名曲473 「セーシュン」【DIALUCK】
ーー気だるさを極めた芸術ーー
【DIALUCK 「セーシュン」MV】
DIALUCKは皆さん大好きな昭和のガールズバンドである。噓である。なんとなんとこのnoteでは珍しく最近の曲を紹介。80年代にハマっている私でも、いいものはいいと言おう派なわけで、現代の曲すべてが嫌いというわけではない。
私は大学生時代、塾講師で小学生から中学生までを教えていたことがあったのだが、最近の子どもはかなーりゆったりな感じである。中学生は特に顕著で、ゆるーくだるい、いわゆる「ゆるだる」(造語)の子が非常に多かった。女子は成熟というより達観してしまっている子もちらほら。
そんな時世に対応したかのような曲を見つけた。それが今回紹介する「セーシュン」。カタカナにいろいろな思いが込められている。私なりに解釈すると
「あーなんかうちらっていま世間でいう青春真っ盛りな時期らしいけど特になんもなくない?だるいけどそういう感じ出しておいたほうがいいんだろうね。何もないけど。なんで何もないんだろ。だるい。うわまた親がうるさいわ。はいはいセーシュンしますよっと」
なんかこんな感じ。キャピキャピした青春を謳歌している若者なんて実際はほんの一握りである。それは私の世代もそうだった。大半は諸々のだるさを受け止めつつ、適当に時間が経過していくのを寝ながら消費していくのである。
{眠い目こする昼下がり 宿題テストは終わったよ あいつがとばした憂鬱の 下敷きになって眠ってた}
{誰かの笑顔に傷ついて 誰かの涙に安心 最近のあたしってなんだか 最低なあいつにそっくり}
描写がうまい。世間ではこういうのを陰キャとして扱うが、人はだれしも陰を持つもの。極論では全員陰キャなのだ。
{国語算数理科社会より もっと大切なことを知りたいよ ぽつり落とした愛してる それでも好きなんかやっぱり あーわからないから 眠っていたいのにな}
数学でなく算数で、英語が含まれていないのを見ると、もしかしたら小学生を題材にしているかもしれない。そうそう、小学校の高学年女子でもいまは成熟した子が多い。一時の芦田愛菜みたいな子だらけなのだ。それはちょっと違うか。
{夕暮れのグランド 金ぴかに光る窓 あの高い山越えたら 優しくなれるって話 本当なんかな}
ゆるいサビが心地よい。けだるさを残したまま、ゆったりと目的を明らかにせず終えていく。心のモヤモヤを解決させないのはまさしくリアルだ。
テレビではこういうだるさを取り上げることはまずない。それが若者のリアルだとしても。そういう意味でこの曲の存在は心強く思える。若者のすべてを体現したというのは書きすぎであっても、誰かの心の支えには間違いなくなっているのだ。
【今日の名歌詞】
勝って嬉しいはないちもんめ 負けて悔しいはないちもんめ あいつがほしい あいつがほしい ほしいほしいって言わない心がほしい