名曲204 「Just a Joke」【国分友里恵】

ーーごめんなさいね、付き合えないわ、好きだったのは、自由だったあなたーー

【国分友里恵「Just a Joke」[1983]】

 1980年代は売上と評価の差に開きがある。そう思わないだろうか。90年代も相当その感触があるとはいえ、普通にミリオンヒットを量産されていることもあり、まだいいほうだ。この80年代というのがなかなかに厄介で、前半はアイドルが売り上げ上位を占めて、後半はそもそも邦楽自体が下火になってしまった。

 今回はそのアイドルブームの中に埋もれてしまった曲を紹介。国分友里恵はかなり知名度が低い。と書くと40代以上のおじさまおばさま方は怒るかもしれないが、同世代で知っている人はまずいない。皆無である。

 というのも、中森明菜、松田聖子の力が圧倒的に強かった。その下(と書くのはまずいか)には杏里や薬師丸ひろ子、岩崎宏美などがいて、まさに単独女性シンガーの全盛期。曲に恵まれたのもあるが、歌唱力がかなり高かった。次第に淘汰されていき、ヒット曲が出ない歌手は表舞台から去った。

 というのがこれまでの話。いまはYouTubeで気軽に音楽を振り返って聴ける時代である。そこで、当時は評価されなかった歌手と巡り合えるようになった。そうして再評価されていったケースは多く、有名なのでは松原みきが挙げられる。今回の国分友里恵もそういった経緯で知った。

{偶然ふたりが出会うPavement あなたは昔と変わらない 魅力的な視線 軽く誘うけれど 薬指にはキラリとリング 燃えかけた胸 急にさめてく}

 出だしはしっとりとしつつもテンポよく進む。そしてサビだ。

{It's Just a Joke ごめんなさいね It's Just a Joke つき合えないわ It's Just a Joke 愛してたのは 自由だった あなたよ}

 ウサギがぴょんぴょんと跳ねているかのような軽快さ。それでいて歌詞は残酷だ。この対比がいい。

{私意外とFantastic 先の読めてる恋は嫌なの}

 2番でも悪女っぷりが表れていていいではないか。うーむ、時代が時代ならと思ったが、そもそもこの時代でないと生まれていなかったかもしれない。国分友里恵は現在も活躍しているようで、じわじわと認知度が上がってもらえたらと思う。これはジョークではない。

          【今日の名歌詞】

融通のきかない女だと あなたは秘かに苦笑い 想い出壊す程 気前良くはないわ 私意外とFantastic 先の読めてる恋は嫌なの

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