見出し画像

経営の生命線は「値決め」であることを認識せよ!

「日本だけでなく、海外で商売する場合でも、『値決め』は非常に難しいですね。これまでいろいろと取り扱いをさせていただきましたが、高すぎても、安すぎても全く売れなくなるのです・・・東南アジアなどを中心に日本ブランドが好まれることから、強気の高値で勝負したときは全く売れませんでした。その後、円安が進んだこともあり、若干値段を下げたところ、今度は安過ぎて怪しい感じに取られてしまい・・・これも売れませんでした。『値決め』は高過ぎては手が出ませんし、安過ぎても不安感から手がでないようで、妥当な値決めが肝心なようです。」──とある越境ECセミナーでの専門家の方からのご意見です。

目次 [非表示]

日本の会社が陥り易い考え方

今回は顧問先の社長が、「国内だけでなく、海外への販売も検討していきたい!」とのご要望があり、いろいろとご相談させていただいている某信用金庫の支店長さまからのご紹介をいただき、越境ECセミナーに顧問先の社長とご一緒させていただきました。

顧問先の社長からは、「国内も海外も同じなのですね。甘く考えていました・・・(汗)」とのコメント。

どうやら、「日本製というブランドがあれば、国内よりも販売しやすいのではないかとお考えだったようなのですが、そもそもの『値決め』だけでなく、為替相場の影響もあり、一筋縄ではいかない」ということが理解できたので、少し困惑されていたようです。

適切な値決めのポイント

私からは、「貧乏暇なしでもいいのであれば、何も申し上げることはありませんが、

適正な利益を得たいのであれば、『値決め』は経営の生命線です。提供する価値に比べて価格が高過ぎれば当然に売れませんし、安過ぎると品質や性能に問題があるのではないかと勘繰られますので売れません。どちらにしても在庫が積み上がってしまい、赤字に転落してしまいます。」とお伝えしました。

これまで何度も申し上げていますが、

「できる限りの高値で売り、できる限り原価を下げること」が、利益を最大化するポイントなのです。その上で、販売数量を2倍・3倍に増やすことで、利益も2倍・3倍とドンドン増やしていくことが可能になるのです。

しかし、「値決め」を間違えてしまうと・・・
利益を増やす以前の問題で、商品・サービスが全く売れなくなります。その結果として、ドンドン在庫が積み上がってしまうのです。
おさらいになりますが、「運転資金=売上債権+在庫−仕入債務」となっています。在庫増加に伴い、その分の運転資金も必要になってくるのです。

ブランド戦略で高付加価値

もちろん、あなたの会社の商品・サービスが、きちんとブランド戦略でブランディングされていて、「高付加価値」であることを顧客が理解していれば問題ありません。ブランディングされた「高付加価値」に応じた「高単価」での販売が可能になるので、高い価格でも販売が十分にできるのです。

ブランディングされることで、競合他社・競合サービスなどと比較した際でも、あなたの会社の商品・サービスが「高付加価値」であればあるほど、圧倒的にあなたの会社が選ばれるのです。

その一方で、商品・サービスが「高付加価値」でない場合には、他に比較するもの(=購入すべき理由)がないので、価格競争になってしまいます。

自動車業界の事例

本当にそうなっているのでしょうか?
自動車メーカーの事例を見てみましょう
縦軸にマーケット規模、横軸に付加価値とした場合、右上の広いマーケットで高付加価値のエリアには、社長の皆さんが大好きなベンツ(他にも、BMWやアウディなど)が、左上の広いマーケットでコスト重視のエリアには、生産台数世界一位のトヨタ自動車が当てはまります。

最近では、トヨタ自動車も高付加価値を掲げて「レクサス」ブランドの自動車に注力していますが、店舗網も別ラインとして、高付加価値に見合うように自動車の生産工程・素材などの質感にもこだわり、販売スタップの接客レベルアップ、アフターサービスのレベルアップなど、従来のトヨタ自動車の販売方法とは一線を画す販売戦略を実施しています。

また、右下の狭いマーケットで高付加価値のエリアには、ポルシェやフェラーリなどの超高級スーパーカーメーカーが、左下の狭いマーケットでコスト重視のエリアには、軽自動車に特化しているスズキが当てはまります。

高付加価値が生み出す価格

このマトリクス図を見ていただくとわかりますが、左側は「高付加価値」ではなく、「コスト重視」で自動車を製造・販売しています。あらゆる車種を製造している生産台数世界一位のトヨタ自動車や軽自動車に特化したスズキなどでは、

際立った特色がないために、当然のように競合他社との価格競争に巻き込まれて、他社(日産自動車、ホンダ、マツダ、スバル、いすゞ自動車、三菱自動車工業など)の同程度の車種との比較・検討の上で、購入するか否かが決定されています。熾烈なボーナス商戦や大幅なディスカウントで顧客を獲得している事例が非常に多いのです。

これらに対して、

右側は「高付加価値」で自動車を製造・販売しており、それぞれのメーカーが特色を全面に打ち出したブランド戦略を実施しています。このため、顧客は「ベンツが欲しい」、「ポルシェがいい」、「フェラーリじゃないと嫌だ」といった感じで、それぞれのファン化した顧客が購入するので、競合他社との価格競争や同程度の車種との比較・検討ということ自体が極めて少ないのです。

経営の生命線の値決めは高付加価値で決まる

結果として、左側の「コスト重視」の2社の営業利益率が一桁なのに対して、右側の「高付加価値」の3社では営業利益率が二桁であり、フェラーリにいたっては25.1%という驚異的な営業利益率を叩き出しています。フェラーリでは、定価販売がほとんどで、しかも購入する際にオプション設定する顧客がほとんどということもあり、このような数字になっているのです。

売上高を生産台数で割った単純計算での一台当たりの単価ですが、これを見ていただければ一目瞭然です。

仮に、トヨタ自動車が、ベンツ・ポルシェ・フェラーリの価格と同様の「値決め」をしたらどうなるかということです。全く売れずに在庫の山を築くだけになると想定されます。同様に、ベンツはポルシェに近い価格の「値決め」をすることはできても、フェラーリの価格と同様の「値決め」は難しいのが現実なのです。

このように、顧客が対価を支払ってもいいと思えるような「高付加価値」がなければ、高価格の「値決め」はできません。あくまで、「高付加価値」=「高価格」とならなければ、当然のことですが、顧客が購入することはないのです。

あなたは、自社の商品・サービスを「高付加価値」=「高価格」に変える努力をしていますか?
顧客が考える「付加価値」をきちんと見極めて、適切な「値決め」をしていますか?


いいなと思ったら応援しよう!