Everything to say , Aloha
朝方の夢。私は条件にあてはまったといわれ、ふと玄関を見ると長身痩躯、白い肌、艶やかで丸い顔に細い切長の目の鮮やかな色とりどりの装飾品や衣服に身を包んだ女性二人組が立っていた。どうやら私を出迎えているみたいだ。この世の人たちではないと思った。
待望のロミロミの日。駅を降りてから大通りをてくてくと歩いた。目印にしていた店が入るビルで買い物をして、細い通りを進むとわりとすぐに目的地にたどり着けた。そこはビルとビルとの間の細い路地にあった。玄関の戸は開いていて、声をかけてくれたのは何度も写真でお見かけして何十回とPodcastでその声をお聞きした、その人だった。
ざっとお話をしたあとにアクセサリーをとって、お茶を少しいただいて奥の部屋に通された。
着衣でのマッサージのあとに、全身のオイルマッサージ。ココナッツの香りのするオイルは温かった。
鳥のさえずりや水の音が響く中、たくさんの雑念が飛び交う。半分眠っているけれど半分起きている状態。眠りに落ちる直前に見る映像のように、私から分離したもう一人の誰かの息の根を止めようと必死になるシーンが流れてくる。高所から落とそうと思ったけれど完全に息の根を絶ちたくて浄化の意を込めて火を放った。
「Do not feel」と誰かが繰り返し訴える。私は「Do not think」と声を上げる。
その後一面青々と植物が茂る土地の映像が見えた。
着替え終わって、マッサージをしていて気になった体の箇所のフィードバックをいただく。
呼吸が浅いことは会ってすぐに指摘されたけれど、生殖器のチェックと中医学でいうところの腎をケアすることとして冷やさないこと、そのために甘いものは控えることなどアドバイスをいただく。
腹式呼吸ができるようにトレーニングもすすめられ、とにかく丹田を意識するように言われた。
支払いを済ませて、建物の敷居を跨いで外へ出た。言われるがままに、路地の向こうの外の通りを見た。施術を受けた人たちの感想の通り、本当にそこには違う世界が広がっていた。それは違う次元に転移してしまったといったことではなく、おそらくあくまで私の中の何かが変化し、見え方が変わったのだ。「New world ですよ」といわれてはじめて憑き物が落ちたことそのことを理解できた。ばらばらの心と体と魂のバランスを整えてもらって、エネルギーを注ぎ込んでもらったあとの眼で見る世界はすべてが柔らかく真新しかった。
不思議なことに数分前に伝えてもらったアドバイスやここにたどり着くまでの流れや今自分が見える景色すべてがひとつの流れとして統合した瞬間、涙が出てきた。助けてもらったんだ、救い出してもらったんだ、守られているんだ、私は。
本当にありがとう、と心の底から感謝が止まない。
「また会いましょう」と言ってくださった。人は正悪の真ん中で常に揺れ動く存在だけれど、彼女はその位置にはいない人だと思った。神聖な方々や場所と常に繋がっている存在。そんな彼女に出会えた人は本当に幸運であり、まさか私がその一人になれるなんて、実は今も夢のようで、もう少し実感するには時間がかかりそうだ。
婦人科は主治医がいないので近所に新しく開院したクリニックに行くことにして、腹式呼吸を会得するために中国武術を習おうとレッスンの問合せをした。
「難しそう」と私が呟くと「何も難しいことなんてないですよ」と返ってきた。
そのことを思い返して、「難しそう」はひとつの自分を縛る呪文だったのだと気付く。
確かに難しいこともある。私にできないこともある。けれど、それは全てではないし、まずやってみないと分からない。やってみたら案外簡単だったことはたくさんある。
この世界にはまだ宝物が眠っている。まずは一面青々とした緑の広がる、あの時私が見た場所を目指して、進んでゆくことにしよう。
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