小説を書くのをやめるべきか否か

小説を書いている。自分の肩書きは『アマチュア作家』。まだ大きな賞に入ったことがないので、書籍出版をしたことはない。

もし、「したいか?」と聞かれたら「したい」。この気持ちは上手く言い表せないのだけども、小さい頃から慣れ親しんできた『本』を、自分が作れるとしたらすごいと思う。憧れとはちょっと違うし、悲願というわけではない。自分の本がお店に並んで売られたらすごいし、アドレナリン出ちゃうなと思う。

逆に、賞はけっこう真面目に欲しい。書籍化というのは自分にとっては副賞で、まず評価が欲しい。とったらとったで、たぶん、逆にダメ出しが多かったりするんだろうけど、通知表をもらった時のようなドキドキを味わいたい。正当な評価が欲しい。

Webで書いていると、Web上での評価をもらうコツというのがあって、つまり誰かの作品を読んで感想を感じよく書いて、読んでもらうわけだ。

わたしは本格的に書き始めて2年半になるけれど、このシステムに飽きてしまい、最近は読み合いはほとんどしないし、それでも付き合ってくれる人と仲良くさせていただいている。作品がいい人が、自分にとっては付き合いやすい人かどうかも別な話だとも思うし。

お陰でわたしの読者の大半は流動的だ。でも気に入ってくれた方はリピートしてくれる。Twitterやここで宣伝はするけれども、妙なお付き合いしてまでPVを稼ぐ理由がわからない。

さて。

どちらにしても書かなければ意味が無い。賞ももらえないし、読者も増えない。なので書くわけだけどもあまり器用ではないので、書き始めると『書くこと』ばかりに毎日がなってしまう。逆もまた然り。日常生活の細々したことが楽しくなると、頭にアイデアがあっても筆が進まない。

気まぐれなのかもしれない。

しかし、書くことには真摯でありたいし、打ち込んで書きたいので、たとえば読書にハマってる時とか、子供たちとゲームにハマってる時なんかは書くのは難しい。わたしはわりと多方面に渡って趣味が広く浅くなのでそっちに気持ちが行ってしまうと「ああ、こういう人生もいいかもしれん」となりそうになる。いやいや、小説をどうせまた書くでしょう、ともう一人のわたしが言う。文章を書くことはすでに性(さが)なのだ。

ところで皆さんはわたしのような物書きをどう思いますか?

実は「そんなふうならやめてしまえばいいのに」と遠回しに言ってくれた方がいるのです。それで、ほかに趣味を持つなら小説家を目指したらいかんのかとずいぶん悶々としたのだが、どうだろう?

小説一本で生きていくというのはストイックで嫌いではないけれど、どのくらいの割合かは別として、小説はわたしにとって人生の、或いは生活の一部だ。家族も大切だし、小説以外のことも健康で文化的な最低限度の生活を送りたい。なにしろ『独り身』ではないので、自分を大切にしなければならない。それが周りの人のしあわせにも通じるからだ。長く生きてきてわかったこと。自分が笑わないと相手も笑えないのだ。

他方、小説を書くには『引き出し』を沢山作るべきだという意見をあちこちで聞く。この『引き出し』というのが曲者なのだが、要するにちょっとしたアイデアでも集めておけみたいな? 自分の人生の中で触れたものすべてがひとつひとつの『引き出し』になっていく。

そう考えると、例に漏れず幼い頃からちょっと貧しい暮らしをしていたり、他の人と比べて明らかな不幸があったり、そんな嫌な経験も、傷ついた失恋も、すべてが『引き出し』になってしまうのだ。

なぁんて言うと大きく物事を言い過ぎているように聞こえるかもしれないが、そのひとつひとつの『引き出し』は小説を書いていると確かに生きてくる。たとえば主人公の心情、悲しみの深さ、その時の太陽の光や風の具合……。人生まるごと糧である。

と考えると、小説のことだけを考えてストイックに生きていなくてもいいんじゃないかと思う。小説を売り込むというのは、自分の人生を切り貼りして売り込むということだと思う。暑い夏の夕方、ウォーキングして息を切らすのも、そのあとのシャワーの順番で些かもめるのも、すべてネタになる。なにしろ子供を従えて歩いているので、いろんなことがあるし。

ウォーキングの帰り道に家庭菜園で収穫しているご夫婦からまるまる太ったナスをいただいたり、モロヘイヤをいただいて、初めてお味噌汁にしてみたり、そんな小さな毎日が物語にリアリティを与えていくのだとわたしは信じている。

気乗りしなくて駄作を書いても仕方ないし、そういう時は本当に読み返しても一銭の得にもならないものしか書けないので、やはり気持ちが乗った時に集中して書こうと思う。

それでも、小説をやめなきゃいけないなんてことはないと思うんだけどな。他人から見たら、本人の真剣度なんてわからないし。

なので、わたしはまだまだ長期的なスパンで書き続けるのだ。

読者の方にはしばしお待ちいただきますが、アイデアはずいぶん貯まってるので安心してください。みんな、形を与えられる然るべき時を待ってます!

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