刈谷中・合格記(見切り発車)

 みなさんこんにちは、家庭教師のせむです。

 僕は基本的には大学受験を専門としているのですが、今年は中学受験1名・高校受験1名も指導しています。

 特に中学受験は、いま愛知県で注目の公立中高一貫・刈谷高校附属中学校を目指す受験生です。
 この受験はまだ情報が少なく、保護者の皆さんも大変だと思います。私自身も情報が少ない中で手探りで指導してきました。そこで、これまでの指導を総括する意味も込めて、今回の記事を投稿することにしました。

 現時点での成績は、愛知全県模試(公立チャレンジ模試?みたいな名前です)の刈谷中志望者内で60位~10位くらいをうろついている感じです。
 模試を受けてない伏兵の猛者がどのくらいいるかにもよりますが、現状ではおおむね受かるかな、といったところです。少なくとも1次試験の合格者定員(160名前後)にはしっかり入っています。

 本当は合否を待って記事を上げたかったのですが、公立中高受験は遅くとも小5の冬から動き出したいため、今回は見切り発車の投稿としました。
 合計10000文字近い分量になってしまいましたが、目次も用意してありますので、気になる箇所だけでもどうぞ。


◎指導内容

◆使用教材

 エデュケーショナルネットワークの『公中受検新演習』シリーズを小5上~小6下まで使用しています。(上記リンク参照)
 この教材は塾専用教材ですが、買えるサイトはいくつかあるようです。※※購入の際は自己責任でお願いします

 テキスト内容は、はじめはよくある普通の問題集(記述多め)で、巻が進むにつれて徐々に適性検査っぽい問題が増えるという形です。
 ひとつ注意すべきこととして、進度によっては学校でまだ習っていない内容が含まれることがあります。例えば小6上では歴史の内容を一通りやっていきますが、進度の都合上夏休み中には終わらせたいので、学校でまだ習ってない分については、授業で個別に説明したり、教科書を用いる等をしていました。重要な部分については中学校の教科書(姉が使用していた)で詳しく説明することもあります。

 『公中受検』シリーズについては、この記事の執筆時点(11月中旬)で小6下が8割方終了しています。
 この後は類似シリーズの『実戦編』に進むつもりです。(↓リンク参照)
 実戦編を仕上げに選んだ理由は、実際の入試では理系・文系の括りなく問題が出題されるため、それに慣れる必要があると考えたからです。
 小6下も科目の区別こそあれだいぶ本番に近い雰囲気を感じますので、時間のない受験生は参考書学習はそこまでで終了としても良いかもしれません。僕の場合は、子供がガッツがあるのでやらせているという側面が強いです。

◆採用理由

 愛知県の出題形式=全問記号選択式は全国的には珍しいようで、専用のテキストがなかったため、一般的な適性検査対策をしていくことになります。
 ただまあ、どこかの質疑応答で「記号選択問題でも受験生の思考力は計れる」という旨の教育委員会の回答を見た気がしますし、実際思考力が要求されているのは間違いありませんので、たとえ記号選択に特化したテキストが現れたとしても、直前期以外は記述で対策したほうが良いと思います。

 テキスト選定では、上記のように記述問題が多いという大前提のもとで、分量が一番多そうなテキストを選びました。
 必要な実力をつけるためという目的もありますが、本人がコツコツと頑張れるタイプということも採用理由のひとつです。

 そもそも適性検査の対策テキストはそう多くなく、それらの大半は本番に近い形式の問題ばかりで、基本的な知識・思考力の獲得ができるか?という観点ではイマイチなテキストばかりです。
 かといって一般的な中受向け(私立・国立)のテキストとなると、小学校範囲を逸脱しているような問題が多数収録されており、また算数の特殊算など「理屈を無視して計算式だけ出す」ような問題も多く、適性検査とは真逆の思想として、入試対策としてはノイズでした。

 その中では、『公中受検』シリーズは記述問題が多く、かつ知識レベルも小学校教科書レベルに押さえられていると感じました。
 必要な知識・処理能力・思考能力さえあれば適性検査形式の対策は小6の秋からでも十分に対策できると判断しそれまでは徹底的に基礎(基礎といっても、中学受験水準の基礎ですので、一般的な小学生と比べたらハイレベルな内容です)を固めるのが先決と判断しました。

