DevSecOpsにおけるシフトレフトの考えと自動セキュリティツールについて
最近仕事でDevSecOpsの話を聞いたので、いろいろと調べてまとめてみました。
DevOpsは昔からよく言われていましたが、セキュリティが置き去りになっていたので、セキュリティも組み込もうということで、2020年ぐらいからDevSecOpsという用語が増えてきたようです。
簡単に言ってしまうとCICDにセキュリティチェックも組み込んで開発中から脆弱性を是正していこうという感じです。
DevSecOpsは、開発、セキュリティ、運用を組み合わせて、ソフトウェア開発全体にセキュリティを組み込むアプローチです。その中でも、シフトレフトと自動セキュリティツールの活用は、特に重要なプラクティスとして注目されています。
1. シフトレフトの重要性
シフトレフトとは、ソフトウェア開発プロセスにおいて、セキュリティテストや対策を早い段階から取り入れることを指します。従来、セキュリティはリリース直前に考慮されることが多く、開発後半で見つかった問題の修正には多くのコストがかかりました。DevSecOpsのシフトレフトの考え方により、セキュリティを開発の初期段階に統合することで、以下のようなメリットが得られます。
コスト削減: 問題を早期に発見して修正することで、後からの修正費用を抑えられます。
迅速な開発サイクル: 初期段階で問題を発見することで、後工程の遅延を減らし、開発スピードを維持できます。
セキュリティ意識の向上: 開発者がセキュリティに責任を持つことで、コードの品質向上につながります。
2. DevSecOpsのプラクティスとしての自動セキュリティツールの活用
シフトレフトを実現するためには、開発サイクルの中で自動セキュリティツールの導入が重要です。これらのツールをCI/CDパイプラインに組み込むことで、ソースコードの変更やビルドごとに自動でセキュリティチェックを行い、脆弱性を早期に発見します。
自動セキュリティツールの活用には、次のようなメリットがあります。
セキュリティテストの効率化: 手動のセキュリティテストに比べ、迅速かつ一貫したセキュリティチェックが可能です。
継続的なセキュリティ確保: 開発中のあらゆる段階でセキュリティテストを実施することで、継続的なセキュリティを実現できます。
これにより、開発全体を通じてセキュリティリスクを減らし、リリース後のトラブルを未然に防止できます。
3. 主要なセキュリティテスト手法とツール
DevSecOpsにおける主要なセキュリティテスト手法には、SAST、DAST、IASTがあります。また、オープンソースや依存関係を管理するためのSCAや、近年注目されているSBOM(ソフトウェア部品表)も重要です。
SAST(静的アプリケーションセキュリティテスト)
概要: ソースコードやバイナリコードを静的に解析し、脆弱性を検出するテスト手法。開発の初期段階で使用でき、シフトレフトを実践するうえで重要です。
メリット: 幅広くコードの脆弱性をチェック可能で、開発の初期段階から使用できる。
デメリット: 誤検知が多く、開発者にとって不要な警告が増えることがある。
ツール: SonarQube、Checkmarx、Veracode
DAST(動的アプリケーションセキュリティテスト)
概要: 実行中のアプリケーションに対して外部から攻撃をシミュレートし、脆弱性を検出する手法。特にWebアプリケーションのセキュリティに有効です。
メリット: 実行中のアプリケーションを対象にするため、実際の攻撃シナリオに基づいて脆弱性を検出できる。
デメリット: 開発の終盤で実施されるため、問題を早めに検出できないことがあり、修正コストが高くなる可能性がある。
ツール: OWASP ZAP、Burp Suite、Acunetix
IAST(対話型アプリケーションセキュリティテスト)
概要: アプリケーションの実行中に内部から脆弱性を検出する手法。SASTとDASTを補完する役割を持ち、リアルタイムでのテストが可能です。
メリット: アプリケーションの実行環境でのテストにより、内部と外部の両方から脆弱性を検出できる。
デメリット: 導入と設定が複雑で、リソースを多く消費することがある。
ツール: Contrast Security、Seeker by Synopsys
SCA(ソフトウェア構成分析)とSBOM(ソフトウェア部品表)
SCA: ソフトウェアに含まれるオープンソースコンポーネントや依存関係を分析し、脆弱性やライセンスリスクを検出します。
ツール: Snyk、WhiteSource、Black Duck
SBOM: ソフトウェアに含まれるすべてのコンポーネントと依存関係をリスト化し、セキュリティやコンプライアンスの透明性を確保します。最近では、特に重要なシステムにおいてSBOMの国への提出が求められる流れが強まっており、サプライチェーン全体の透明性とセキュリティ向上が目的です。
4. 全てのテスト手法を採用することの難しさ
多くの企業では、SASTやDASTを中心にセキュリティテストを実施していますが、すべての手法を一度に導入することはコストや運用の複雑さ、リソースの制約などの理由から難しい場合が多いです。特に、SASTはシフトレフト戦略の実践に適しており、最も広く採用されています。DASTは実行中のアプリケーションを対象とするため、Webアプリケーションのセキュリティ確保において有効です。IASTは導入の難易度が高いため、採用は限定的です。
まとめ
DevSecOpsにおけるシフトレフトと自動セキュリティツールの活用は、セキュリティを開発プロセスの早期段階に組み込み、継続的にリスクを管理するために不可欠です。SAST、DAST、IAST、SCA、SBOMといったツールや手法は、それぞれ異なる段階でのセキュリティを担う役割があります。組織は、これらの手法を効果的に組み合わせて、自社の開発環境に最適なセキュリティ対策を講じることが求められます。
特に、SBOMの重要性は増しており、今後は規制の一環としてその提出が求められることが多くなると予想されます。DevSecOpsを実践する中で、適切なツールとプロセスを導入することで、セキュリティリスクを未然に防ぎ、信頼性の高いソフトウェア開発を実現することが重要です。