デザイナー/作家のストック、あるいは不良在庫について
モノ作りを長年やっていると、ボツ案と言うのが溜まってくる。
それが上手く次に回ってくれるストックとなれば良いのだけれど
なかなか思う様にはいかないのが、世の常なのだ。
① デザイナーとしての仕事の場合
例えば、一つの案件に対して複数案を提案して欲しいと言うオーダーが来る。
提案側としては、色々と検討した結果の案で決めて欲しい。
それで問題があれば、修正して完成形にしたいのだが
客は、複数の案の中から決めたいと言うのだ。
まあ、それも解らない訳ではないので応じてしまう。
結構、不採用のモノが溜まっていく。
パソコン以前は、ラフ案の提案だったのが
今はデータ的に、ほぼ完成形の提案となってしまう。
これが結構、時間・体力を消耗するのだ。
まあ最終的には収束するのだけれど、再提案も多いのが現実。
そうやって、ボツ案山は高さを増していくのだ。
② デザイナーとして創作活動の場合
毎年のポスター展に参加するわけだが
基本的にデザインする事が好きなので、完成形のモノが多数出来る。
出展する2点に対して、4点制作する事が多いけれど
2パターン×4点ぐらい作る事もある。
これは楽しみでやっているので、別に苦にもならないし
データとしてあるので、何かの時のストック案として利用する事もある。
まあ、これで助かった時もあるので有用ではある。
③ 作家的活動の場合
習作という事で、世の中に出ていかないモノもあるけれど
手を動かしたモノは、ほぼ完成形となる。
それを個展やグループ展なりに展示して
たまたま売れると手元から無くなるのだが
だいたいは残って、次に展示される機会が無ければ
家の片隅に積まれて、ホコリを被っていくこととなる。
ストックと言えば聞こえは良いが、まあ単なる不良在庫なのだ。
ほんの一瞬、観客に目にしてもらう為に作られたモノが
どんどん溜まっていく。
大型のインスタレーション場合は、置く場所も無いので
解体して、次の作品の為の材料と化す。
④ 仕事としての制作活動の場合
作家として、世間から余り認めてもらっている訳では無いので
仕事量としてはそう多くはない。
アートというより、デザイン的なモノがほとんどなので
アイデアスケッチによる提案よりも
完成予想図=製作図というデザインの形で提案するのがほとんど。
これも、何案か提案する事を求められる。
その中で決まると良いのだけれど
時に条件が変わって、再提案となるとかなりの負荷がかかるし
その時点で、提示された金額のほとんどがデザインの時間で消費される。
提案した案は貯まるが、その場に合わせたモノなので再利用は限られてくる。
まあ、著名な作家ならそんな事も無いのかなと
ため息を吐きつつ、思ってみたりする。