 また、詳しくは指導方法の項にて述べますが、僕がサンプル問題を見たときの第一印象として、適性検査で求められる学力が大学受験と近いと感じたため、大学入試対策に近い雰囲気のテキストとは?という観点で選んだのもあります。
 エデュケーショナルネットワークがZ会の系列ですので、そのあたりが教材の雰囲気に出ている??これはさすがに気の所為でしょうがね。

◆授業

 上でも述べていますが、適性検査は大学受験の問題に近いです。特に共通テストや難関大の入試など、思考力をゴリゴリに問うてくる問題と同様の雰囲気です。
 適性検査というのはそういうものなので、当然と言えば当然ですが。

 よって授業では、「考え方・知識・大雑把な答えなどを口頭で説明できること」「口頭で説明したことを、端的に書き言葉に表せること」の2点を最重要視しました。
 愛知県の適性検査は全記号選択式ですが、それは解答形式の話です。問われているのはあくまでも思考力や表現力ですから、それを鍛えるためには記述問題に多く取り組むのが正道です。
 ギリギリの時期から対策を始めたならまだしも、入試まで1年以上猶予がある中で入試対策を始めるのなら、やはりここを押さえておくのが一番だろうと判断しました。

 授業では「何を考えてその答えを出したのか」ということをしっかりと詰めていきました。解けない問題についても、「どこまで分かっているのか、何がわからないか」などをきちんと言語化できるようにしていきました。
 解く上で必要なメモ・計算過程などはしっかりと残させました。考え方を記述させる問題も勿論ありますが、それ以外の問題であっても、過程は基本的にすべて残させました。
 過程の残し方にもこだわりました。これまた大学受験指導でもやることなのですが、過不足なく過程を残すことを意識させました。式変形は丁寧すぎてもダメ。文章でまとめるか表でまとめるか。など……。
 きれいな解答過程を残すことができるようになると、解くまでの手順を把握しやすくなるだけでなく、見直しも楽になります。

 これらの指導の結果としては、まずは凡ミスが減り、得点が高い方に安定したということが挙げられます。模試でも難問をバシバシ解くというよりは、易しい問題でのミスが減った上での順位です(とはいえ得点は9割前後が安定しているので、一般的な受験生にとっての難問もそれなりには解けています)
 論理立てて解けるようになったおかげで、逆に「この問題は自分では解けない」という判断力もつくようになりました。「この問題に悩む価値があるかどうか」といった難関大学の受験生でさえ難しい判断も、それなりにできるようになっています。

◆授業進度・宿題

 『公中受検新演習』シリーズですが、合計8冊で2000ページ近い分量のテキストになります。『実戦編』込みでちょうど2000ページかな?上でも述べましたが、分量はだいぶ多いです。
 とはいえ必要な分量なのでね……。これをやり切るために、小5のうちから取り組んでいくことが必要になります。

 指導開始は小5の冬休みからで、それからおおむね3ヶ月ごとに文理1冊ずつ終わらせるペースで進んでいます。毎週35ページやれば、ちょうど1年で8冊やりきれる計算です。
 我々は実戦編をやる時間を捻出するために、毎週40~45ページくらいを目安に進めてきました。でも実際は、そのペースでちょうど1年でやり切っています。お休みなどで何回か授業が潰れているためですね。

 大学受験生の姉と一緒に1対2で指導している都合上、授業は1コマ3時間となります。小学生には長い時間ですが、よく頑張れていると思います。
 一般的には週2の授業でやっていくのが良いとは思います。

 1回の授業で、テキストはだいたい12~20ページくらい進みます。
 授業でやるのは、理系テキストの難しめの問題と、確認したい事項が多い社会系の問題が中心です。授業の合間に宿題の確認なども進めています。

 宿題ではテキストから20~30ページくらいを出題しています。出題した問題によって結構差がありますが、おおむね平日に毎日1~2時間くらいやって終わる想定の分量です。宿題は文系テキストが多めとなります。

 テキスト内には作文の問題も収録されています。そちらも宿題として出題しており、土日に1時間~2時間くらいで取り組む想定です。(最近は思い通りの文章が一発で出るようになり、30分以内に終わることが多いようです)
 作文は考えたことを適切な語彙・論理で表現する訓練ですので、記号選択オンリーの愛知県の適性検査においても非常に重要だと僕は考えています。アウトプットの訓練を積むことは、面接対策にもなります。
 子供も作文の重要性は理解しているため真剣に取り組み続けており、質問も徐々に本質的&具体的になってきているのが感じられます。僕の作文指導は大学受験の小論文指導みたいな感じになっており、作文の話題自体は小6のものですが、文章構成などの要求レベルは易しめの大学入試小論文と同等です。(実際、適性検査の作文は、小論文対策の入口としては非常に優秀だと感じます!)

