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経営者ならマーケット消失も視野に入れて動くべし!

「昨年は、世界的に脱ガソリン車の流れが一気に進みました。本格的に脱ガソリン車に向けた対応をしていかなければならないのですが、何をどうすればいいのか、考えがまとまりません。これまでのマーケットが消失するということに対して、どのように考えていけばよいでしょうか?これまで真剣に考えたことがない、というより考えたくなかったので逃げていたのですが・・・(汗)」──自動車部品メーカー系列のエンジン関連サプライヤー経営者の方からのご相談です。

確かに、昨年はフランスに続いて、イギリスが2040年までにすべての新車は完全に電動化しなければならないと「脱ガソリン・ディーゼル」に舵を切りました。日本は完全な電動化を目指すものではなく、電動化の中にハイブリッドやプラグインと呼ばれるガソリンエンジン併用を認めていますが、それでも電動化の影響は避けられません。

ガソリン車と電気自動車では、完成車の部品点数も大幅に異なります。電動化で不要となる部品は、エンジン、トランスミッション、燃料タンク、マフラー、ラジエターなどエンジンに関する部品です。

一般的には、ガソリン車の部品点数が3万点、電動自動車では2万点と言われています。

ただし、厳密にはエンジン単体だけでも7,000から1万点の部品から作られていますので、その基準でカウントした場合、ガソリン車の部品点数は10万点近くなるとも言われています。

2011年版 中小企業白書 第2節 産業を支える中小企業 3 課題と対応 第2-1-41図 電気自動車等の影響(自動車部品の変化)https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/html/k212300.html

そして、このエンジンこそが各自動車メーカーのノウハウを結集したものであり、簡単に真似できるものでなく、新しい企業が参入する際の参入障壁になっていました。エンジンをはじめとするノウハウを外部に流出させず、事業・業務のすり合わせや効率化を目指すためにも、完成車メーカーを頂点とした「系列」という産業構造・調達制度(Tier1・Tier2・Tier3・・・)が非常によく機能していました。

しかし、電動化によりノウハウの塊(=ブラックボックス)であるエンジンが不要となると、家電を組み立てるように、必要な部品さえ集めてくれば、誰でも電気自動車をつくることができるようになってしまったのです。

なお、ガソリン車では、エンジン、トランスミッション、ブレーキ、サスペンション、パワーステアリングなどなど、あらゆるシステムを個々に制御するために60~100個の専用ECU(電子制御ユニット)が搭載されています。

ところが、電動化されて電気自動車になるとECUは大幅に減削減可能となります。日産自動車の「リーフ」では30個、テスラの「モデル3」に至ってはわずか5個しかありません。自動運転装置の搭載によってECUが集中管理型に移行、カメラやセンサーなどの情報を一極集中した結果、配線・回路が簡略化され、パーツ点数を大幅に減らすことが可能となるのです。

このように、自動車の電動化に伴い、エンジン関連の部品だけでなく、ECUなども大幅に削減することが可能となりますので、エンジン関連の部品やECUを製造しているサプライヤーにとっては、この経営者の方がおっしゃる通りで「マーケットが消滅する」ことになってしまいます。

まさに、最近よく聞くようになった「ゲームチェンジャー(game changer)」の出現といった感じですね。「電動化」という「ゲームチェンジャー(game changer)」の出現により、自動車業界のサプライヤー体系は一変することになり、既存のエンジン関連企業が短期間で時代遅れとなりマーケットから退場せざるを得なくなるなどの窮地に立たされてしまう・・・

既に、「電動化」の影響で、大手自動車メーカーは工場閉鎖・配置転換等に踏み切っています。

トヨタ自動車東日本株式会社(本社:宮城県)は、2020年12月末に「東富士工場」(静岡県)を閉鎖した。従業員約1100人のうち約700人は東北の3工場などに順次異動したが、約400人は定年、または静岡県内での転職などを希望して退職している。

三菱自動車の子会社「パジェロ製造」は、2021年8月31日に岐阜県坂祝町にある工場を閉鎖。これによって「パジェロ」の生産も中止された。全従業員988人のうち希望退職者は278人、地元の近隣企業への再就職者は361人。つまり、65%の人々が「三菱」から離職したことになる。残る349人は生産機能が移転された三菱自動車の岡崎製作所へ移籍している。

ホンダは2021年度中に「狭山工場」を閉鎖し、その機能を寄居工場(ともに埼玉県)に集約する。また、2025年末までに「真岡工場」(栃木県)を閉鎖し、その約900人の従業員を配置転換する。

大企業では他工場への異動、グループ会社への出向、または地元関連企業への転職などへの斡旋が行われるケースが多いのですが、中小企業では他工場への異動・出向、新たな就業先を手当てすることは難しいのが現実です。

