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古関裕而と野球

明日から、NHK連続テレビ小説『エール』放送再開されますね!
さて、新しい展開もさることながら、少し巻き戻しですが古関裕而さんと野球にまつわる音楽についてご紹介したいと思います。

早稲田大学の応援歌、慶應義塾大学の応援歌、阪神タイガースの「六甲おろし」、読売ジャイアンツの「闘魂こめて」、そして現在でも高校野球でお馴染みの「栄冠は君に輝く」。これらは全て、古関裕而氏の功績として今なお燦然と輝いています。(以下、敬称略)

♪「紺碧の空」
早慶戦が初めて行われたのは1903年。両応援団がヒートアップしたことで一旦中止になるものの、東京帝国大学(現・東京大学)の仲立ちで1925年に東京六大学野球連盟が結成されます。それに伴い早慶戦も復活、当時普及し始めたラジオ中継によって全国的に盛り上がりました。

早稲田大学の応援歌「紺碧の空」が古関裕而によって作られたのは、慶応の「若き血(堀内敬三作詞・作曲)」に対抗してのものです。当時親しくなり始めた歌手・伊藤久男の従兄弟・伊藤茂(実際の「茂」は草冠がなし)が早大の応援団に所属していたという縁があったと言われています。
 歌詞を全早大生から募集して、それに古関がメロディーをつけました。1931年、中山晋平や山田耕筰といった当時の大御所を差し置いて発表された、21歳の新人の作品です。

 吹奏楽の音が大変しっくりくる、爽やかかつ勇壮なメロディー。これは後々の曲を思い返しても、まさしく古関裕而の原点とも言えると思います。
なお早稲田のライバル慶応に「我ぞ覇者」を提供するのは、戦後間もなくの1946年になります。

♪「阪神タイガースの歌(六甲おろし)」
プロ野球と古関裕而が関わるのは、ちょうどリーグ戦が開始された1936年。この年に阪神タイガース、当時で言う大阪タイガースの球団歌が生まれました。

後に「六甲おろし」として現在も親しまれている楽曲のタイトルは「大阪タイガースの歌」。阪神タイガースと高らかに歌われる直前の“オウ オウ オウ オウ”は、元々大阪タイガースの“大阪”に続く形で作られています。
ちなみに大阪タイガースから阪神タイガースに改称されたのは1961年。その時に曲名も「阪神タイガースの歌」とされています。

最初に歌ったのは、戦後多数のヒット曲を提供した作曲家となる中野忠晴。初披露されたチームの激励会で、関係者にレコードを配ったのみで市販はされていません。長らくレコード会社や放送局にも保管されていませんでしたが、愛好者からの提供によって21世紀になってようやく復刻されました。

阪神タイガースと球団名が変わってから歌ったのは、「喜びも悲しみも幾歳月」でお馴染みの若山彰。さらに1970年代、自らパーソナリティーを務める朝のラジオ番組で阪神が勝利するたびに歌ったのが中村鋭一。1980年には自身もファンであると言うクラシック歌手・立川清登がレコーディング。近年は毎シーズンごとに「みんなで六甲おろし」と称して、タイガースファンの著名人が歌う「六甲おろし」が甲子園球場のオーロラビジョンに流れています。
 
♪「闘魂こめて」
タイガースのライバル・読売巨人軍も、1939年に「野球の王者」という球団歌を古関裕而に依頼します。古関だけでなく作詞者の佐藤惣之助も「大阪タイガースの歌」と同じなのが面白いですね。
ちなみにこの曲が球団歌として使われたのは1948年までです。
その後、米山正夫作曲の「ジャイアンツ・ソング」を経て、1963年再び古関によって新しい球団歌が作られます。それが現在まで親しまれている「闘魂こめて」になります。

♪「栄冠は君に輝く」
今年は、夏の甲子園でこの歌が響かなかったのはとても寂しかったですね。
来年こそは!!
1948年には、夏の甲子園テーマソングとして「栄冠は君に輝く」が誕生します。学制の改定に伴って「全国中等学校優勝野球大会」が「全国高等学校野球選手権大会」に改称したタイミングです。
“雲はわき 光あふれて”で始まる歌詞は公募によるもの。曲が進むごとに徐々に開けていくようなメロディーは、無限に広がる青い空のよう。
発表時にレコーディングした歌手は、古関裕而にとって同郷の盟友である伊藤久男です。「露営の歌」「イヨマンテの夜」など、このコンビで生まれた名曲は他にも数多い。
ドラマ再開後、これらの曲も披露されていくことでしょう。

(文:ミュージックソムリエ:柏井要一)

NHK連続テレビ小説「エール」                  (NHK総合月〜金 朝8:00〜8:15、12:45〜13:00)
土曜日は1週間を振り返ります。その他NHK BSプレミアム、NHK BS4Kでもオンエア中です。    
*放送予定 3月30日〜9月26日
またNHKオンデマンドでも見逃し放送をご覧になることができます。




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