天使との、ヤクソク
ある、夏の朝
どこからともなく
心地よいメロディと歌がきこえて
僕はハッと目が覚めた。
あわてて、その音がする方へ
駆けていくと
そこには、てんしが、いた。
じっとその姿を見つめて
おどろきながらも
近くにあった椅子に腰をかけて
その歌声と彼のもつ楽器の放つ音色に
耳を••
いやカラダすべてをよりかからせた。
胸の奥からなにか、
わきたってくるような。
よろこびが全身を心地よく包んで
ゆっくり、ゆっくりと
パタパタと
僕のひとつひとつの細胞が
うごきはじめた。
そうして気がついたら
すべての細胞が
うまれかわったような••
さっきまでは
気がつかなかったけれど
実は、僕の細胞たちは元気がなかったんだ。
って分かるくらいに、今までとまったくちがう
感覚が、そこにはあった。
彼の歌はまだ、続いていて
僕はこのわきたってくる感覚を描きたい。
と思った。
いそいで
僕がゆめを描いている
真っ白な紙とクレヨンをもってきて
カラダからわきあがるまんまに
感じるまんまに、描いてみた。
歌がおわると
僕の目の前にあった
真っ白だったはずの紙が
カラフルになっていて
キミドリ色と空色のそれは地球のようで
そこから
よろこびいっぱい溢れている。
そんな風に、僕には見えた。
「はじめまして」
そうてんしは言って
そこから気がついたら
いちねんかん、ほぼまいにちのように
一緒にいて、たくさんのことを、分かち合った。
一緒にごはんをたべて
彼の歌をきき
(それは本当に、しあわせなしゅんかんだった)
僕がぼくになるために
いろんなことを乗り越える姿を、
涙しながら向かっていく姿を
いつも側で、見守ってくれていた。
そして、たくさんたくさん、笑った。
そして、ようく描いた。
みんながじぶんらしく生きられる
この地球を、つくるために。
なにができるかな?って
そこためにじぶんたちの
ココロのことをようく、みたり
おはなしをつくろうか?
がっこうをつくりたい。
みんなでおいしいごはんをたべよう。
ひとりひとりが主役のすてーじがあったらいいね。
ひとりひとりのイシキがかわるだけだよね。
そのためには…
そんなコトをはなしては
まえに進み
きらきら輝く未来を世界を
一緒につくることにわくわくしていた。
僕は。
ある日
てんしがいった。
ーぼくらは、もう一緒にいないほうがいいんじゃないかと思う。
彼からそんなことをいわれて、
ドキリ。とした
だって、実は僕もうすうす
そんなコトを考えていたからだ。
彼といるととってもたのしくって
わくわくして、なんでもできる気がして
そうして、一緒にいれることそのものが嬉しくって。
だけど
そのよろこびに浸りすぎて
一緒に描いたことを
ほんとうに歩けているのか。
不安なきもちも、あった
彼と一緒にいることが
彼から認められることが
僕の原動力になってしまっているんじゃないか。って
それと
彼と一緒だからこそ
チカラが湧いてくる、できる!
と思えることが、
引きだされる『僕』がいるけれど
うまくいえないけれど
僕じしん。を
いつの間にかおいてけぼりにしていないか?
そんなことを感じていた。
でも、一緒にいたいから
知らんぷりしてしまっていた。
きっと、それは彼も気がついていた。
イヤだった。ほんとうに、イヤだった。
だって、彼と過ごした日々は
ほんとうに、たのしくてこんなに
誰かのことをこころからすきだ。とおもえたのは
はじめてだったから。
そして、僕は気がついていた。
彼がときおり、遠くをみて
誰かのことを想って入ることを。
ほんとうは、早く
その子のところへ、行きたいのかもしれない。
ーぼくはさ、みんなが
じぶんらしくいて、
一緒に生きる世界がみたいんだよ。
てんしは、いった
ー僕だって、そうさ!
今まで散々はなしてきたじゃないか!
ーでも、今の君はどう?
君が君らしく100%生きてるっていえる?
ーそれは・・・。
ーまずは、ぼくらが、やらなくちゃいけないよね。
みんなが、そう生きるのなら
みんな。の中のひとり。である、ぼくらも。
ーうん、しってる…。
そんなの、しってるよ!
でも、一緒にいたいよ。
今までみたいに僕らしさをとり戻すのを
側で見守っていてよ!
ーぼくだって、さみしいよ。
でも、今はとにかく前に進まなくちゃ
いけないんだ。
そんなコトをはなしながら
さみしくてさみしくてさみしくて
涙はつきつぎ溢れて
その日はてんしと、手を繋ぎながら
眠りにつきました。
目が覚めると彼の姿は
どこにもありませんでした。
ーずっと…ずっと一緒にいようか。
っていったじゃん。
てんしがいなくなって
僕はなんにもできなくなってしまった
なんの、やる気もなくなってしまった
ひたすら、コンコンこんこん・・
眠り続けた。
前に進まなくちゃあいけないのは分かる。
じぶんらしく生きなくちゃいけないのも、分かる。
でも、今は…もう、消えたい。。
彼のいない世界に目が覚めると
そんな想いばかり溢れて泣いてばかりでした。
きょうも、目が覚めると
「消えたい」
そんな想いが湧きあがってきた
ああ、きのうの夜は
じぶんらしさを発揮するような
計画をすこし、立てられて
やっと進める気がしたのに
やっぱり、ダメかあ。
はあ。とタメ息をついて
トイレへ起き上がります。
あれ?あれ?あれれ?
