My Favorites * vol.4 迫真のアリア
素晴らしく心揺さぶられる歌声には、どんな楽器もかなわない、と思ってしまいます。
《トスカ》といえばマリア・カラスの存在があまりにも大きすぎます。
が、それを忘れさせるほどの迫力と凄み、緻密さを兼ね備えたトスカに出会いました。
アンナ・ネトレプコ
ロシア出身で、現在ヨーロッパでもっとも人気のあるソプラノ歌手のひとりです。
私は昨年のパリ・オペラ座公演を観たのですが、《トスカ》の中でも有名なアリア《歌に生き、愛に生き》の直後の拍手があれほどにおさまらなかったことは初めてでした。
何分くらいかかったのか…
とにかくひたすらに涙を誘う、切実かつ神経の行き渡った熱演でした。
このアリアは、虫も殺さないほどに信心深いトスカが、政治犯のために逃れてきた親友(アンジェロッティ)を逃がした罪に問われている恋人・カヴァラドッシを救うため、警視総監のスカルピアを殺してしまった場面で歌われます。
スカルピアはオペラ史上でもかなりの大悪役とされる人物で、《トスカ》を救いようのない悲劇的な作品にしているキーパーソン。
このトスカとのシーンは、ものすごくスリリングです。
メロディの美しさと、好きな指揮者である西本智実さんの影響で《トスカ》はよく聴いていましたが、ここまで熱のこもったものを観ると…
この作品に対するショックがしばらく残りました。
ネトレプコさんは2014年のソチオリンピックの開会式でも歌われていました。
あの開会式は今をときめく方々とともに、ロシアの偉人たち、文豪トルストイや画家のカンディンスキー、ディアギレフのバレエ・リュスなども盛り込まれて、芸術的なものでしたね。
ロシアの芸術性と精神性の高さは、圧倒的です🙄
さて、こちらがネトレプコさんの音源です。
ご紹介がてら、マリア・カラスのも載せておきます。
パリのオペラ座は舞台装飾や衣装がとてもスタイリッシュで、演出が現代的なものが多かったです。
《トスカ》も、最後は飛び降りず幕を下ろしていくスタイルでした。
《カルメン》も現代の車が出てきたり、《椿姫》もスマートフォンを使ったり、《蝶々夫人》もひたすらモノトーンの舞台(「禅」を意識したものだそうです)だったり…
やや斬新です。
《トスカ》は、当時あまりにも刺激的で、舞台となっているローマ、サンタンジェロ城から、トスカのように飛び降りる人を続出させてしまったという逸話があります。
感受性のとても強い方には、気をつけて観ていただきたい作品です…💦