3次元多様体論の主要な手法

3次元多様体に埋め込まれた曲面に関する主な手法を挙げてみます。
数学において、手法は重要です。ある手法が開発されると、その分野は大きく発展します。


Gordon--Lueckeの曲面上のグラフの理論

主に、Dehn surgeryで使われる手法で、二つの曲面の交わりから自然に構成できるグラフを調べ、多様体の性質を導く理論です。

Gabai--ScharlemannのSutured manifold theory

Haken多様体の同相型が基本群で決まることを証明する為に、Waldhausenが導入したhierarchyを、ホモロジー群なども考慮して、より精密にした理論です。

Rubinstein--Scharlemannのグラフィック理論

主に、Heegaard splittingで使われる手法で、二つのヒーガード曲面をそれらの単位区間との直積に関して動かして得られる特異点の状況を調べ、ヒーガード曲面の交わりを良い位置に置く理論です。

Scharlemann--Thompsonの一般化されたヒーガード分解

Casson--Gordonによって、3次元多様体のハンドル分解におけるハンドルの順序の入れ替えが導入されて以降、Scharlemann-Thompsonを中心に、一気に一般化されたヒーガード分解のthin positionの理論が整いました。この理論は、Hayashi--ShimokawaやTomovaによって、結び目の橋分解へと拡張されています。

Hempel distance

主に、Heegaard splittingやbridge decompositionについて、curve complex上の距離として定義される複雑度です。Casson--Gordonのweakly reducible Heegaard splittingやThompsonのdisjoint curve propertyなどの拡張となっており、Hempelが導入して以来、ここ15年間は3次元多様体のヒーガード分解の基本的な幾何的不変量となっています。

Kneser--HakenのNormal surface理論

3角形分割はPLカテゴリにおいては3次元多様体の定義を与えるものであり、Kneser--Hakenの定理以来、3次元多様体論においては最も基本的な手法であり続けています。

Jaco--Rubinsteinの3角形分割理論

Jaco--Rubinsteinの3角形分割理論においては、Thurston以降その有用性が認識されたideal triangulationを基盤にしている為、1 頂点の3角形分割です。

Jaco--Oertelの分岐曲面理論

3次元多様体の本質的曲面やヒーガード曲面について、存在・非存在性を導くことのできる強力な理論です。branched surfaceがJaco--Oertelによって導入されてから、triangulationと共に3次元多様体論の中心的道具です。

Spineの理論

これは殆ど3角形分割と双対的な理論です。3角形分割と同様に、3次元多様体の研究初期からSpineは基本的な対象です。上2つと関連し合います。

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