エッセイ 夢の話⑤
このエッセイ連載も残すところあと3回となった。あと3回で終えられるはずである。執筆ペースによるけれど、来月頭くらいまでには完結予定なのでお付き合いください。
ところでこの連載を書くきっかけになったNさんだが、やはりガッツリ体調を崩していたことが判明した。回復を祈りながらこの文章を書く、ということしかできないのが若干歯痒いが、彼女が元気になったらぜひ読んでもらおうと思っている。その時に彼女の感情をいい方向に揺さぶるような文章が書けたらいいと思っている。
前回までのあらすじ
俺がある時期に見た夢の話だ。
親友のNさんとユニットを組んで、アルバムリリースからライブツアーまでセルフプロデュースでやるという身の丈に合わない大それた夢だ。夢というかもはや妄想だ。今回彼女と会えない時間が続いていることをきっかけに、俺のメンタルを上向かせようと思って連載エッセイという形で書き始めた。
前回まででライブの準備はあらかた整った。今回はライブツアー開幕の地、北海道に着いたところから始まる。
会場リハーサル
ツアー最初の会場、北海道立総合体育センターに到着し、まずはオープニングから通しでリハーサルしようということになっていた。ステージ上で、パフォーマンスする中で衣装を着るというのはその日が初めてで、Nさんが監修してくれた衣装は車いすの俺にもフィットしやすいように計算されていた。
さすがにリハーサルだし本番前日なので、2人とも本気で歌ったり踊ったりすることはなかった。全体の流れとお互いの不安なポイントを少しだけ確認する以外、俺たちは初めて立つアリーナクラスのステージにうっとりしていただけだった。
ライブ開幕
ここからはダイジェストのようなスピードで夢が進行していった。ライブのオープニング演出だけが最後まで決まっていなかったが、「関ジャニ∞の元気が出るLIVE!!」のオープニングを参考にして、リハーサルの日に最寄り駅から会場まで2人で雑談しながら向かう様子をそのままオープニング映像として使った。
俺たち2人がステージに登場する。立てるNさんはポップアップで、俺はリフターでの登場だ。1曲目はSMAPの「青いイナズマ」。最初はワンコーラスNさんがソロで歌い、2番から俺が出てくるという演出だ。2回目のサビからユニゾンして、ラストは2人で決めポーズだ。
正直、アリーナツアーのライブ本番がどうだったかはほとんど覚えていない。夢だから当たり前と言われたらそれまでだが、そもそもあまり触れられなかった気がする。しかし、この謎は今回の夢の終盤で解ける。
そしてドームライブへ
アリーナツアーの内容は、そういうわけでほぼMCしか覚えていない。福岡に行けば水炊きが美味かっただの、さいたまスーパーアリーナに立てば「昔嵐もここに立ってて、その様子がDVDになってるんだ」だの、ほぼほぼ俺が興奮して喋っていた。ここでもその記憶はどこかダイジェスト的だった。
しかしアリーナツアー最後の場所、横浜アリーナのラストの挨拶は、夢を見てから半年以上経った今でも要旨は覚えている。
「これは俺たちの友人関係の集大成と言ってもいいツアーです。集大成とは言いつつ友人関係はこれからも続きます。そのはずだよね?」と言いながらNさんを見る。Nさんは微笑んで頷いてくれる。
「じゃあ何が終わるのかというと、今回のユニットとしての活動です。俺たちは数ヶ月前まで、ただの歌好きな一般人でした。でも、たくさんのスタッフやNさん、楽曲のアレンジをしてくれた人やカバーを快諾してくれた原曲アーティストのみなさん。パッと思いつくだけでもこれだけの人に協力していただきました。ツアー開幕以降は会場から合流してくれたライブスタッフの方々、そして何より今ここにいてくれるファンのみなさんのおかげで、俺たちは今このステージにいられます。プロジェクト発足から今日まで俺たちに関わってくれた全ての人へ、本当にありがとうございます。
さて、若干湿っぽくなってますが、俺たちのプロジェクトの最終目的地はまだ残っています。東京ドームです。ここまで無事に、そして楽しくやってこられたこのチームだから、ドームでも有終の美を飾れると信じています。ドームライブの最後の曲をもって、音楽ユニットとしての俺たちは解散します。ドーム公演はD&Dの公式サイトでも生配信する予定ですので、今までのアリーナツアーに来てくれた方も最後まで一緒に遊んでくれたら嬉しいです。今日は本当にありがとうございました」
アリーナツアーラストだからといってアンコールに特別な曲を仕込むということはなかった。最後に2人で「またドームで会いましょう!」と叫んでアリーナツアーは幕を閉じた。
……と思ったらここでは夢は覚めず、カットが俺の自宅になる。俺はDVDをレコーダーから取り出している。そのDVDには「アリーナツアーダイジェスト&MC集」の文字が。そう、すでにこのライブは映像化が進んでいる。俺はメンバー兼プロデューサーとして、リリースする作品の最終チェックをしているのだ。俺は普段からライブ作品を時系列通りに見る人間ではない。しかしいざ自分のものとなると、あの期間を追体験したいという思いから時系列通りに見ることにしたのだろう。つまり今まで書いてきたライブドキュメンタリーの記事も、ライブDVDの特典映像だったというわけだ。
というわけで、次に見るのは本編映像、東京ドーム公演である。このエッセイだか小説だかよく分からない連載も、あと2回で完結だ。乞うご期待!