 テキストには確認テストも付属しています。確認テストは知識の問題が多めです。
 1課ごとに確認テストがあります。小5上~小6下まで、文理あわせて160課ほどです。両面印刷ですので、約300ページ分の問題集と同等です。解説ページの有無を考えれば、テキスト400ページ分くらいに相当しそうです。
 これらは長期休暇にまとめて出題し、過去の内容の確認としています。

◆成績推移

 指導開始時点では、「そこそこできる」といった感じでした。
 学校の教科書準拠のテストでは85点~100点くらい。

 初めて受けた小6の第1回(春休み)では志望校内順位は200位くらいだったハズですが、それ以降は問題の雰囲気を掴んだか、40位→60位→15位と来ています。得点は180点台で安定しています(200点満点)。

 十分な成績だと思います。これで落ちたらもう知らんです。
 まあ、ここで落ちたとしても、中学校でそれなりにやっていれば刈谷高校には普通に受かりそうなので、「いつ刈谷に受かるか」という違いでしかありません。
 勉強の仕方が既に高校流=大学入試風にアジャストされているため、中学校の勉強で躓くことはないでしょうし、高校に入ってからのほうが学力の伸びが顕著になりそうな予感もあります。

◎周辺情報

 皆さんが気にしてそうな情報を書いていきます。

◆どんな子?

 それなりに賢い子ではあります。
 ただし家族内(主にお母様)での評価は「それなり」で、愛知県内の国公立医学部に余裕で現役合格した兄や、現在東大文Ⅱを志望している(こちらもよっぽど受かる)姉と比べると、小5時点での勉強の出来はそこまで飛び抜けたものではないという感じ。
 実際、指導開始時点では100点のテストはほとんどなく、85~95点が多かったです。

 そもそも本を読むよりも運動する方が好きな子です。(少なくとも二人の兄姉よりは)
 現在は入試に専念するため週1&土日の大会/発表会参加もなしになっていますが、夏休みまでは週2のダンススクールを楽しみにしていました。
 性格自体は大人しめで、学校では大人しめな女子グループに所属しているそう。

 1回3時間の授業にもバテずに付いてこれているのは、体力があるということと、大学受験生の兄姉を間近で見てきて、受験に取り組む意義・そのために必要な努力について、正しく理解しているということがありそうです。

◆どんな家庭?

 ごく一般的な、西三河の家庭です。田んぼと隣接する住宅街に一軒家があります。
 お父様は例の会社の関連企業で働いており、お母様は近所のスーパーでパートをしています。

 教育にかけられる予算としては、兄の受験時では私立の医学部は絶対にムリ、姉の受験も東大以外は東京の一人暮らしダメ、といった程度です。そんな中で兄や姉の家庭教師として僕を雇う予算が捻出されているので、毎度お世話になりますとしか言えません。
 ただまあ、家庭そのものの雰囲気としては、そこまで教育熱心な家庭というわけではありません。両親の学歴についても子供たち(兄姉)のほうが遥かに上とのことですし、そもそも「本人が納得した進路になればそれで良い」というスタンスのようです。
 ただし、甘ったれたことを言っている/やっていると容赦なく詰めてくる家庭ではあります。例えば中学生になるとお小遣いが報酬制になり、定期テストの成績が一定以下だったら容赦なくお小遣いを打ち切られます。兄が文句を言っても「恥知らずねえ」と一蹴されていました。そういう感じで、親としての威厳はしっかり感じられます。

 両親の協力体制はしっかりしています。
 例えば学校の面談や授業参観などは父母が交互に行くとのことで、両親とも学校での雰囲気や先生のことなどを知っているのは、子供と学習・進路の話をする上で大事なことだなと感じます。
 受験は家族全員のイベントという意識が強く、兄の名大オープンや姉の東大文化祭(五月祭)では家族全員でお出かけをしています。

 両親ともにコミュニケーション能力は高いです。幼少期に聞いた話の量だけ子供の脳は発達するとも言われますので、この家の三兄妹が優秀なのはそういったところがあるのかもしれません。

