迷曲4 「胎児の夢」【佐井好子】
ーー夢野久作の「ドグラ・マグラ」をモチーフにした超大作ーー
【Taiji no Yume – Yoshiko Sai (Taiji no Yume 1977) ~ 胎児の夢 – 佐井好子】
佐井好子は1970年代を中心に活動している歌手である。今回はその中でも有名な「胎児の夢」を紹介。私は最近になって知ったのだが、迷曲と分類して差し支えない内容と思う。個人的にはハマらなかった。
この作品は夢野久作の「ドグラ・マグラ」をモチーフにしたという。ドグラ・マグラを知らない人のためにざっくり説明すると、
[1935年(昭和10年)1月、松柏館書店より書き下ろし作品として刊行され、「幻魔怪奇探偵小説」という惹句が付されていた。夢野久作は作家デビューした年(1926年)に、精神病者に関する小説『狂人の解放治療』を書き始めた。のちに『ドグラ・マグラ』と改題し、10年近くの間、徹底的に推敲を行った。夢野は1935年にこの作品を発表し、翌年に死去している。
その常軌を逸した作風から一代の奇書と評価されており、「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」とも評される](Wikipediaより出典)
とされる作品である。ちょっと現代では取り扱えない作品だ。最近、青空文庫で目にした方も多いと思うが、平気で「キ○ガイ」や「狂人」といった言葉が出てくる。私は大学生時代に興味本位でさわってみたことがあったのだが、あえなく挫折した。読みにくいうえに意味がわからなかったのだ。なんでもその難解さから「日本探偵小説三大奇書」とのことで、まあ仕方がないかと思ったものだった。
で、そんな作品に影響されたとあってはこの曲もそれなりの怪奇さを醸し出しているわけである。正直、私は気分が悪くなってしまった。なんだか変な感じになってしまったのだ。
この曲を聴いたあと、暑い日にもかかわらず、上着を着てしまい、スーパーに行く予定だったのに反対の道を行ってしまった。心霊……いやそんなことはないはずだがちょっと不気味であった。
しかしながら9分超えとあって聴きごたえは抜群。美術館の一角にあっても不思議ではない。それだけハマる人はハマる作品だと思う。
それにしてもこの70年代というのは暗い曲も多かった。フォークをさらにもう一段落ち込ませたような恨み節がすごい曲も多い。その中で中島みゆきのように華麗に羽ばたいた方もいれば、永遠にアングラのまま燻るアーティストもいる。そういう方が再評価されていけば、日本の音楽史の深みを知ることができるだろう。
【今日の迷歌詞】
糸でんわによれば 遊園地の紅い池に フワリと咲きはじめた ハスの花は 死ぬることなく それどころか 妖艶なる触手をのばして この世を覆いつくして しまいそうで