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がん体験備忘録 ♯30 声の復活編③〜リハビリを始める
「声帯を中央に寄せて固定する」披裂軟骨内転術のことは前回書いた通り。
声は、声帯を自分の力で閉じたり開いたりさせて二本の声帯が合わさることで出る。片方が麻痺して、もう片方と合わさる真ん中までいけないので、強制的に糸で引っ張って真ん中で固定したのが上記の手術だ。
声帯が合わさるようになったのだから理屈としては声が出るはずなのであろうが、やはりそう簡単にはいかない。声を出す許可が出ても、細々とした声にしかならず、劇的に良くなったという実感はあまりもてなかった。
それでも、2ヶ月ほど経った頃から、「声、良くなりましたね」と言われることが増えて、とても嬉しかった。
訓練次第ではもっと出るようになるのではないかと思い、甲状腺がんの手術をした直後に声の相談に行ったクリニックに行ってみた。
「おっ! 内転術やったんですね。うまくいってるよ。さすがS先生やなー」
このクリニックのK先生、なんと私の主治医とお知り合いとのこと。「S先生はね、ものすごい優秀なんですよ」とおっしゃる。
「あとは、リハビリでどこまでいけるかやな」(K先生は関西弁)
「自費になるけどよかったら。」と、言語聴覚士のリハビリの先生も紹介してくれた。
もちろんやりますとも。リハビリで改善されるのであれば。
長らく声帯が合わさらない状態で話していたので、声の出し方を忘れてしまっている感じだ。力の入れ具合も分からないし、しっかり声を出すのがなんとなく怖い。専門の先生に一から指導してもらうのが安心だ。
ちなみに費用は、マッサージを受ける程度。至極妥当と感じた。
はじめて言語聴覚士のY先生にお会いしたのが、披裂軟骨内転術から3か月後くらい。優しく明るい笑顔の、話しやすい先生だ。なんと、Y先生も手術をしてくれたS先生と一緒に仕事をしたことがあるという。「S先生、いい先生ですよね~。お人柄もいいし、頭もすっごくいいし。」 と聞き、訳もなく嬉しくなった。!(^^)!
まずは、現状のチェック
1 「あー」と何秒声を伸ばせるか。
2 「スー(息のみ)」で何秒伸ばせるか
3 文(「北風と太陽が力比べをしました。旅人の外套を先に脱がせた方が勝ち………」以下続く) を読む
4 キーボードの音に合わせて「あー」で声を出していく。どこまで出せるか。(上へ 下へ それぞれ)
これらを記録・録音し、すぐにPCに取り込んで音声分析をすると、息の漏れ具合や声の質などが数値化される。詳細は忘れたが(覚えていたとしてもよく分からない)、まだまだ改善の余地はあるとのことだった。
ちなみに、2の例文は、大学病院での音声検査でも同じだった。音声的に研究された文なのだろうか。
声の質を上げるためには「声帯の筋トレ」が必要とのこと。「あー」となるべく長く伸ばす練習や、「のー」で低い音から高い音まで伸ばす練習などを教えてもらい、初回を終えた。
仕事から帰って、疲れた体で「あー」と声を伸ばす練習をするのはなかなかしんどかったが、かなりまじめにがんばった。
2回目以降、「ド レ ミ」の三音を「あー」や「おー」と伸ばす練習や、のどの力を抜く練習(「おー」が抜きやすい)など、様々なやり方を教えていただいた。
このころ、話す声はかなり改善していたが、歌となると全くダメだった。「ドレミ」の音程で「あー」というと、「ゲロゲロゲロ」というカエルの鳴き声のようになってしまう。「ドレミ」の次の「ファ」は出ない。息は全く続かないし、声を出すために体をつかっている感じが全くしない。
それでも、あまり悲壮感はなかった。話し声は改善していたし、リハビリをした2回目、Y先生に「前回よりもよく出ている」と言われ、「リハビリすれば何かが変わる」という希望をもつことができていた。
加えて最後に残ったネック、「声帯ポリープ」の手術も進めることにしたが、
こちらの手術も一筋縄にいかなかった。
次回はその話。
♯声帯リハビリ
♯がん体験記