名曲370 「霧にぬれても」【紙ふうせん】

ーー昭和屈指の可憐なメロディー。最高のデュエットをーー

【紙ふうせん「霧にぬれても」】

 予約していた紙ふうせんを紹介。この時期ならあの名曲だろと思った方、またの機会に~もう冬が来ちゃったからね。

 今回は「霧にぬれても」を取り上げる。歌謡曲全体では比較的マイナーからか、カラオケで入っていない機種もあるほど。しかし紙ふうせんでは上位に入る名曲と思う。「冬が来る前に」の次のシングルだ。

 作詞作曲は後藤悦治郎。紙ふうせんのメンバー(男側)だ。

{船のあかりがゆれる 夕暮れ神戸の町を 私は霧の中 コートのえりを抱きしめ}

 雰囲気が絶妙。どこにも書いていないが「別れ際」と書いてある。

{昨日あなたの電話 すなおに答えられず 本当は会いたくて あなたの姿探す}

{もう一度あなたと やり直せるならば あの日の二人に戻りたいの}

 これがただの文章だったら心にふーんと響くくらいなのだが、平山泰代の震えるような伸びのある歌声が加わると心臓の鼓動がドン。せりあがるような声の力強さもたまらない。それにしても「あなたと」のハモリは芸術。あそこだけ後藤さんがこっそり主役になるのよ。デュオじゃなきゃこれがでいない。

{遠く船の霧笛が 泣くのをやめるまで あなたを待っています 心霧にぬらして}

 このいじらしさもまた昭和の美学。いまじゃ「あ、またあとでLINEするから」で済んじゃう。人と人との関係性がいまよりかけがえのないものだった。そして一度離れてから再び巡り合うことの難しさ。それも当時はあった。

 個人的にはいかにも典型的な昭和フォーク(デュオ)ソングとして代表作と呼んでもいいと思っている。多くの20~30代が古いと感じるだろうが、だからこそ現代にない歌声のパワーが際立ち、新鮮さすらあるはず。私以外にも評価する声は多いだろう。そしてそれを知らなかっただけという隠れレトロファンもまだまだいる。

 そういった名曲群を霧の中に隠れさせてはいけない。山本潤子(ハイファイセット)の翼をくださいがこれだけ世間に知れ渡ったのなら、紙ふうせんも同等の評価を得てもいいはずだ。うーむ、CMソングにぴったりなのでどこか採用してくれないかしら。

       【今日の名歌詞】

船のあかりがゆれる 夕暮れ神戸の町を 私は霧の中 コートのえりを抱きしめ


 


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