ふと、この「消えたい」という気持ちは
どこからやってきてるんだろう?
と気になりました。
・・・。
よし、と僕は
「消えたい」という気持ちのなかに
ズズズっとはいてみることにしました
そして
ぽっかりと穴があいたような
「消えたい」という気持ちに、僕はきいてみます
どうして、消えたいの?
ーだって、大好きだったてんしがいなくなっちゃったから。
そっかあ。
ーしかも、どんなキモチでいなくなっちゃったのか
わからなくて、じぶんのココロをどこに置いたら
いいのか、わからないんだよね。
どういうこと?
ーたとえばさ、
ぼくのこと好きだけどいなくなっちゃったのか。
きらいになったから、いなくなっちゃったのか。
じぶんらしく生きたらまた、戻ってきて一緒にいれるのか。
もう、二度と会えなくてえいえんに、さよなら。なのか。
なるほど、ね。
ーそしてさ、
きっと僕の前からは姿は消してしまったけれど
きっと彼は僕のことなんか気にもせず
きっと元気でやってるんだ。
きっと、ずっと会いにいきたかった子のところへ、
いっている。
僕なんか、いてもいなくても、どっちでもよくて。
僕のことなんか、どうでも、いいんだ。
…だから、もう、消えたいよ。
ふうん。
きいていたら、なんだか
ぜんぶ相手まかせ。だね
てんしが君…僕のことをひつようとしてくれていたら
元気に生きられる!し、
彼が僕のことおもってたらがんばろう。とか
嫌われてたら、もう生きていられない。とか
ーう、うん。そりゃあ、そうでしょ。
好きなんだもん。
でも、なんかおかしくない?
てんしの彼の気持ちはきもちであるけれど
その前に君の…僕のきもちは?
ーえ、ぼく?ぼくのきもち…?
ぼくは、えと、ぼくは
ぼくは、彼のことが大好き。
そう言い終える前に涙が溢れてきました
僕は続けます
それとさ、おかしくない?
というか、じぶんがそうされてたらどんなキモチ?
君がいないから僕は生きていけないんだ〜。って
毎日メソメソメソメソ。
大好きな人がさ、そんな風にしてたら、うれしい?
しかもさ〜じぶんらしく生きる世界をつくろうね。
って約束したんでしょ。
ーそ、それをうれしい。とおもってしまう
僕はおかしいのかな?
じぶんがいなくなったことで、
僕のことやっぱり大切だったんだ!とか
好きだったんだ!ひつようだったんだ。って
思ってほしい
僕はなんだか、疲れてきた
それってさ、ほんとうに相手のことが
好きだっていえる?
じぶんのことしか考えていないんじゃない?
相手にじぶんの存在を認めてもらいたいだけ
なんじゃあないの?
ー「消えたい」僕は
なにもいえなくなってしまった
たしかに、僕は彼にじぶんをひつようと
されなくなったら
もうこの世界から消えたくなって
生きているイミがわからなくなって…。
そう、
僕はもう、消えたいんだ!!
彼からひつようされないなら
彼がいない世界なら
もう消えてしまいたい
きえてしまいたいきえてしまいたい
僕のなかで
「消えたい」僕が叫んでいる
なんども何度もなんども。
きえたいきえたいきえたいきえたい…!
けしてけしてけしてけして
お願いだから、消してくれ!
え?
なにを、消してほしいんだろう?
騒がしい声が響きわたるなか、
僕はじっと、見つめてみた。
けしてけしてけしてけしてけして…
けしてほしい!!
そう、じぶんの願いが
僕の中におおきく響いたとき
僕は、わかった。
ああ、僕は
誰かにここにいていいよ。って
あなたがひつようだよ。って
いわれないと、生きられない
ぼくじしん。を消したかったんだ。
僕が、ぼくの意思で
じぶんはここにいていいんだって。
生きてるだけでいいんだ。って
君はすばらしいんだよ。って
じぶんじしんにいってあげられる
僕。になりたかったんだ。
気がつくと、僕は
ぼくに、声をかけていた
ここにいていいよ。
そのまんまのあなたで、ここにいていいよ。
わたしはあなたが、好きだよ。
一緒にいてくれて、ありがとう。
一緒に、生きていこうね。
そう、僕に伝えおえると
お腹がひっくり返るように、僕は泣きだした。
いままでの、すべてがひっくり返るように
ひとしきり泣き終えて
一息ついた
なにか、が変わった気もするし
なにも、変わらないような、気もする
しばらく過ごしていると
お腹がふくらんだり、へっこんだり…。
呼吸が早くなってきて
お腹はぐるぐるカラダがきんちょうしてきた
ーどうなっちゃうんだろう?
そんなキモチが湧いてきた
ふと、机の上にあった
カードが目にはいった
あ。
それは彼がいなくなる直前に
僕が書いたものだった
僕が、となえた
まほうのコトバ。
ーたいせつで、大好きなこのてんしと
一緒に生きていく
そう、僕は決めたんだった。
てんしとはなんの、
ヤクソクもしていない
けれど
僕はぼくじしんと、
まほうのコトバを
通して
ヤクソクしたんだった。
そうして
しばらくして気がついたのでした
僕は天使のことが、ただただ大好きなんだ
一緒にいれてもいれなくても
彼が僕を好きでも好きじゃあなくても
そう、ただ大好きなんだ。と