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コロナ禍で、日本各地から外国人旅行者の姿が消えた。 

私は、全国通訳案内士という語学の国家資格で、海外VIPゲストのガイドやアテンドを約15年間続けてきたが、今回のような光景は初めてだ。どこか、東日本大震災直後の静けさ、に似ているようにも感じる。 

私について少々追記するが、他のガイドの皆さまと異なる特徴は、日本政府観光局(JNTO)が観光立国を掲げ海外に進出していた当時、2004年から英国系旅行社で富裕層向けツアーをつくりはじめたことだ。 

その頃は、「インバウンド」という言葉も頻繁に使われていなかったし、築地市場場内の目玉である「マグロの競り」は早朝5時に出かけても十分見学することができた。今となっては、面影もない浜離宮庭園の隣地に、世界最大級の規模で存在した築地場内市場だ。 

今年は4月に、中東サウジアラビアからの王室関係者のガイド依頼が予約済みだったが、コロナ禍でその仕事はなくなった。その他のツアーもキャンセルされた。 

一方で、潤沢な時間が出来た。 

以前から始めたいと思っていた、茨城県のインバウンドツーリズムの掘り起こしとコンテンツの磨き上げに、本格的に腰を据えて着手出来るようになった。 

そもそも、通訳ガイドの私が「海外VIPの取り扱い説明書」を書こうと思うに至った背景がある。2020年2月に実施した、茨城県古河市初の視察ツアー(FAMトリップ)がきっかけだ。 

FAMトリップは、茨城県国際観光課と茨城県観光物産協会の主導のもと、主に富裕層を顧客にもつ都内高級ホテルのコンシェルジュを対象に県内の魅力を体験いただき送客につなげる趣旨だった。 

招聘者は、レ・クレドールジャパンと日本コンシェルジュ協会に所属するチーフコンシェルジュの皆さまで、パレスホテル東京様、ザ・ペニンシュラ東京様、マンダリンオリエンタル東京様、ホテルニューオータニ様で、レ・クレドールジャパン会長もお声がけさせて頂いた。 

私の役割は、故郷である茨城県古河市の新たな滞在型観光コンテンツを掘り起こし、旅にストーリー性を持たせツーリズムを造成するお手伝いとツアー全体のオペレーション、マネージメント、そして通訳ガイドだった。 

ただ、ご存知の方も多いと思うが、茨城県は魅力のある都道府県ランキングで連続最下位。正直、このFAMトリップを実施しフィードバックを頂くまで、茨城コンテンツが、富裕層ゲストにもご満足いただける内容かは分からなかった。 

結果から申し上げると、今回の初FAMトリップは大成功に終わった。 

ご参加くださった皆さまの中に、オランダ人寿司シェフのご友人も含まれており、必然的に、FAMトリップは本番同様、英語でのガイドとなった。 

ご友人は、今回の日本滞在で最も素晴らしかった土地名として「古河」を何度も何度も連呼し覚えて帰ってくださったそうだ。 

では、このFAMトリップを大成功に導いた要因は何であったか? 

その最もたるは、いばらきの強みを活かした魅力的な滞在観光コンテンツの素晴らしさ、もさることながら、コンテンツとコンテンツを結び、海外VIP対応にも精通した通訳ガイドが、ホスピタリティと共にお客様をおもてなしし、持続的に同等の質のツアーを安心してご提供できる体制を有しているか、であった。 

おかげさまで、茨城県古河市のツアーは、今後、都内ファイブスターホテルの非公開プログラムとしてノミネートされるオファーを頂戴した。まさに快挙である。

各ホテルのチーフコンシェルジュの皆さまは口々に、こう仰ってくださった。

「増田さんのような方が、全国にいらっしゃったら良いのに・・・」

その真意は、これから、ゆっくりと「海外VIPの取り扱い説明書」でご案内していきたい。

海外VIPガイドという仕事は、24時間体制の究極のサービス業だ。ホスピタリティーを尊び、お客様ファーストでおもてなしをするツアー運営と語学のプロである。 

ただ、実際の仕事内容を知る者は少ない。理由は、海外VIPを担当するガイドは一部に偏る傾向があるからだ。まして、富裕層ツアー造成経験を持つ通訳案内士の現場の声は、稀であるし貴重なコンテンツ開発材料となり得る。 

海外VIPゲストについて、ホテル滞在中のコンシェルジュの皆さまのように、ツアー中のゲストの嗜好をよく知る海外VIP通訳案内士としての経験が、国や県、市町村、DMO等の観光コンテンツ造成のお役に立ち、また、通訳ガイドの皆さまやインバウンド業界に興味のある学生の皆さま、更には、PR、広告、旅行会社の皆さまのお役に立つことができれば大変嬉しく思う。 





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