衛星画像で見る世界の遺跡 ー 王家の谷/エジプト ー
ESA(欧州宇宙機関)が運用している陸域観測衛星Sentinel-1とSentinel-2の観測画像を使って世界の遺跡を見てみます。衛星画像はGoogle Earth Engineから取得しています
有名どころですね。エジプトの王家の谷です。
有名なのだけど、実はどんなところにあるのか知らなかったので衛星画像で確認することにしました。下の図はGoogle Mapへのリンクです。
https://www.google.co.jp/maps/@25.7433686,32.6006078,2921m/data=!3m1!1e3?entry=ttu
まずは、王家の谷の周辺も確認してみます。下の図は上段が2023年11月11日ポッキーの日にSentinel-2観測により得られたTrueColor画像、中断が2023年11月03日にSentinel-1観測により得られた後方散乱係数(VV・VH偏波)の疑似カラー画像(VV偏波を赤色、VH偏波を緑色に割り当てています)、下段が標高データ(SRTMのDEM)です。赤い円で囲った部分に王家の谷が含まれています。
TrueColo画像をみると東にはナイル川をみることができて、その近傍には植生があります。そして、その西側が砂漠地帯になっていて、標高データを見ると標高が500mくらいでしょうかね、山地があってその裾付近に王家の谷がある、ということが分かりました。ちなみにナイル川の東側の都市はルクソールでTrueColor画像にはカルナック神殿を始めとする神殿群がちょっとだけ見えます。このことは衛星データを取得した後に知りました。
私はナイル川からかなり離れた不毛地帯に王家の谷があるものだと勝手に想像していましたが、QGISソフトウェアで計ってみるとナイル川から直線距離で5km程度と案外近いことが分かりました。そりゃ。水が確保出来るところから遠く離れてたら王墓の建設なんてできないですよね。
下の図は王家の谷付近を拡大した画像です。例のごとくSentinel-1/2の空間解像度では建造物は分かりません。よって、王家の谷の立地状況を確認したいのですが、衛星画像では光学、SARともによく分かりません。一番分かりやすかったのは標高データでした。画像中では標高500mほどの山の裾部に3つに分かれた谷筋が食い込んでいます。このうち1つの谷筋に王家の谷がある事が分かりました。私はグランドキャニオンのような大渓谷にあるものだと勝手に想像していたのですが、どうなんでしょうか、これらのデータを見る限りではそれほど起伏の激しい渓谷地帯というわけでもなさそうです。
しかし、どうして谷部に王墓を建設したんでしょうね。堅固な岩盤のある山部の中でもナイル川周辺との標高差がない、つまりそんなに高いところへ作業しに行くには大変だからというところでしょうか。それに、この谷筋は東のナイル川方面へ向いているので都市部から作業者を送り込み易いという事情もあったのかもしれません。
こんな感じで遺跡そのものではなく遺跡がある周辺の地理的状況を確認しながら妄想をして遊んでいます。