◎気になってそうなこと

 僕自身が気になっていて/意識していて、この記事を見ている皆さんも気にしているであろうことをいくつか挙げてみます。

◆入試難易度

 初年度は本当に読めないのですが、刈谷高校に余裕をもって合格できる子なら、附属中の時点で合格できるんじゃない?、といった感じです。

 ただし、子供の傾向によって、附属中入試or高校入試のどちらが有利か差が出てくる可能性はあります。
 例えば実技科目が死ぬほど苦手だったり、気分屋で提出物や授業態度がいまいちな子は、高校入試で刈谷に挑もうとしても、内申が足りなくて厳しい勝負を強いられる可能性があります。内申点のせいで刈谷のワンランク下の高校にしか行けなくなってしまうくらいなら、中学受験の段階で刈谷を目指すというのは一つの手だと思います。

 逆に、適性検査や面接が不利に働く場合もあります。その場合も得るものが多いため、下記のように「落ちても大丈夫!」の精神で挑むのがオススメではありますが……。適性検査が不利に働くタイプは、学習モチベの低い子や、受け答えで少し時間がかかるタイプの子ですね。
 モチベが低い子については、多くを語るまでもありません。テキストは基本的に記述問題ばかりで、しかも暗記で片付く問題はそう多くありません。なので、「解こう」という意思がない限り、一生できるようにはなりません。
 また、おっとりしたタイプの子は、入試勉強自体に向いていない可能性があります。適性検査では大量の情報を素早く処理することが求められるので……。そういう子も中3にもなれば精神的に発達して、「やる時はやる」の意識でサッサと動くことができるようになりますが、小6の時点ではもしかしたら難しいかもしれません。

 来年度以降は西尾・時習館・豊田西にも附属中がオープンし、三河地区の志望者は一気にバラけます。
 来年度以降は、「高校に余裕で受かる子が附属中にも受かる」という難易度感が確実になってくると思います。学区内の子供の数は決まっていて、おおむね学力順に上の高校に入学していきますから、小6時点でトップ層にいる子が中3でもトップを維持するというのは、大体その通りのハズです。

◆落ちても大丈夫!

 落ちたら地元の公立中でいいです。
 上でも述べているように、「その高校に余裕で受かる子が附属中にも受かる」という話でしたから、附属中に合格するかどうかというのは、基本的には「いつ受かるか」の違いでしかありません。
 そこそこの素養がある子がそれなりに真面目に対策をして、入試でも良い勝負ができたものとします。そういったケースでは、その子が入試で残念な結果になってしまったとしても、その後の中学3年間をしっかりやっていければ、結局高校入試ではその高校に余裕で受かるハズです。

 中学校で落ちぶれる可能性はないのか?という疑問もあるかと思いますが、その懸念通りになる可能性は低いです。
 というのも、適性検査対策で求められる学習の質は、中学生の定期テスト対策の比にならないので……。適性検査の問題を解くことで、いわゆる「実力」と呼ばれる学力がグングンと伸びていきます。

 そこそこ勉強のできる中学生の多くは「定期テスト型/内申点先行型/実力がない」と評される学力傾向です。
 こういう子は学習方法が定期テストに最適化されすぎています。狭い範囲から細かく出題されることに対しては上手に対応できるのですが、入試のように全範囲から&思考力を問うような出題をされてしまうと、途端に手が出なくなってしまいます。
 で、この問題がけっこう根深くて、そういった学習方法でも高校入試までならどうにかなるんですが、それで高校入試を上手く乗り切ったとしても、けっきょく高校の勉強や大学入試では完全に置いていかれることになります。進学校には「滅茶苦茶頑張ってるのに成績が中の下で安定している」ような子が一定数います。これはもともとの学習に対する姿勢のズレが原因です。高校入学後も学習のやり方を変えられなかった子が、こうなってしまいます。

 逆に言えば、いちばん吸収力のある小学生のうちに、適性検査で求められているような「きちんと考えて答えを導き出す」という手法を身体に染み込ませることができれば、高校入試のみならず、大学入試やその先にも通用する力となります。
 勿論、中学校でも、適性検査対策で培った実力は大いに役立ちます。習熟度テストや模試に強い子に仕上がりますし、定期テストでも凡ミスが減り、90点↑の争いでは優位に立てることでしょう。

◆面接対策何やってる?

