第15週「先生のうた」#露営の歌
先週から放送が再開したNHK連続ドラマ小説「エール」
今週の放送から戦争の足音が聞こえてきました。
歌は世につれ、世は歌につれ。世の中が戦争モードに突入していたら?
昭和10年代の日中戦争~第二次世界大戦期に、国威発揚を目的として軍歌が多く作られました。それは、第一線で当時活躍した当時の歌手や作曲家、各レコード会社にとっても時代の波に飲み込まれ、避けては通れぬ道だったのでしょう。
古関裕而も、多くの軍歌を当時書いています。
1937年に発表された「露営の歌」はその代表でしょう。古関裕而は旅行先の満州から帰京する際の汽車で、ちょうど読んでいた東京日日新聞(毎日新聞の前身)に記載された歌詞に心を動かされて作曲したというエピソードがあります。
急ぎの作曲の仕事があるので至急、特急に乗って帰ってきて欲しいと専属の日本コロムビアが依頼したのは、まさしくその歌詞にメロディーをつけてほしいという依頼だったそうです。
古関裕而が満州旅行で見た光景の一つに、二百三高地の砲弾の痕といった日露戦争の戦跡がありました。
昭和12年、日本ではこの戦争はすぐに終わると思われていたこともあり、まだ平穏な空気があったものの、兵士一人ひとりの決死の想いや、駅に立つ武運長久の幟、戦線に赴く家族を見送り、日の丸の旗を振る家族の姿、千人針のために街頭に立つ女性の姿など、それらの光景が哀調あふれる短調のメロディーという形として表れたのでしょう。
レコードとしては、同じ新聞に掲載されていた行進曲調の「進軍の歌」がA面として発売されましたが、国民の共感をより得たのはB面の「露営の歌」でした。
以降、古関裕而は多くの軍歌・戦時歌謡をヒットさせます。ただそれは、決して戦争賛美ということではなく、戦地に赴く人たちに、少しでも音楽で勇気づけたいという想いからでしたが、多くの人と同様、時代の波に翻弄されていきます。
(文:ミュージックソムリエ:柏井要一)
NHK連続テレビ小説「エール」 (NHK総合月〜金 朝8:00〜8:15、12:45〜13:00)
土曜日は1週間を振り返ります。その他NHK BSプレミアム、NHK BS4Kでもオンエア中です。
*放送予定 3月30日〜9月26日
またNHKオンデマンドでも見逃し放送をご覧になることができます。