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「ローグ」KaHO×Musicolune セルフライナーノート アレンジ編 by eric

KaHOさんの作詞・作曲編に続いて、「ローグ」アレンジ編をMusicoluneのericが綴ります。

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コラボレーションのキッカケ

セカオワやゆずのプロデュースを手かけた保本真吾さんのジョイミューに、KaHOさんもMusicoluneも参加。(Musicoluneはジョイミューの活動を終了)
そのジョイミューを盛り上げるために、各ミュージシャンがカバー動画をアップしていたのですが、自分はカバーをほとんどやらないので、どうしたものか…と思っていたところ、作品に共通性があるKaHOさんと何か作れそうだと思い、2020年の6月に声をかけました。

しかし、その後コンピレーションアルバムの楽曲の制作に専念する必要があり、一旦延期。アルバムが完成した、12月末から制作を開始しました。

アレンジの方向性

【ローグデモ音源】

デモ音源を聴いて、頭に浮かんだのは「ンッタ、ンタッタ」とスネアが裏に入るドラムと、ストリングス、全体の雰囲気は打ち込みによるバンドサウンドをイメージしました。


ただ、進めていく内に、そのドラムでは力強さが出なかったので、ハウスっぽい4つ打ちのドラムを重ねて、シンフォニックなダンスミュージックに転換。
ほぼ聴こえないのですが、元のドラムも鳴っているので、2つのドラムが重なっています。Musicoluneでは、2つのドラムセットを使ってリズムトラックを作る手法を良く使っています。

リハーモナイズ~キーワードは「ヒリヒリ」感

【ローグ メロディー&コード譜】

リズムトラックが出来たら、ワンコーラスの長さ分コピーして、リハーモナイズ(和音を付け直す事)します。
原曲が3和音だったので、より深みを出したいと思い和音を付けてみます。が、1回目のリハモは無しにしてやり直しました。

KaHOさんの曲と歌の魅力は「ヒリヒリ」感。可愛らしいルックスと可愛らしい声だけど、世の中と上手く摺り合ってないところから生まれる「ヒリヒリ」した感じ。
1回目のリハーモナイズは、7thやM7thが多くて響きが甘くなって、それと合っていませんでした。F♯mとF♯m7を弾いて良く聴いてみると分かりますが、7thを付ける事によって、悲しさや強さが柔らかくなります。

2回目のリハーモナイズでは、不必要な7thやM7thを無くし、一部はadd9に変えています。また、Aメロはメロディーに合う6thを使って他のセクションと少し違う響きにしています。
また、原曲と変えている点で言うと、サビ前(1:15~)のコードをC♯7が2小節続く所をC♯m7からC♯7にして、サビに行くぞ~という風にしています。
また、歌詞の力強さに合わせて、2回目のBメロは(2:18~)、1回目のAメロと違うコードを付けています。

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アレンジはリアルタイム入力

コードが出来たら、ベース⇒バッキング⇒ストリングスなどの上物⇒シーケンス⇒パッド⇒ライザーという順で音を重ねていきます。

ドラム以外はほぼ全てリアルタイム入力。打ち込みだけど、人間的な躍動感を感じませんか?クオンタイズはがっちりかけてますが、ベロシティやゲートタイムは弾いた感じを活かす事で、人間感が出ています。
クオンタイズは16分音符の55%スウィング。ハウスのグルーヴで微妙に跳ねさせるのが好きです。

今回のアレンジで大きかったのが、ブラスを入れた事。
いつものMusicoluneのアレンジの通り、ストリングスを中心に作っていったのですが、力強さが足りずブラスを加えました。サビでストリングスが長めのフレーズを奏でて、ブラスが「パパッパー♪」と細かく刻んで、力強さとスピード感を高めているのが好きです。

音源は、ほぼKomplete13

音源は、ピアノはMODARTTのPianoteq、それ以外はNative InstrumentsのKomplete13と、Kompete Kontrolで管理しているArturiaのAnalog Lab V。ほとんどKomplete13で作っているんですね。
沢山入っている音源から音色を選んで、Komplete Kontrolのノブで音色エディットをし、どんどん音を重ねられるのが最高です。DTMやっている人は全員導入すれば良いにのなぁ…なんて思ってます(笑)

ただ、音色が沢山ある分、全てのライブラリから選ぶ事になると、それだけで時間が過ぎて行ってしまうので、下記のようにどの音色でどのシンセを使うのかはある程度決めています。
ドラム:Battery 4。固い音色が欲しい時はEDM系のライブラリー。柔らかい音色が欲しい時はHouse系のライブラリー。
シンセベース:Monark
キラキラとしたシーケンス:FM8
個性的なパッド:RAZOR

