これぞカオス...人工知能学会初参加レポート
note AI Creativeでエンジニアをしております、武藤です。
今回はnoteが協賛している2024年度人工知能学会全国大会(第38回)に初参加してきたので、感想含めてレポートしていきたいと思います。
感想を簡単にまとめると、多種多様なドメインのセッションに加えて、機械学習の初心者から玄人まで幅広い参加者が集まり、カオスでした...
人工知能学会とは
1年に一度国内のAI研究者が集う、国内最大規模のイベントです。
情報収集、発信、ネットワーク形成をしたり、企業の採用活動、学生の就職活動にも寄与しています。
会場の雰囲気とセッション内容
私は5/29(水)〜5/30(木)だけの参加でしたが、アクトシティ浜松という大規模な会場に加えて、100社ほどの企業展示などがあって、思った以上に参加者が多くてびっくりしました。
それと会場やセッション内容によって、参加者の種類が結構変わるなぁという印象でした。
例えば、A会場(大ホール)での企画セッションとかは、研究者以外の参加者も比較的聞きやすいような内容で、研究者以外の参加者が多くいたのかなと思います。
また、D会場で行われていた一般セッションは、学生の研究発表から企業のガチ感のある研究発表まで実に多種多様でした。学生とか企業の研究開発系の人が多い印象でした。
私自身はD会場にいることが多かったのですが、パイプ椅子がいっぱいあるせいか、なんかプロレスしそうな独特の雰囲気を感じました。
(セッション内容的にも古参の機械学習研究者が多そうだったので、プロレスしそうな会場の雰囲気とマッチしているのかもしれない)
という感じで、機械学習にちょっと興味ある方から機械学習の古株の方まで楽しめるようなイベントだと思いました。
印象に残ったセッション
非常に面白そうなセッションが多くて時間の関係で全部見れないセッションもありましたが、私の印象に残ったセッションを書こうと思います。
[2J1-KS-19] 金融分野における大規模言語モデルの活用
2024年5月29日(水) 09:00 〜 10:40 J会場 (43会議室)
私は金融ドメインで働いてる人ではないですが「LLMを金融ドメインに適用するためにどうするべきかという実験研究は、金融以外のドメインであっても使える」と思えました。
とくに印象深かったのは、人間に模したLLM同士を協調させたり、競争させたりすることで顧客と営業との会話などにおいて知見を獲得するというものです。
この発表を聞いて、攻殻機動隊のロジコマやんと個人的に思いました。
今は人間とLLMの会話から目的を達成するような利用しか考えられてないですが、ロジコマみたいなAIが集まって、お互いが対話していくことで24時間365日PDCAを回し始めたら、もう人間の知性なんてすぐ超えてしまうだろうなというお気持ちになりました。
そして、このようなLLM同士のインタラクションによって、社会科学や医療、心理学の再現性実験など幅広い展開ができるんだろうなという期待もしてます。
[2B4-TS-2] 機械学習と科学モデル
2024年5月29日(水) 13:30 〜 15:10 B会場 (中ホール)
(正直難しすぎていまだに理解できてない部分はありますが、個人的な感想だけを書きます。)
科学モデルは数学的に計算して導出するモデルだが、どうしても計算しきれない問題がある。
しかし、ニューラルネットなどの機械学習モデルは任意の関数を近似できるので、科学モデルで計算しきれない問題については機械学習モデルで置き換えたりハイブリッドにすることで問題が解けるのではないか、ということだと理解しました。
このアプローチは私の頭では理解しきれない部分もあるのですが、すごい面白い方向性だと思ったので勉強したいなぁという気持ちにさせられるセッションでした。
[3A4-PS-3] AIは『鉄腕アトム』の夢をみるか?~生成AIによるコンテンツ制作の可能性と問題
2024年5月30日(木) 14:00 〜 15:10 A会場 (大ホール)
note AI Creativeで働いている中で、漫画をAIに読ませて理解させるようなタスクがあるのですが、「AIで漫画を作ったり理解させるのは相当難しい」という気持ちを持っておりました。
