エッセイ フラッシュバック

 前にも同じようなタイトルで書いた記憶があるが、全く別の話であることを最初に断っておく。ここ数日俺のメンタルを地の底にまで落とした出来事の話だ。


久しぶりの外出

 先日、ドン・キホーテに行った。母が見たいものがあったらしく、対人恐怖症及び引きこもりの感がある俺の外出リハビリも兼ねての提案だというので、俺も久しぶりに付き合った。Nさんとカラオケに行った直後で、気分が乗っていたというのも大きい。
 しかし辿り着いた先は、普通のドンキではなかった。「メガドンキ」というやつで、通常のドンキよりも広くて商品も多い。物の圧力がとても強かった。
 それでも、俺が興味を持てるものがあればまだ少しマシだったろう。しかし何もなかったのだ。ゲームセンターがあってアーケードゲームに興味がないことはないのだが、結構な音量かつ無秩序なので苦手なのだ。
 俺は大きい音、いきなりの音が苦手である。センサーを駆使して自動でいきなり「いらっしゃいませ」と話しかけてくるスピーカーなんて天敵だ。しかもそのスピーカーはトイレへの道中にあったから、用を足したいと思う度にそこを通る必要がある。
 施設に通っていた頃、誰が利用者がいきなり、理由もなく奇声を上げることがたくさんあった。俺は特大の恐怖を覚えずにいられなかった。ドンキの騒々しい店内で、てきめんに施設時代の記憶のフラッシュバックが起こって、その日は昼食が満足に食べられなかった。

役所の人間

 俺は障がい者である。だから数年に一度、障がい者を支援するサービスの利用を継続するために市役所の職員と面談する必要がある。
 みなさんの中にも「役所の人間なんて大嫌い」と思っている方は少なくないのではと思う。俺もその1人だ。理由は単純で、市役所の職員から同じ人間とはとても思えないような言葉を受けたからである。
 ずっとエッセイを読んでくれている方には周知だが、俺はスタッフや利用者の陰湿ないじめによってメンタルを病み、就労支援施設を辞めざるを得なかった。
 市役所の職員(仮にXとしよう)が俺と面談しに来た時、まず第一声が「仕事、なんで辞めちゃったんですか?」だった。まるで俺が仕事をサボりたいから辞めたと思っているような口調だった。その時点で頭にはきたが、辞めた理由を確認するのは役所の仕事なんだろうと納得できる。問題はその後だ。以下は、俺とXの会話である。
「仕事、なんで辞めちゃったんですか?」
「施設内でかなり長い期間いじめがあって、耐えられなくなりました。そのいじめというのは例えばこういうもので……」
「ふーん。それで? なんで辞めちゃったんですか?」
 これ、実際の会話なんです。母も呆然としていた。
 辞めた理由、今言ったが? 思い出すのも辛いのに、いじめの内容とかまで詳細に語ったが?
 こんなふうに言えれば楽だっただろう。しかし相手は役所の人間。下手なことを言ってこちらに不利益があったらと思うと、黙らざるを得なかった。
 さらにXは定期的に連絡をよこしてきて「ドラゴンさんの施設はまだ決まりませんか?」や「条件をもう少し緩めてみたらどうですか?」など「早く働け」という圧力をかけてきた。母が「息子はいじめで心が弱っている」と改めて説明した時には「息子さんのこと、心配なんですか?」と言われたそうである。あまりにも予想外の答えすぎて数秒怒りも湧いてこなかったらしい。

 そんなことがあると「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の理屈である。もう役所の人間なんてみんなああなんだと思ったら、課が違おうが人が違おうがもう関係ない。「お前、あいつの仲間だろ?」状態だ。この状態は今でも続いている。
 そこで「役所の人間だけは受け付けない」となればまだよかった。しかし俺にはその時点で、フラッシュバックするような案件がたくさんあった。もう「対人恐怖症」である。

 そこへきて、年末年始に続けざまに役所の訪問があることが確定した。ドンキの件のダメージが癒えていないから俺のメンタルは地の底まで落ちる、というわけだ。しかも年末の方はクリスマスイブときている。何もそんな日に来なくても。

 この程度でメンタルを崩しているようでは、施設に通うなんて到底不可能だと分かっている。俺は病院に通うべきなのだろうか? しかしこれ以上、家族や友人に迷惑や心配をかけたくない。俺はどうすればいいのだろう?

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