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10クラ 第45回 音響の版画

10分間のインターネット・ラジオ・クラシック【10クラ】
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第45回 音響の版画

2022年11月11日配信

収録曲
♫クロード・ドビュッシー:グラナダの夕暮れ(『版画』より第2曲)

オープニング…サティ:ジュ・トゥ・ヴ
エンディング…ラヴェル:『ソナチネ』より 第2楽章「メヌエット」

演奏&MC:深貝理紗子(ピアニスト)


プログラムノート

 「版画の醍醐味」というのを調べてみた。なるほど版画というのは、重ねる美であり描かない美である。そう言われると、重なりによって生み出されていく響きを堪能するのがフランス音楽の醍醐味であるし、強烈な線を描くことなく旋律を生み出していく手法はまた「音楽で言うところの版画」とも言えるかもしれない。フランス音楽は、美術の技法と対比させても実に面白く呼応する。
 そのようなフランス音楽を代表する作曲家に、クロード・ドビュッシーがいる。彼の音楽は響きを絶妙に重ね合わせ、ニュアンスの宝庫を構築する。その作品のなかに、極めて詩的な作品集がある。3つの楽曲から成る『版画』である。インドの寺院を描き、ガムランやジャワの響き、日本の鐘のような音響効果を持つ第1曲「塔」、スパイシーな弾きと妖艶なニュアンスを醸し出し光の陰影を描き出す第2曲「グラナダの夕暮れ」、古くから親しまれるフランス童謡を下敷きに雨粒から雨上がりの清々しい陽光を美しく表現する第3曲「雨の庭」(2021年8月13日配信の10クラ 第17回「音楽は自然のなかに」で取り上げている)。
 この作品を絶賛したのはスペインの作曲家ファリャだった。もともとドビュッシーに大きな憧れを抱いていた人物だが、自国の音楽要素を取り入れて、憧れの作曲家がこれほど素敵な作品を書いてくれた…というのは大変な喜びだったのかもしれない。ドビュッシーが亡くなった際にファリャが作曲したオマージュ(ギター作品)には、この「グラナダの夕暮れ」の断片が登場する。
 それにしても、ドビュッシーの音響効果は想像以上に緻密で繊細な美を放っている。曖昧な、と表現されがちな浮遊感は、天才的な閃きと入念な作曲技法によって生み出されていることを忘れてはいけない。響きの重なり、その切れ際に一瞬現れる残響―そこまで見越しての作品群である。

クラシック音楽を届け、伝え続けていくことが夢です。これまで頂いたものは人道支援寄付金(ADRA、UNICEF、日本赤十字社)に充てさせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。 深貝理紗子 https://risakofukagai-official.jimdofree.com/