名曲728 「哀しみのプリズナー」【桑田佳祐】
ーー囚人にもひとつの矜持ーー
【哀しみのプリズナー】
ちょっと背伸びをしたくなったときに桑田佳祐のクールな曲を聴きたくなる。特に夜は。
今回は「哀しみのプリズナー」を紹介。「keisuke kuwata」のアルバム1曲目に収録されている。1988年の作品。ソロで発表された曲群はどれもこれもハイセンスで、サザンとはまた違った顔を見せたのは当時衝撃だったことだろう。私もリアルタイムで味わいたかったものだ。
後々のベストアルバムにも収録されたことから人気曲だったのだとうかがえる。先述の通り、ハイセンスな曲ばかりが収録されているアルバムなので、最高傑作という声もあるようだ。
プリズナーとはプリズン(牢獄)から連想されるように囚人を意味する。決していい意味では使われない。この罪を被った者に対し哀しみのと修飾語が加わることによって様々な連想ができるのだ。
肝はラストだろう。言葉にならない痛み、それに震えて生き抜くという気持ち。これこそが哀しみのプリズナーだと。最後になってようやく比喩とわかるのだが、全体的に暗めでいろいろと面白い。都内の繫華街をうろつく一般人が思い浮かんだ。哀しみのプリズナーは最後に登場するわけだが、これほどの決め台詞はない。構成もうまいのだ。
どちらかというと歌詞は添え物くらいのイメージかなと。個人的にはメロディーと雰囲気が相当ポイントを挙げている。サビはかなりのもの。洋楽にありそうだ。
桑田佳祐は人間の好きなメロディーを作りだすのが日本トップクラスでうまい。ポップはもちろん、バラードも至高である。それも何かテーマを持っているような気がするのである。それを鮮明に感じ取れたのが本作だった。
ちなみに編曲には小林武史も携わっている。この人もすごいのですよ。そりゃ名曲が生まれるわと納得なのだが、90年代のイメージが強い氏の若かりし傑作といえようか。もちろん、桑田佳祐もすごいのだが。