名曲702 「ポケベルが鳴らなくて」【国武万里】
ーー私のエモさをわかってくれるだろうかーー
【「ポケベルが鳴らなくて」国武万里】
時代背景がわかる曲はそれだけで存在価値がある。今回はまさにその代表曲。いまでは絶滅したポケベルが主役だ。
ポケベルは定義としては「無線呼び出し」に属されるようだ。略語が浸透しているが、正式にはポケットベルと呼ぶとのこと。
私は世代ではなく、見たことすらなかった。当然、いまの携帯電話の前身ということは知っていたのだが、それにしたって同世代でまったく話題にあらないこともあって知ったのは遅かった。初めて目にしたのは「こち亀」の話の中でだったか。100巻台はマニアックの宝庫で、いまの目で見ると非常にエモい。
こういうのは先述の漫画に限らず書物で知ることが多く、曲を通して時代を感じられるのはほんの一握りといっていい。それは時代遅れにならないよう、永遠に聴いてもらいたいという思いがあるのかもしれないが、タイトルは特に気を使っている気がする。
いまでいうなら「スマホが鳴らなくて」になるのだろうか。そう、いま使っているものもいずれ時代遅れになるのだ。思ったよりそれを題材にした曲は世に出ていない。というわけで流行りのものをテーマにはしにくいと。
ところがである。その思い(私の独りよがりかもだが)とは打って変わってこの曲は未来永劫聴けるレベルに仕上がっている。落ち着いたメロディーにしっとりとした国武万里の美声。これまで多くの恋文を待つ表現はあったが、これまでストレートに時代を表現したものはなく、逆にそれが堂々としていて高評価だ。潔さまで感じる。
これは当時流行したドラマだそうだが、それに合わせた主題歌のようだ。それにしても時代ですなあ。服装がなかなか。こういうのも好きな私。過去を見る度に、「存在していた未来」を思わせるのである。過去は未来なのだ。