エッセイ 夢の話③

 親友のNさんに会いたすぎて、「Nさんと2人でアルバムをリリースしてライブツアーを敢行する」という大それた夢を見た。ここだけの話、俺の妄想が夢として具現化しただけという可能性もあるのだが、意外に好評なので連載を続けている。
 これは俺が見た夢の話なので、俺とNさんという人間が存在するということ以外は全てがフィクションである。現実になったらいいなぁとは思うが、まあ無理だろう(笑)。


前回のあらすじ

 アルバムを制作するため、特典映像に収めるためのスペシャル対談を収録した。そしてソロ曲含む全曲のレコーディングを終えたところで目が覚めた。
 今日の夢は、アルバムリード曲に決めたKinKi Kidsの「ボクの背中には羽根がある」のミュージック・ビデオを撮影するところからだ。

MV撮影

 俺には「何かしらの映像を撮る監督をやってみたい」という夢があった。映画やドラマでもいいし、MVでもよかった。とにかく監督という仕事に強い憧れがあった。今でもその気持ちは変わらない。そこでNさんに頼みこんで、監督兼出演者という立場をとらせてもらうことになった。俺の初監督作品である(夢の中だけど)。
 せっかく自分の好きなように映像を撮らせてもらえるので、俺はショートフィルムを希望した。それなら楽曲にあったストーリー仕立ての作品が作れるからだ。俺には小説家の夢もあるから、脚本執筆というのも嬉しい経験だった。
 その時書いた脚本の内容は、夢なのでさすがに覚えていない。しかしNさんと演技をするというので緊張しすぎて、ラブストーリーを断念したのは覚えている(笑)。

 MV撮影は2日に渡ってスケジュールが組まれていた。初日は演技パートを、2日目はパフォーマンスパートをまとめて撮影しようという意図だ。普通なら強行スケジュールだが、俺たちはまだ芸能人ではないので予定は楽に合った。
 撮影は緊張感マックスだった。スタッフは多いしメイキングカメラは入っているしで普段のようには喋れないのである(笑)。2人ともガチガチで現場入りしたのを見て少しだけ緊張はほぐれたが。

演技パート

 フィクションの作品の中の台詞というのは、現実の会話とは全く違った印象になることが多い。それがたとえ実在の人物や関係性を元に書かれたものであっても。
 実は脚本完成直後に、スタッフは一切入れずに2人だけでいわゆる読み合わせをした。実際に友人関係にある俺たちが友人役を演じる上で、現実とフィクションとのギャップに慣れるためだ。脚本の中ではお互いを下の名前で呼び捨てにしていたが、夢を見た当時はまだその段階までいっていなかったからである(俺は名字に「氏」をつけて、Nさんは下の名前に君付けでそれぞれ呼んでいた。今ではお互い下の名前で呼び捨てである)。ちょこっと台詞を言ってみては笑い合い、少し落ち着く時間を置いてからまた読み合わせてみるも結果は同じ……という状態で1日が終わっていった。結局のところほとんど練習にはなっていなかった。
 ただしNさんは、本番に強い性格である。カメラが回る直前まで緊張で震えていたというのに、本番になると誰も寄せ付けないようなオーラを放つ。俺も彼女に触発されて全力の演技ができる。出演者兼監督だということを失念し、カットをかけ忘れるという凡ミスをしたほどだった。Nさんと一緒に作品を作るなら演技合戦も入れたいと思った俺の直感は間違っていなかったんだと思った。Nさんの周りを超サイヤ人みたいなオーラが実際に包み込んでいた。この辺りが夢らしいところだ。

パフォーマンスパート

 ドラマシーンは演技だけで、振り付けやリップシンク(口パクのこと)は一切入っていない。なのでそういうシーンも入れようということになったのだが、俺は車いすなので本家KinKi Kidsのようなダンスは到底不可能だった。なのでリップシーンだけを撮影して、ショートフィルムのエンディング風の映像にすることになった。
 通常リップシンクといえばカメラに向かって口パクをするものだが、俺は実際に声を出して歌ってしまった。音楽が始まるとどうにも我慢できなくなってしまうのだ。しかし映像をチェックすると変な感じにはなっていなくて、監督も俺だから「これもこれでいいんじゃね?」ということになった。そんな俺を見てNさんは最初こそ笑っていたが、やがて楽しくなったのか自分も歌い始めた。そこで俺はある提案をした。
「これ、MVはMVで新たにボーカル録れたら面白いよね」
 いわゆる一発録音というやつをやってみたくなったのである。多少音がズレたり、相方のパートを歌ってしまうことがあってもそれも俺たちの空気感だということでその場でもう1テイクだけボーカル込みで撮影した。Nさんは最後まで不安げだったが、俺としてはドラマ込みで最高の作品ができたという確信があった。「あとは編集作業だから」と言って俺たちは解散した。
「この編集作業が一番の鬼門だよなぁ」
 こんなふうに呟いたところで目が覚めた。

次回予告

 いよいよ小説っぽくなってきたが、俺が普段から妄想していたことが夢になって出てきたわけだからフィクション性が高くても当然かもしれない。実際記憶が曖昧なところは、当時の妄想メモから補う形でこの記事も書いているし。
 というわけで次回はいよいよツアードキュメンタリー編がスタートする。最近あまりにも他のこと(このネタ以外のエッセイ)を書いていないので執筆を急ぎたいところだが、果たして今月中に完結できるのか? そして現実の俺は今月中にNさんとカラオケに行くことができるのか? どちらの展開もご期待ください!

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