また、ドラムやベース、ストリングスなどベーシックな音色は1曲通して変えず、その代わりシーケンスやパッドなどの上物の音色を変えるようにしています。バラエティー感が出て、曲を楽しく聴けるようになります。

↓シンセベースはMONARK

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お気に入りのDメロのアレンジ

ワンコーラスのアレンジが出来た時点で、KaHOさんにデータを送付してチェックしてもらいます。
全体の方向性はOK。サビをもっと前に進む感じと広がる感じが欲しいというリクエストがあったので、リズムトラックにスピード感を加えているシェイカーのボリュームを上げて、キラキラしたシーケンスと、スペイシーなパッドを追加しました。ちなみにパッドを入れる時点でコード感を担っているパートが既に入っている事が多く、和音ではなく単音で入れる事が多いです。

この時点で、フルコーラスのメロディーと歌詞が出来ていたので、全体のアレンジを作っていきます。

KaHOさんの記事でも言及されていたDメロ(3:08~)のアレンジですが、4つ打ちからダブステップに移行するEDMの定番の手法を取り入れています。台詞を左右にPANを振って、合いの手になるメロディーを中央の後ろで鳴らすアイディアはデモを聴いた時点で浮かびました。面白い効果になっているので是非ヘッドフォンやイヤフォンで聴いて下さい。
また、Dメロの後半(3:33~)のサビに向かう所、個人的に好きな所です。ストリングスの刻みが強調されて、オーケストラっぽいですよね。その後、サビにそのまま向かうのかと思いきや、オケを全部ミュートしてボーカルだけにして、「はっ」と驚くような効果を狙っています。

ボーカルトラック

1曲通してのアレンジが完成してしばらくしてから、KaHOさんから本番のボーカルトラックが届きました。デモの歌い方は優しい感じだったんですが、曲の冒頭今までのイメージとは違う力強い歌い方で驚きました。他のセクションも、アレンジに合った歌い方になっていて、これは最高!と思った次第です(笑)

メインボーカルはWavesのVitaminでサチュレーションをかけて存在感を強くして、マルチバンドコンプで高音を上げています。

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コーラスパートは、「フ~♪」という白玉と字ハモの組み合わせです。凄く綺麗な歌だったんですが、サビになると白玉のコーラスがグルーヴを消してしまうため、WavesのOneknob Pumperでサイドチェインコンプをかけています。Oneknob Pumperは同じ理由でパッドにかける事も多いですね。

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ギターパート

ローグはならず者という意味。その荒々しいイメージを取り入れるために、アコギは演奏してもらうと決めていました。いつもMusicoluneで演奏してくれている肥沼武さんにお願いしています。
いつもはコードだけ渡して、ほぼお任せしているのですが、今回はアレンジの中でこう弾いて欲しいというイメージがあったので、譜割りも渡して弾いてもらいました。
ただ、1回目の納品時にAメロがサビと同じようなパターンだったので、リテイクをお願いしました。

ミックスはボーカルと同じくVitaminを使用。クリスピーギターというプリセットを元に、高音強めのジャカジャカした音にしています。
ギターの音量は何回かやり直しました。複数ある楽器パートの一つに聴こえるようにしながらも、ボーカルに寄り添うような音量を探すのが難しかったです。

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ミックス

シンセの音は、エフェクトも外さず使っています。音楽プロデューサーの本間昭光さんも言っていたように、エフェクト込みの音色として考えています。ただ、音の響きが長すぎるものに関しては調整を行っています。

アレンジが上手く行っているからか、調整をそれ程行わなくても、全体がバランス良く鳴っていました。

ただ、低音の処理は何回かやり直しています。再生環境によって、低音はかなり違って聴こえるんですね。ダンスミュージックらしく低音を強くしたいんだけど、スマホでイヤフォンで聴くと歌を邪魔してしまう…。最終的には、ベースの低音をあまり強調せず、歌が被る帯域をEQで削っています。

マスタリング

マスタリングはOzone8のElectric Clarityというプリセットを微調整して使っています。
音圧をどこまで上げるかは少し悩みましたが、曲のダイナミクスを活かして、KaHOさんのジョイミューコンピレーションアルバムの曲「未完成エスケープ」と並べて聴いても小さく感じないような音圧感にしました。

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最後に

ローグは、打ち込みのアレンジ4日間、レコーディングやミックス、マスタリングを含めると1カ月かけて創った作品です。
とても好きになってくれた人がいたり、Spotifyのプレイリストに掲載されたりして、とても嬉しく思っています。
好きになってくれた方は、コメント欄などで感想を頂けると嬉しいです。

また、アレンジをしていてコード付けなどに共通点があり、KaHOさんの曲とMusicoluneの相性はピッタリだな…と感じています。

そんなKaHO×Musicoluneの今後は…
是非お楽しみにしてください。

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eric@Musicolune
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