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がん体験備忘録 ♯28 声の復活編 ①~先駆者に励まされて
甲状腺がんの発覚から始まり肝臓がん、それに続く鬱病と、覚えておきたいことを書き連ねてきた。あとは、「声が復活した事」を残すのみ‼️
甲状腺がん摘出のため、甲状腺、副甲状腺を全摘、左右リンパ節郭清をして、反回神経も切断せざるを得ず、その影響で片方の声帯が完全に麻痺した。結果、声帯が合わさらず、息がダダ漏れ、シャーシャーと息漏れをする聞き苦しい(話すのはもっと苦しい)声になっていた。
甲状腺の手術直後から「声帯を真ん中に寄せて固定する手術がある」とは聞いており、ぜひお願いしたいと思っていたが、手術の影響で首周りがあまりにも辛く、次の手術をすぐに考えることはできなかった。
そうこうしているうちに今度は肝臓がんの治療に入り、声帯の手術の話は頓挫していた。
肝臓がんの手術から一年が経過し、鬱で休職していたものの回復の兆しが見えてきたのが7月頃。以前から夏休み中の手術を希望していたので、この年の夏に手術してもらうことにした。
披裂軟骨内転術(ひれつなんこつないてんじゅつ)
この手術を前に、大親友のHARUちゃんが、「こんな人がいるよ!」と情報をくれた。韓国のオペラ歌手 ベー•チェチョル氏だ。
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裵宰徹(ベー・チェチョル)/ Tenor
甲状腺がんで、声を出すために必要な3つの主要神経をすべて切断しながら、日本での声帯回復手術により、声楽家として復活を遂げた。片側の声帯が完全に麻痺した状態で歌っている、歴史で唯一の、奇跡のテノール。
ヴォイス・ファクトリイ株式会社 HPより
NHKのドキュメンタリー番組にもなったらしい。
この方が日本で手術を受けたのが2006年というから、もう随分前のことだ。
当時、ここにある「声帯回復手術」つまり「披裂軟骨内転術」ができる医師は世界を見てもほとんどおらず、ベー氏は、この手術の考案者である京都大学の一色信彦医師に手術を依頼する事を決めたという。
日本でのコンサートの際にベー氏の声に惚れ込んだ日本のプロデューサーが、力になったらしい。甲状腺の手術をする前の彼の声は、それはそれは見事だ。
その様子は、本や映画でも紹介されており、私はそれらをくまなく見た。YouTubeで復帰後の歌を聴くこともできた。
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いのちのことば社フォレストブック
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この手術をすれば、また歌えるようになるかもしれない。
こんな世界的な歌手に自分を重ねるのは、おこがましいにも程がある。しかも手術をしてくれる先生は、「声の質はかなり改善する」とは言っても「歌えるようになる」とは言わなかった。期待し過ぎは禁物だ。
それでも、同じ病気をして、実際にこのように再び歌えるようになっている方の存在は、私にとってとても大きな励みになった。
それにしてもこの方、オペラ歌手だ。手術後のあの声の出なさを知った時の絶望感たるや、想像を絶する。
にも拘わらず、悲観することなく、希望を失うことなく再起を果たしたその精神力には、ただただ敬服するばかりだ。
また日本でコンサートをしてくれないかな…
その時は、本をもって楽屋に行ってサインをねだろう。そして、あわよくば写真を一緒に撮ってもらう!
というのが今の私の密かな野望(#^^#)
♯ベー•チェチョル
♯披裂軟骨内転術
♯声帯回復手術
♯がん体験記