 基本は作文と、授業内での受け答えがそのまま対策になっています。(なっているハズ)

 一般的な入試面接の対策については、1次試験後に集中的に詰めていく予定です。これは僕のケースに特化した話になりますが、1次試験は共テの直前週にありますので、姉の方の授業をなしにして、お母さんと3人で妹の面接対策だけ集中的に進めようかなと。

 一般的な質問(今まで頑張ってきたこと、中学校で何をしたいか、将来なにをしたいか)などを軸に詰めていきます。
 本人の中ではある程度将来の夢が固まっているようですので、そこを具体的に掘り起こしていけば自然と内容が押さえていけると思っています。

 「これまでに取り組んできた探究活動」については、僕はダンスで行かせるつもりです。実際話を聞いてみると、本人なりに色々と考えて試行錯誤しているようです。これを学びにカウントしないのであれば、それこそ刈谷中の教師から教わることは何もありません。

◆入試対策したいけど、いつ/何からやれば良い?

 対策開始時期ですが、小5の夏~冬がベストです。
 最終ラインは小6の夏休みで、それを過ぎると合否の運ゲー要素が強まります(運ゲーといっても、たまたま記号が全部合ってたら受かるかもねという話で、基本的には不利です)

 合格するために必要な2要素は、「やる気」と「教材」です。やる気という燃料があるのは大前提として、それを燃やして原動力に変えていくエンジン=教材も必要ということですね。
 もとがそこそこ賢ければ、教材さえあれば独学でもギリギリ何とかなると感じたので(特に来年以降なら尚更)、「教師」については「できれば必要」ということにしておきます。

◆子供のやる気ってどうすんの

 子供をやる気にさせたかったら、まずは問題を解かせてみることです。
 中高一貫を親が受けさせてみたいと感じるということは、現時点でそれなりの学力の芽があるということです。そういう子は問題が解ける(ようになる)ことの喜びも知っています。

 僕自身がそうだったのですが、学習のモチベーションを保つうえでの一番の障害は、学校の授業のつまらなさです。学校の授業で扱う内容は基本的にすべて知っていることやすぐに理解できることでしたから、授業も真面目に聞かなくなるのですが、そうなるとその子は「授業態度が悪い」という話になります。
 これはおかしな話です。僕は未知のものに対する学習意欲が高く、それゆえに多くの知識や物の考え方を知っているというだけの話なのに、まるで僕が「学ぶ気がない」かのような扱いを受けるのです。

 ……とまあ、僕の愚痴はここまでにしておくとしても、多くの学力上位層の子供が抱える悩みはコレです。中下位層をメインターゲットとした学校の授業に飽き飽きしているのです。
 中学校に上がれば学内順位が出るようになるため、それをモチベーションに勉強することができますが……知能の伸び盛りのはずの小学生時代に全力で学習に取り組めないというのは、子供の可能性を狭めることになります。これはもはや虐待と言っても過言ではない(過言です)(いや言うほど過言でもないか?)

 そういう子のエンジンをつけたかったら、まずは問題を解かせてみることです。子供は「じっくり考える楽しみ」や「解ききったときの達成感」を味わうことで成長していきます。適性検査は特別な知識を要求しない問題ですので、そういった役割には最適です。

 「与えられた問題を解くことが好きな子」や、「何か理解したことを、誰かに説明したがる子」が一定数います。彼らは学ぶ教科は何でもよくて、純粋に問題を解いたり、そのやり方を反芻するのが好きなのです。そういう傾向が強いのが理数系の科目なので、彼らは理系に重点的に取り組むようになるのですが、本来別に何でもいいのです。
 そういう子にとって、適性検査はよく刺さる問題だと思います。楽しく問題を解けて、それが入試対策にもなるのなら最高じゃないですか?

 教材サンプルがありますので、まずはそれを親子で一緒に解いてみるのが良いでしょう。これはやる気のある子にとっても同様です。
 小5・小6ともに、上巻は知識寄りの問題、下巻は適性検査寄りの問題が多いです。
 類似シリーズの『F・S』や『実戦編』はより適性検査に寄った問題集ですので、そちらを解いてみるのも良いかも。

 "彼を知り己を知れば百戦殆からず"という言葉があります。受験はまさにそれです。
 大学入試では秋頃に多くの受験生が過去問に手を出しますが、それは問題を解くうえでの最低限の知識や能力が備わるのがその時期になるためです。適性検査はそうではありません。
 適性検査は指導要領の内容しか問われず、特別な知識は必要とされません。求められているのは初見の状況/問題に対する思考力です。

まとめ

 個人的には公立中という形で気軽に受験できるようになるということ、そしてその試験科目が適性検査という形を取っていることは、愛知県内の全体的な学力水準の底上げに大きく影響を与えるんじゃないかなと思ってます。
 6~10年後には東大・京大・国立医学部といった最難関大の合格者がじわじわと増えてるんじゃないかな。
 何しろ今後が楽しみです。

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