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【インタビュー】国内最難関インド工科大学(IIT)に通う若き社会活動家の信念

ノートを買うお金がないから、中古のノートを集めて白紙ページを貼り合わせて作ったノートで勉強する。

そんな環境の中で努力をし続け、現在はインド最難関の大学であるインド工科大学(IIT)に通いながら貧しい子どもたちのために活動するという一面ももつSumit Kumar Ray(スミット・クマール・レイ)さんにインタビューを行いました。

IITに通い、将来は華々しいキャリアが待っている。そんな彼がどうして忙しい日々の学習と並行して貧しい子どもたちのために活動するのか。その原動力を探ると、彼には幼いころの原体験と、確固たる信念がありました。

彼の話は、日本の皆様に、インドの貧困家庭で育った学生や現場で活動する人々が抱く思いをリアルに感じていただける機会になると思います。この記事を通して、現場の社会活動家の生きざまと社会への影響を深く理解していただけますと幸いです。


Sumit Kumar Ray(スミット・クマール・レイ)さんとは?

Sumit Kumar Rayさん

2003年生まれ。ビハール州ガヤ出身。インド工科大学(IIT)マドラス校でデータサイエンスとアプリケーションを専攻。パトナ(ビハールの州都)ではデータ管理と分析に携わるインターンをしている。2023年7月から、NPO法人結び手の教育現場の管理やその他事業をサポートする社会活動家としての一面ももつ。

Sumitさんに聞いてみた (以下、翻訳)

恵まれない環境の子どものために働くモチベーションは何ですか?

実は私も同じような環境で育ちました。だから、私が当時経験していたことを、他の子どもたちに経験してほしくない。私が過去に直面してきた問題のいずれも、他の生徒たちには直面してほしくないという思いがあるのです。

また、私は自分の人生に価値を与えたいのです。そうすれば、自分の人生について後悔することはないのだと思います。例えば50歳になった時、「私は人生でまだ何もしていない」と後悔したくないのです。

自分と同じ境遇によって可能性を狭められる人たちをなくしたい。そして、自分の人生に価値を与えたい。これが私が活動をするモチベーションです。

Ambedakar nagar村での活動の様子

具体的にどのような活動をしているのですか?

現在、NPO法人結び手と一緒に活動しています。彼らは私に、恵まれない人のために働く貴重な機会を提供してくれました。一緒に教育のような社会システムを作り、学校を始めて、生徒たちが勉強するサポートをしています。その結果、子どもたちは今、教育を受けられています。

活動のサポートをしていますが、人生において価値があることができているという実感が得られており、大変満足しています。そのため、子どもたちに勉強を教えることやその他学校が必要とすることは何でもするようにしています。

あなたの理想の社会へのビジョンを教えてください。
そしてあなたは今後どのようなことをしていきたいですか?


私はまだ学生で、家族は中流階級ですので、まずは両親や家族のために良い職に就いて、お金を稼いで、両親のしたいことを叶えてあげ、家族のためにお金を使いたいと考えています。ただ、おそらくその後には、心の中の私が問うてくると思います…『人生でなにか良いことをするべきじゃないか?』『自分は最低限の生活を全うできない人たちを助けるために生まれたのじゃないか?』と。

彼らは何も持っていません。教育もない、お金もない、支援もない。私はそんな人たちの力になりたい。活動を通じて、子どもたちが良い人生を送れるように、教育を受けられるように、手助けしていきたいのです。だから、彼らが今後どのような問題に直面しても、必ずそうした状況を好転させるために全力を尽くしたいと考えています。

『生活に困窮している人がいない、教育を受けていない子どもがおらずに皆がが十分な教育を受け、良い仕事を得られる』
このような社会を実現したいのです。まず、これが私の人生の目的です。

そのために私は、彼らがより良い人生を送り、より良いことに取り組めるように努めたいです。教育、つまり学ぶことこそが、穏やかで幸せで豊かな生活を送るための最適な方法であると、彼らに理解してもらいたいとも思っています。そのような世界線を実現することが、私のビジョンです。

Ambedakar nagar村のアフタースクールでこども新聞を配るSumitさん

インタビューの最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

『人生の目的を見つけてみてください』
人生の目的を見つけることで、自分の人生の貴重さや尊さに気づくことができるでしょう。なので、もし人生の貴重さを感じたいと思っているのであれば、人生の目的を見つけることからしてみてください。なぜあなたはこの世に生を受けたのか?自分自身に問いかけてみてください。そうしたら、必ず答えが見つかるはずです。

その上で、あなたなりにあなたの人生に価値を与えてみてください。どんなことでもいいので、そうすることで、今日、明日、50歳になっても、70歳になっても、自分の人生ややってきたことを後悔することはないでしょう。簡単なことではないかもしれませんが、『生まれてきた目的を果たしている』『人生の目的のために動いている』と、困難があったとしても、そう受け止めることができます。

多くの人は、お金を稼ぎ、贅沢な暮らしをし、そして死んでいく。そのような人たちにとって人生で最も重要なものは何なのでしょうか?

目的を見つけること、それがあなたの人生に大きな価値を与えると同時に意味づけをします。そうすることで、人生の一つ一つに意味が与えられ、とても有意義な人生となると信じています。

代表福岡とSumitさん

インタビューのきっかけ

彼がインタビューの中で何度も強調した”adding value in your life(人生に価値を)”という言葉。彼と雑談をしている中でこの言葉を軸とした彼の信念に筆者が心を動かされたことがこのインタビューをすることになったきっかけです。

日々忙しなく働く中でどうしても他者に気を配っている余裕がない方や、人生の意味が分からずに自分の価値を見出せないと悩んでいる方々に、是非Sumitさんの想いを一度聞いてもらいたいと思いインタビューを申し入れました。彼の言葉から、他者貢献という方法が自分の人生に価値を見出す、ひいては他者を巻き込んだ自分の幸せにも繋がりうるというメッセージも受け取ることができるのではないでしょうか。

現場で活動をしていると彼以外にも、幼い頃の貧困を乗り越え現在は同じ境遇の人々のために活動するインド人の方と会う機会がよくあります。貧困から脱したら少しでも贅沢したいというのが人間の自然な心理だという気もするのですが、一方で自分が経験してきたことを他の人には経験させたくないと日々活動に勤しむ彼らの姿には心を打たれます。

そんな活動家の想いを知ることが、読者の皆さんが自分の生き方や人生の意義について考える一助になれば幸いです。

Written by Eisuke


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