また、Tier1やTier2などのサプライヤーでは大企業の場合もあり、電子機器、サスペンション、内装など、電動化でも必要な部品を扱っていれば電動化に適応して、ピンチをチャンスに変えることも可能かと思います。

 しかし、ガソリンエンジン特有の部品に特化してきた中小企業の場合、特に内燃機関、バルブなどを得意とする企業では、その技術を他業態・他業種に転用できなければ、電動化の波に飲み込まれてしまいます。

現在、自動車産業では「電動化」だけでなく、大きな変化として「CASE」が挙げられており、これらにも対応していく必要があります。(「CASE」とは、「Connectivity(つながる)」「Autonomous(自動走行)」「Shared&Service(共有)」「Electric(電動化)」の四つの言葉の頭文字を取ったもの。)

2020年版 中小企業白書 第2部 新たな価値を生み出す中小企業 第3章 付加価値の獲得に向けた取引関係の構築 第1節 取引構造の実態https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b2_3_1.html

「ゲームチェンジャー(game changer)」ですが、これまでどのようなものがあったのか見てみましょう。Google、iPhone、Facebook、Amazon、YouTube、Netflix・・・

これらの出現により、これまでの事業形態は一変することになり、既存の事業者が短期間で時代遅れとなりマーケットから退場、もしくは存在意義がないものにされてしまいました・・・

それではどのように対応したらいいのでしょうか?
「ゲームチェンジャー(game changer)」の台頭への対応策としては、次の3つになります。

目次 [非表示]

①新規顧客の開拓

会社の既存技術を活かして、(これまでの業界・業種にこだわらず)新規顧客開拓をすることは、電動化であろうがなかろうが、あなたの会社の至上命題であり、経営者であるあなたは常に新規顧客開拓をし続けなければなりません。

創業100年を超える会社は日本全国の企業のたった2%ですし、起業10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が淘汰されています。

2011年版 中小企業白書 第3部 経済成長を実現する中小企業 2 起業の意義https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/html/k311200.html

そう考えると電動化以外にも、いくらでもゲームチェンジは起こり得るのです。
社会インフラである銀行のビジネスマッチングの活用がおすすめです。)

だからこそ、常に新規顧客開拓をし続けることは、中小企業にとっての必須条件なのです。

②新たな技術による新商品・新サービスの開発

既存技術だけに頼らず、改善を通じて新たな技術を磨き上げ、新商品・新サービスを開発していくことも、あなたの企業の至上命題です。

原価極小化・高付加価値化は、企業の利益創出において欠かせません。

ものすごい速度で変化している時代だからこそ、技術開発も加速させなければならないのです。新たな技術は日々の改善の上に成り立つことを考えると、小さな改善を加速させ続けることが必要なのです。

③新たな事業展開の模索

既存技術を活かして、M&Aなどを通じて新たな事業展開を模索することは、経営者にしかできません。

・IT化への対応を目的に、IT企業を買収し、自社の製造技術にIT技術を組み込み高付加価値化

・事業領域拡大のために、拡大対象となる事業を営んでいる企業を買収し子会社化

・海外進出にかかる時間短縮のために、海外企業を買収し子会社化

やり方は千差万別ですが、情報を集めて先を見越した一手こそ、経営者であるあなたに求められているのです。
社会インフラである銀行のビジネスマッチングの活用がおすすめです。)

また、1964年東京オリンピック開催時に存在し、2015年も存在が確認できた2,192社を分析したところ、次のような特徴がみられました。

・生き残った企業は、売上高が大きく増加しても、従業員数に大きな変化はない。

・労働生産性を高めるために、企業合併を行ったり不採算事業を削減したりすることを躊躇なく行った柔軟性のある経営手法が、長期的な経営の持続を可能にした。

・一部例外的に、正社員数も増加させながら売上高を増加し続けることに成功した企業がある

帝国データバンク 1964東京オリンピックから50年を隔てて変化した産業構造の分析https://www.tdb.co.jp/bigdata/articles/07.html

これまで見てきたように、「ゲームチェンジャー(game changer)」の台頭によるマーケット消失といった事態には、下記についての日々の積み重ねが非常に重要になります。

①新規顧客の開拓

②新たな技術による新商品・新サービスの開発

③新たな事業展開の模索

日々の積み重ね以外、魔法の杖や特効薬はないのです。

常にアンテナを高くして、時代の変化や「ゲームチェンジャー(game changer)」などの動きを把握しつ、日々精進されることが肝要かと思います。

あなたは経営者として、マーケット消失といった事態に備えて、どのような経営を目指しますか?

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