【差別と悪意】最終章① 新しい施設に通うまで
久しぶりにNさんに会えてメンタルが回復したので、今がチャンスと思ってこの連載を完結させる決断をした。
前回のあらすじ
施設Bの施設長が権力を乱用し始めた。俺だけにキツく当たるようになり、猫の手も借りたいような状況であるのにも拘らず、一気に3人のスタッフを辞めさせた。その横暴に耐えかねて施設Bを辞めるという決断をしたところ、施設長が「ドラゴンをブラックリストに載せてやる」と言っていたという噂を聞いた。
新しい施設に通うまで
さすがに施設を辞めてすぐに「新しいところに見学に行こうぜ!」とはならなかった。当時はすごく嫌なタイミングだったからだ。嵐の活動休止前ラストライブのBlu-rayが発売されたばかりで、今後しばらく最推しのニューリリースがないことが確定していた。生活は心配がなかったので、自分が働いてお小遣いを稼ぎたいという一番の動機がなくなってしまったからだった。当時の唯一の救いといったら、Nさんがずっと愚痴を聞いてくれたことくらいだった。
新しい施設に通えなかった理由はもうひとつ。単純にいいところが見つからなかった。これが施設Bの施設長の「ブラックリストに載せてやる」発言の裏付けとなっていくわけだが、当時は俺も母もそんなことは1ミリも考えていなかった。
動きがあったのはBを辞めて数ヶ月経った頃だった。当時の相談員さんに勧められ、「とりあえず施設見学には行っておきましょう」という話になったのだ。通うかどうかは一旦脇に置いておくとして、施設という場所の雰囲気を忘れないでいるということも大事だ、とのことだった。これには母も同意見だったので、いくつかの施設見学に行くことになった。
ところが、見学した施設たちはどこも「通う」という選択肢が現実的ではないところだった。あるところでは応接室の壁に大穴が空いていた(利用者が暴れ回った形跡と思われる)し、あるところでは毎日の送迎が不可能だと言われた。
中でも酷かったのは、まだ完成していない施設があったこと。「来月には開業予定です」と説明されたのだが、それ以降なんの連絡もなかった。耐えかねてこちらから連絡を取ったところ「利用者が集まらず開業の目処は立ちません」と言うのだ。もちろんそれ以上待つことはしなかった。
そんなこんなあって、やっと新しい施設Cに通えることが決まったのはBを辞めた年の11月だった。ちなみに辞めたのは2月である。
Bよりも時給もよく、仕事のレベルも俺に合っていた。食事も美味しかったし、言うことなしだった。
だが、事はそううまくは運ばない。結局翌年の3月にはCも辞めることになる。次回からは、施設Cを辞めるに至るまでを書いていく。それではまた次回。