がん体験備忘録 ♯31 声の復活編 ~④声帯ポリープ手術
ふ~ 長かった(=_=) ようやくここまで到着した。最後の手術。声帯ポリープ切除だ。
甲状腺がんが見つかったのは、そもそも声帯ポリープの手術が必要になったからであった。
内転術で片方の声帯が真ん中に固定されているので、二本の声帯が開いたときの隙間が狭くなる。まずポリープを切除してから真ん中に固定する内転術をした方がよかったのかもしれない。
しかし、ポリープ手術のためにまた大学病院に通って、1泊の入院をして、落ち着いたら内転術…というのは、もう面倒だった。とにかく息漏れをするのが苦しいので、「もうポリープがあってもいい!」くらいの気持ちになっていて、こちらは半分諦めていた。
ところが、前回書いたクリニックのK先生が、ポリープ切除をしてくださるという。これまでの経緯や甲状腺の主治医S先生のこと、内転術のことをよくご存じのこの先生が引き受けてくださるのは、とても心強かった。
結果、「3度目の正直」でめでたくポリープを切除することができた。
1 一回目 全身麻酔で挑戦
声帯ポリープ切除は全身麻酔が基本だ。内転術をしてから約4ヶ月後の年末に、日帰り手術専門の施設で行うことになった。事前に一度その施設で麻酔の先生の説明を聞き、手術当日。
全身麻酔の薬が入った時に、「がんの手術の時はもっとあっと言う間に意識がなくなったな~」くらい考える時間があって意識がなくなった。
目が覚めてしばらく休んでいるように言われる。「声、絶対出しちゃいけないんだよね」と思いながら静かにしているところに先生登場。
「Musiklehrerinさん、ごめんね。ポリープ、取れなかった。だから、しゃべっていいよ」
えーっ?! (◎_◎;)(◎_◎;)(◎_◎;)
甲状腺手術の影響かで首回りが固くなっており、喉が十分に開かず、続けるのは危ないと判断したとのこと。(手術の時は美容院で頭を洗ってもらうときのような体勢で、頭をぐっと落とす)
「これまで1000件以上やっているけど、できなかった人は6人目。太っていて首が太い男性なんかにはあり得るんだけど… 骨格の問題もあるのかな…」
部分麻酔で座ったままする方法があるので、そっちでやってみましょう。
ということになった。残念"(-""-)"
「でも、違う方法があるんだからよかったね!」
と気を取り直し、「全身麻酔なので、付き添いが必要」と言われ同行していた母とランチをして帰った。
「お金は、ポリープがちゃんと取れたらもらいます」とのことで、この日は休日診療費のみだった。
2 ニ回目 今度は部分麻酔
その2か月後、今度は、クリニックの普通の診察室、いつもの椅子で挑戦だ。麻酔の薬を鼻から入れたり口に含んだり、いろいろやって手術開始。
動いてはいけないのはよくよく分かるのだが、どうしてもえずいてしまう。えずかないように我慢する。先生も息をつめて集中しているのが伝わるが、どうしてもダメだ。
声帯の長さは15mm程度という。そんな小さなところに刃物(どんなものか知らないけど、ポリープを切るもの)を入れるのだ。途中でえずいて声帯が動いてしまったら…。危険なことは素人でも分かる。 しかも、私は内転術の影響で二本の隙間が狭くなっている。
かなりねばったが、麻酔が効く時間のリミットとなり、あえなく断念。
「でも、分かったぞ!」
と先生。何が分かったんだろう…。あきらめずに、リベンジしてくれるという。ありがたい。
次回の手術の約束をして帰る。この日も費用はほとんどかからず。
3 三回目 3度目の正直
前回の手術からさらにおよそ2か月。ちょうど新年度の始業式の時期と重なった。この時期、1週間程度授業をしないことは可能だ。なんというよいタイミング^_^
前回と同じように麻酔をして開始すると、
「あれ? えずかない」
前回は、どんなにがまんしてもえずいてしまっていたのに、今回は静かにしていられる。
「絶対にうごかないぞ!」
という気分で、こちらも息を詰める。シーンとした緊張感が広がる。
「お いけるいける…」
という先生の声。もう気分は完全に協働作業。心の中で「先生、がんばって!」と思いっきり応援する。
そして、
パンパカパーン🎉 切除成功!
!\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
盛大に喜びたいし、先生にお礼を言いたい。が、声を出すことは厳禁だ。
「この後が大事だから、絶対に声出さないでくださいね」
と念押しをされ、頭を下げてこのクリニックを後にした。
時間的には職場に行けない時間ではなかったが、ぐったり疲れたので、手術が成功したことと、そのまま帰宅することをLineで連絡した。
それにしても、2回目と3回目、何が違ったんだろう。
先生、すごいな…
かくして、数年かぶり(5年くらい?)に、ポリープのないきれいな声帯を取り戻すことができた。
♯声帯ポリープ切除手術
♯甲状腺がん