このセッションで話されている内容はまさに私の気持ちと近くて、うなずきながら聴講していました。AIに手塚治虫級の天才的な漫画を描かせるのは現状無理だけど、AIにサポートしてもらいながら創作活動を加速させていくという所は同感しかなかったです。
なんというか、ブラックジャック読みたくなりました。
[3B5-TS-1] 大規模言語モデルの開発
2024年5月30日(木) 15:30 〜 17:10 B会場 (中ホール)
一番気になっていたセッション。
note AI Creativeでも将来的に大規模言語モデルを作るかも...みたいな可能性はあるので、実際の知見を得たいなぁと思って参加しました。
結論から言うと、発表の章立て、知見の深さ、もう全て最高と思える内容でした。
「事前学習は1エポック」
「モデル模倣はハルシネーションを助長する」
「RLHFではなくDPOでアライメントする」
「MT-benchでの評価にはバイアスがある」
などをわかりやすく論理的に書いていて驚くばかりでした。
大規模言語モデルを作る際に指針にできそうな話ばかりだったので、このセッションを聞いて岡崎先生は私の推しになりました。
ちなみに岡崎 直観先生の本を持っているのですが、実は積読にしてたので、新幹線で読んでいました。やはり良書でした。興味ある方、ぜひぜひ。
そのほか感想
イベントの全体を通じて思った感想を下記に書きます。
参加者のカオス感
平和的な技術イベントのセッションならば、ツッコミポイントが多そうな発表内容でも平和的な質問がされると思います。
しかし、私が参加したのはそんなセッションばかりではなかったようです。
論理的な主張が弱そうな部分には、どくがのナイフのような質問が飛んでくることもあります。
「そんな全否定みたいな質問やめて!とっくに発表者のライフはゼロよ!」
という気持ちになることもありました。
人工知能学会がいろんなタイプの人を惹きつけるのは、こういう所なんだろうなと思いました。(良い意味です)
大海を知れる
今話題のLLMの話題や、言語処理、画像、音声、ベイズ、因果推論、企業事例など本当に多種多様なニーズに対応しているイベントだと思いました。
自分の興味のある分野の最新研究やまとめ、社会実装などを聞くことで、体系的に理解できるようになっていました。
ただ、なんとなく面白そうと思ってスケジュールを入れたセッションが、事前知識が必要なタイプのセッションだったりすると話についていくのがキツくなります。
しかし、日頃から仕事やタスクばかりやっている社会人には見識を広げてくれるようなイベントだなぁと思いました。
(自分は因果推論とベイズあたりが知識的に弱いと気づけました。ありがとうございます。)
昼食難民
Xでのツイート(ハッシュタグ:#JSAI2024)をぜひ見てほしいのですが、大体「うなぎ」か「さわやか」の画像が多い気がします。しかしながら、うなぎにもさわやかにも入れない昼食難民が散見されました。
そして、私は食欲が大学生時代とほぼ変わってないおじさんなので、「絶対さわやかとうなぎは食べる」と決意していました。
無事その願いは達成できましたが、綿密にスケジュールを組んだり予約したりするといったことは重要だったと思います。
セッションの時間も割と空いてるように感じますが、昼食で予想以上に並んでしまってギリギリになってしまうこともありました。
次回に向けて
色々カオスな感じでしたが、知的好奇心が高まって自分の知らない世界を知れるような楽しいイベントでした。
初参加なので「よくわからない数式とか抽象的内容すぎてわからない」みたいにならないだろうか心配してました。
しかし、ちゃんとスケジュールを考えて、自分の興味のあるセッションを選んでいけば楽しめるイベントだと思います。
確かに前提知識を求められるようなセッションを選ぶと話がわからなくなるのですが、「わからないけど面白そう」という気持ちを起点としてイベントの後で勉強を頑張るみたいな流れでも良いんじゃないかと思います。
note AI Creativeとして今後人工知能学会とどのように関わっていくかわかりませんが、今回のイベント参加を通じて「登壇したらまた違う面白さに気づけるんだろうな」という気持ちにさせてくれるイベントでした。
人工知能学会を盛り上げたり運営していただいてる皆様、ありがとうございました!
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