に飲み屋で職場の愚痴を延々と言い続けたとか、一見すると関係なさそうなことであっても全て繋がっていたりします。
安倍元首相銃撃に絡む出来事を観てみる
今回起こった安倍元首相の銃撃事件に対して、首相を始め多くの政治家や有名人が「犯人は許しがたい」と言っていたのを見られた方も多いと思います。その反応のパターンこそが今回の事態を招いたということには気づかずに発言しているんですが。
この「目には目を歯には歯を」的な発想は、人類の意識に根強く存在しています。例えば、報いを受けて死刑になるべきなんだといった思考には、「許せない」という質が潜んでいます。「恨み」と言い換えてもいいかもしれません。
そうやって相手に対する寛容さを失い続けていった結果が、世界各地で終わることがない紛争や、全世界が核武装する今の世の中を演出していることに気付くことができるでしょうか?
一方で、安倍さんが亡くなったことを歓迎するような発言がSNSを中心に飛び交っていたのも目にされた方もいるかと思います。勿論、在任中に色々な疑惑があったにもかかわらず、それにきちんと答えることをしなかった面があるのは確かです。しかし、だからと言って人の死を喜ぶようなことができるものでしょうか?
恐らく、何らかの不満を抱えている人にとっては、いい思いをしているように見える政治家の死は「ざまあみろ」と言いたいような出来事だったかもしれません。しかし、その意識というのは上でゴアが神を殺した「恨み」の質と本質的には同じだということなんですね。
多くの人は、無意識に刷り込まれた痛みの反応パターンによって周りに敵を創り出し、苦しみの現実を生み出して苦しい苦しいと言っているのです。その意識は単にその人が苦しい現実を体験するだけでなく、集合意識に沈み込んで社会的な苦しい出来事を創り出してしまいます。
つまり、普通の日常を生きている我々の意識に溜まっている苦しみの意識が、安倍元首相の殺害という痛ましい事件を引き起こしたと言っても過言ではないということなんです。
自分とは関係ない政治の世界で起こった出来事なのではなくて、自分が持つ人と争う質、嫉妬や恨みのエネルギーが安倍元首相の殺害という現象に繋がっている。そこに意識を向け、解放していく人が増えることが本当に重要だなと感じます。
最後にゴアが選んだものとこれからの時代
神を殺して回っているゴアを止めるために、ソーは新たにマイティ・ソーとなったジェーンと共に神の住む星を回り、最終的にゴアと対峙します。しかし、最後にゴアはあらゆる願いをかなえてくれる場に、先にたどり着いてしまうのです。
末期のガンという病気を抱えたジェーンは、ゴアとの闘いで力尽きそうになっています。そこでソーは、ゴアに、お前の勝ちだから好きにしろ、自分はジェーンを選ぶと言って背を向けます。
この時初めてゴアは、自分の本当の望みが何であったのかに気付いて、宇宙の全ての神を殺すという傷ついたプログラミングによる望みではなく、自分の愛を注いだ娘を生き返らせるということを選びます。
ここから見えてくるのは、どれだけ悪人に見える人であったとしても、本質は愛を求め、愛を与える存在であるということなんです。それがラブ&サンダーというタイトルに込められているんですね。
これからの時代は、争いを生み出すネガティブな意識を解放・浄化し本質の愛に還っていく時代なんだということを示唆しているんですね。それには、「赦す」ということが非常に重要です。
そして、「悪人」と言われる人が現れるのには人類一人一人の意識が反映されていること、その傷ついた質を一手に引き受けてくれている存在だということに意識を向けていく必要があります。
だからこそ、自分の内面を観て自分自身を変えていくことが世界を変えることに繋がっているんですね。
他にも、人間と神との関係性について等色々見えたこともあったのですが、それはまた機会があれば書きたいと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます!